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なるべく明るい乳がん日記32僕らは続けた取り敢えず続けた

〜前回のあらすじ〜
乳がん初期治療の大トリ、放射線治療を受け始めた私。全25回に及ぶ照射の為に平日総合病院へと通い詰める日々が始まった。抗がん剤中は不必要な外出は一切せず家にこもりきりだったが、その反動もあってか放射線治療中はひたすら図書館へと通っていた。行くところが図書館というところに己の内向性と、懐の心許なさを感じる。
(タイトルはPUFFYの名曲から

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【10月上旬】
図書館で借りた『チ。ー地球の運動についてー』を読み始めた。

エグい描写が多い。エグいのは苦手だが全8巻だしオススメ本として紹介されていたので1、2巻だけ借りた。それ以外は借りられていたけどきっとまとめて返却されるだろうと予想し、一冊一冊予約するのが面倒だったので3巻だけ予約を入れた数日後「貸し出し可能になった」と連絡があった。
1、2巻を返却した足で残り3〜8巻まで借りようと意気込んで図書館へ行って驚いた。4〜7巻まで借りられていたのだ。え?そんなことある?なんでそんな中途半端に途中から途中まで借りてったの?最初と最終巻読まないの??


放射線治療3回目辺りから、右二の腕外側が筋肉痛のようにちょっと痛くなってきた。とりあえず皮膚が乾燥するのはよくないので顔に使っていた化粧水と乳液を照射範囲に塗った。日焼けの手当てをするように。

髪のない妻の姿を夫はあまり見たくないかもと思い、ずっと帽子を被っていたけどちょっと生えてきた今ならと思い立ち、夫に「見る?見る?」と聞いてみた。「うーん…うん。」と言ってくれた瞬間私は夫の前で帽子を取って5ミリほど産毛の生えた頭を満面の笑顔で公開した。あースッキリした!

それからは「暑い!」と言っては夫の前でも帽子を脱いで涼んでいた。夫の前ではそのままの私で居たい。ちょっと渋りながらだったけど受け入れてくれてありがとう。一度見てしまえば後はもうすんなりと、夫は私のオクラ頭に慣れた。手触りの良さを堪能してもらいたくて時々頭を撫でてもらった。幾つになっても好きな人に頭を撫でてもらうのは嬉しいのだ。


初期治療のゴールが見えてきたこの段階で、乳がんになったことを徐々に友達に公表するようになった。驚かせてしまったけどこうして伝えることで、気になることがあれば受診、なければ定期的な検診を受けるきっかけになれば嬉しい。(そのためにこれを書いている。)

乳がんはしこりに触れたりへこんだりして自分で見つけやすいがんだから、気になることがあれば早めに受診して欲しい。どうか後回しにせず自分のことも優先して欲しい。早期発見することが本当にとても大切だから。


放射線治療5回目辺りから首の右半分下から右鎖骨、右胸、右わき辺りが地味にピリピリヒリヒリするようになってきた。全25回のキツさをだんだん理解し始める。

図書館で借りた『羽田圭介、クルマを買う。』読了。

本全体の9割試乗の話だ。試乗そんなにいる?と思いつつ最後の数ページで急展開し颯爽と走り去って行くおもしろい本だった。変な人だなこの人。

【10月中旬】
手術を受けたいつもの病院で採血と診察があったのでいつものようにセルフ長距離運転で向かった。
「元気ですか?」と主治医の先生に聞かれる。
「元気です!」と答える。
元気だと自分で言うことで元気が出るのだ。(言霊を大事にするタイプの私。)

血液検査の結果、白血球の値は少し低いけど肝臓などの値は良いとのことだった。放射線治療を8回受けた私の皮膚は少し赤黒くなってきていたので保湿剤を処方してもらう。

ホルモン療法で毎日飲んでいるタモキシフェンはどうか聞かれたけど、特に問題なく比較的軽い更年期症状だけなので、他にもホルモン療法で使われる薬の種類はあるけれど、このままタモキシフェンを続行することになった。次の診察は3ヶ月後だ。

院外薬局で保湿剤のヒルドイド(ヘパリン類似物質3.0mg)とタモキシフェン3ヶ月分を受け取る。1880円。そのあとすぐ、今度は放射線治療を受けるために長距離運転で総合病院へと向かう。

リニアックという機械で放射線治療を受ける。この日はいつもの技師さんとは違うお兄さんが担当だった。
「雨どうですか?寒くないですか?」と一言では返せない質問を畳み掛けてきて困惑した。「雨は少し降ってるけど、寒くはないですよ。」とこれ以上ない答えを精一杯返した。

いつものようにリニアックがフイーンと回転し、ペーーーッと照射する。どこから何がどう出ているのか何回やってもよくわからないけど、照射はすぐに終わる。背後ではうすーーいオルゴールの音でルクプルの『ひだまり』が流れていた。どうやらこの年代の曲が流れているらしい。

次は何が流れるのか。
放射線治療のささやかな楽しみとなった。
(5曲くらいのローテーションだったのですぐに飽きた。)

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