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なるべく明るい乳がん日記34好きなものは自分でさがすしかない

〜前回のあらすじ〜
放射線治療もラストスパート!これが終われば乳がんの初期治療が終わる。
だが右側の首の付け根後ろ辺りが炎症で痛く、照射範囲は赤黒くなってきていた。これはもう手持ちの保湿剤では追いつかない世界かもしれない。

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【11月初旬】
21回目の放射線治療の時に看護師さんが「炎症止めは要りますか?」と聞いてくれた。ステロイドを別の言い方に変えておすすめしてくれた。看護師さんの気持ちも嬉しいし炎症は止めたいので喜んで処方してもらうことにする。次の照射後に薬を受け取ることになった。

22回目の放射線治療の日。『ブギウギ』のレビューシーンの素晴らしさに気分を高揚させながら治療へと向かった。車のシートベルトが鎖骨に当たって少し痛い。でも対策を必要とするほどの痛みでも乗車距離でもないのでそのまま乗っていた。シートベルトは全摘した胸のキズにも特に当たらないので気にせず乗っていることもついでに書いておく。

いつものように照射を済ませ、薬を受け取った。処方してもらった炎症止めは2つ。アズノール軟膏という青い色の塗り薬は、やけどの症状を改善し修復を助ける薬。大きい容器にはジフルプレドナートという白い軟膏と白色ワセリンを混合したものが入っている。こちらはステロイド剤で皮膚の炎症を鎮め皮膚を保護するもの。この2つの薬を1日2回、同量混ぜ合わせて患部に塗るように、とのことだった。

塗っても塗っても全然減らない。

これがまた油分たっぷりで衣服にじわじわと染み込むのだ。ガーゼを毎回当てればいいのかもしれないけどそれも面倒なのでこれを塗る間は同じ長袖Tシャツをローテーションで着た。塗り始めてすぐ背中のかさぶたは取れた。


夫が休みの日。朝、『ブギウギ』を見て、そのまま『病院ラジオ』という番組を見た。

岐阜から新宿にあるこの病院に入院しているという9歳の男の子が『人生は楽しむためにある』と言っていて強烈に印象に残った。この年齢で。そう思えるまでにどれほどのことがあっただろう。ダジャレで周りを笑わせてる、おもしろくて優しい男の子の笑顔にこちらが元気づけられる。

この番組に出てる人はみんな心が元気だ。そしてよく笑っている。身体が健康な時の方が、心は持っていかれやすいのかもしれない。心と身体の両方を健やかに保ち続けるのは難しい。でも意識していきたいと思う。小さな笑いを、良いことを、見つけていける人になりたい。


ついに最終回!
25回目の放射線治療を迎えた。
いつものように照射を受け、毎日お世話になった技師の皆さんと看護師さんにお礼を伝えた。

最後に放射線の先生の診察を受け、データを見ながらどのように照射したかの説明を聞いた。鎖骨は、脊髄と食道には当たらないように、肺も出来るだけ避けて照射した。それでも1〜3ヶ月後に副作用(放射線肺臓炎や間質性肺炎)が出る場合がごくわずかにある。咳や38度以上の発熱があれば連絡くださいとのことだった。照射されたところは皮脂の分泌が減るので保湿をしっかりすること。いずれ皮膚の黒ずみはなくなります、と穏やかな笑顔で先生はゆっくりと説明してくれた。


1ヶ月以上通い詰めた放射線治療がついに終わった。
抗がん剤の副作用の手足の痺れは残っているし、照射された右肩と右二の腕はダル重い。皮膚は赤黒く焼けている。頭にはウィッグ。
でも、これで乳がんの初期治療が終わったのだ。

帰宅後、夫に「もう焼かなくていい!私は焼ききった!!」と宣言する。
夫も笑顔で頷いた。

【11月中旬】
図書館で借りた夢眠ねむさんの『本の本』読了。

ありそうでなかった本!!一冊の本がどんな工程を経てどこからどのように届くのかということを実は意外と知らない。そんな読者へ夢眠ねむさんが素直な疑問を手に、あらゆる本のプロから丁寧に取材し伝えてくれる、本を巡る冒険本。どうしよう、この本も手元に置いておきたい。


毎朝、鏡を見るたびに「大工の源さんか」「スリの銀次か」と己の坊主頭にツッコんでしまう。坊主のクセに一丁前に寝癖がついていたりする。なんなんだ。心の底から早く伸びてくれと願う日々。前髪が眉毛に到達するのはいつなのか。定規で測ってみたら眉毛までまだあと4センチもあった。遠い。最低でも4ヶ月はかかるだろう。春よ来い。早く来い。役柄で頭を丸める役者さんも撮影後、地毛が伸びてくるまで大変だろうなと想いを馳せてみる。

図書館で借りたさくらももこさんの『焼きそばうえだ』読了。

大人が、冗談を本気で実現するとどうなるかという実話。さくらももこにはこんなくだらない話をする仲間がいて、くだらないのに謎に行動力はあって本気で実現してしまう過程がおもしろかった。さくらももこの毒の部分がしっくりこない人にはおすすめしない本。


放射線治療で照射されたところはザラザラした手触り。右腕を上へ伸ばすと右胸、右わきの下、右二の腕の内側辺りがピリピリする。表面に1枚ちょっと伸びにくい厚手の皮が貼られたようにも感じる。麻痺はかなり減った。(術後7ヶ月。)


全摘しても再建することは出来る。
でも、私はしない。負担が大きいから。
このままで、背中を丸めずに堂々と暮らしていく。

タイトルは今頭の中に流れてきた鈴木祥子さんのこの曲。
動画がないか検索してて見つけた大好きなこの曲もぜひ。

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