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オーディオビジュアル徒然草 #4 “耳をふさがない”完全ワイヤレスイヤフォンCleer ARC2を使ってみた。

人気の高い完全ワイヤレスイヤフォンのなかで、今注目度が高まっているのが、“耳をふさがない”タイプのモデル。一般的な完全ワイヤレスイヤフォンとは異なり、耳をふさがないので周囲の音はそのまま聞こえる。屋外で使っても比較的安全だし、家の中でも装着して音楽を聴きながらでも家族と会話ができる。声をかけられても気付かないとか、家の固定電話が鳴っていてもわからないといったトラブルも減る。ワイヤレスイヤフォンを日常的に付けっぱなしにしていたい人に注目されている。

そんなモデルの中で今話題となっているのが、CleerのARC2だ。2023年6月30日まで、クラウドファンディング「GREEN」で支援を募っているが、目標額の30万円はすでにクリアし、6月20日時点で支援総額4563万1691円(15210%)を達成している。そのCleer ARC2を事前に試させていただくことができたので、そのインプレッションを紹介しよう。

機能的にも最新仕様の完全ワイヤレスイヤフォン

まずはCleer ARC2の概要を紹介しよう。見た目は耳に引っかけるようにして装着するイヤーフックに音を再生するイヤフォンが装着された形状だ。耳をふさがないタイプには骨伝導タイプと呼ばれるものもあるが、Cleer ARC2は耳の孔のすぐそばに配置されるドライバーから音が出るタイプだ。

機能としては、新世代のBluetoothオーディオ規格「LE Audio」に対応し、音声コーデックはaptX Lossless、aptX Adaptiveに対応。そのほか、SBC、AACにも対応する。チップセットに「Qualcomm QCC3071」を採用しており、「Qualcomm Snapdragon8」チップを搭載したスマホなどとの接続時には最短48msの低遅延で通信することが可能だ。このほか複数の機器と同時にペアリングが可能なマルチポイントにも対応している。

バッテリー持続時間は本体のみで8時間、充電ケース併用で最大35時間の使用が可能。充電時間10分で約2時間使用できる急速充電も可能だ。防水性能はIPX5相当で、汗や水濡れはもちろん、水洗いも可能となっている。このように機能としても最新鋭で通勤や通学、ジョギングなどのスポーツなど、さまざまな場面で仕えものとなっている。

充電ケースの裏側。充電用端子はUSB Type-C

製品には3つのバリエーションがある。標準的なモデルはイヤフォン本体と充電ケースのセットとなる「MUSIC Edition」で、充電ケースに紫外線照射機能を備え、充電時に雑菌を99.9%除菌し、不快な匂いを消臭できる「SPORTS Edition」、最大59msの低遅延で音声を伝送できる専用USB Type Cドングルがセットになった「GAME Edition」がある。

clear AARC2の充電ケース(写真はGAME Editionのもの)

支援するプランによって、各Editionが異なるので、支援するときにプランをよく確認しよう。なお、6月20日時点でもMUSIC Editionが「超早割20」の20%OFFの2万1120円などのプランがある(2023年7月以降出荷予定)。

装着に慣れは必要だが、軽快で気軽に使える

お借りしたのは「GAME Edition」となるが、基本的にイヤフォン部分は共通だし、機能的にもUSBドングルの付属以外は同様。イヤーフックがついているので大柄に見えるが、耳の孔の付近にくるドライバー部も薄型のスリムな形状なので、装着してしまうとあまりかさばる感じはない。

装着には少しコツというか慣れが必要。ただ耳に引っかけるだけだと、装着がいまいち安定しないしイヤーフックとドライバー部で軽く耳の上側を挟む感じなので、耳に当たる部分が痛くなってしまいやすい。特に筆者はメガネ使用者でもあるので雑に装着すると装着自体も不安定になる。

耳に引っかけた状態でイヤーフック全体を耳に合わせて動かすとぴったりと合う場所に収まる。イメージとしてはイヤーフック全体を後頭部方向に少し回転させる感じ。こうするとほどよく耳にフィットし、装着を続けていても耳が痛くなるようなこともない。

なお、装着感については、現在行われているクラウドファンディング中のイベントなどで製品を試したユーザーからのフィードバックを受けている。そして、正式にリリースされる製品ではよりフィット感を高めた形状に変更されることが決定している。フィット感については心配することはなさそうだ。

ドライバー部分は耳の孔のすぐそばにあるが、耳を塞いでいるわけではないので周囲の音はそのまま聞こえる。きちんと装着できてしまえば重さもほとんど感じないので、装着したままで普通に過ごすことができる。


イヤフォン本体を裏側から見たところ。ドライバー部の下側から音が出る作りだ

ドライバー部分をよく見てみると下側に開口部があり、そこから音が出ているとわかる。この配置は人間工学に基づいて適正な位置に決められており、耳の孔へ音をムダなく送ることができる。そのため、音漏れも少ないという。実際に試してみると音量が70/100以下ならば10cmも耳から離せば一般的な室内では音漏れはほとんど気にならない。それ以上の音量(90/100など)では多少音漏れは感じるが、これも耳から50cmくらい離すとほとんど音漏れには気付かないレベルだ。大音量でガンガン鳴らすタイプではないので、実用的な音量ならば音漏れを心配することはほとんどないだろう。

耳をふさがないタイプとしては音質はかなり優秀。開放的な鳴り方も気持ち良い


試聴に使ったプレーヤー。ソニー NW-WM1AM2

ではいよいよ音を聴いてみよう。プレーヤーは手持ちのソニー NW-WM1AM2とiPhone14を使用。イヤフォンやヘッドフォンの試聴で聴く曲をいくつか聴いてみると、くっきりとした明瞭な音でなかなか優秀だ。低音はローエンドの伸びはいまひとつだが、弾力感があってよく弾むし、量感も適度でドラムやベースのリズムをきちんと刻みつつ、力強さもしっかりと伝わる。

低音については音量を上げていくと、ローエンドの伸びも不満のないレベルまで出ているのだが、音量が90/100くらいになってしまい、いかに耳をふさがないタイプと言ってもこれでは周囲の音は聞こえにくくなる。前述の通り音漏れも目立ちはじめるので、おそらくこういう使い方は合っていない。低音の伸びを求めるならば、カナル型のイヤフォンなどのようにきちんと耳を密閉するタイプの方が有利だ。

好ましいと感じたのは、音が開放的なこと。オープンイヤー型のため音が頭の中だけで響くのではなく、頭外定位とまではいかないが音が耳の外まで広がる感じだ。圧迫感や閉塞感もなく、聴き心地がよい。また、周囲の音が聞こえる程度まで音量を落としても音が痩せてしまうような感じはなく、明瞭度の高い音で低音のリズムもしっかりと伝わる。適度な音量(70/100以下)の方が耳への負担も少ないし、交通量の多い車道の側でもない限り周囲の音に負けて音楽が聞こえにくいこともない。これくらいの音量が製品にも合っていると思う。大音量を求める人は一般的なカナル型のイヤフォンが良いだろう。

耳をふさがないタイプということを意識しないで聴くと細かな点も気になるが、それは基本的な音質の実力が高いためだ。周囲の音もよく聞こえるBGM的な音量で鳴らしていてもしっかり音楽を楽しめるし、それこそいつもの気分でじっくりと音楽を聴き込んでしまう。これはちょっと意外なことで、これまでの耳をふさがないタイプのモデルは、音が出た瞬間に音楽をじっくり楽しむことが目的ではないとわかる音質なので、そういう聴き方しかしなくなる。ところがCleer ARC2だとじっくり聴き込めてしまうので、細かな点が気になってしまう。なかなか悩ましい話ではあるが、耳をふさがないタイプでの聴き方、聞こえ方を考えるとうまくバランスのとれた高音質だと思う。

せっかくのGAME Editionなので、ゲームも試してみた


GAME Editionに付属するUSB Type Cドングル

最後は、GAME Editonに付属するUSBドングルも試してみた。USBドングルとイヤフォンを接続した状態でゲーム機などのUSB端子に接続すれば自動でUSBオーディオ出力に切り替わり、Creer ARC2から音が出る。ドングルなしでの通常のBluetoothオーディオ接続でも試してみたが、ゲームは好きだが得意というほどではない筆者でもUSBドングルでの接続の方がシューティングゲームなどのプレイがしやすく低遅延であることが実感できる。タイミングがシビアなリズムゲームや格闘ゲームならば、もっと低遅延の効果がわかるだろう。

任天堂のSwitchとUSB Type Cドングルドングルで接続。バッチリ接続でき、低遅延でゲームを楽しめた

最初に説明した通り、「Qualcomm Snapdragon8」チップを採用したスマホなどとの接続ならば、Cleer ARC2はイヤフォン単体でも低遅延の接続はできるが、家庭用ゲーム機などはそうはいかないので、GAME EditionのUSBドングルは便利だ。ゲームに夢中になっていても、家族や友人とそのまま会話もできるのでもちろん快適。ゲームでもよく使うという人は検討するといいだろう。

使いやすく機能も充実しており、しかも音が良い。日常的にイヤフォンを使う人はぜひお試しを

最近では電車内や路上でも完全ワイヤレスイヤフォンを装着している人をみかけることが当たり前になってきた印象がある。普通のイヤフォンでそれをやると、路上では危険が増えるし実際突然車が自分の横を通り過ぎてヒヤっとしたこともある。とはいえ、音質を求めると決して十分ではなかったわけで、筆者も屋外でイヤフォンを使うことがなくなってしまった。

それがCleer ARC2のテストでちょっとした外出を含めて、なるべく装着したまま音楽を聴いて過ごすようにしていたら、これがまた快適で、取材が終わった今、手放すのが惜しくなってしまっている。

また、カナル型イヤフォンは耳に挿入する圧迫感が苦手という人もいるだろう。オーバーヘッド型はこれから暑くなる季節は使いにくい。そんな人にもCleer ARC2はおすすめできると思う。


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