天才オタク君とその親の話

小学校の先生をやっている友達がいます。

先日、コロナ自粛も明けて久々に話をしたときに、「コロナ前にこんなことがあったんだけど聞いてくれない?」と話を打ち明けられ、こりゃ子供と両親含めて全員発達障害だなって思う話がありました。ちょっと長くなりますがお付き合いください。

モンスター天才オタク君

発達障害というものをよく知らなかったその先生は、発達障害特有の振る舞いや価値観があまりに理解できず、自分の基準がずれているのかと自分を責めるくらい不安になっていました。

その先生は私と同い年の40代半ばの女性で、教育にも子供への向き合い方も熱心で、教育相談の研修会にもよく参加している私からすると理想的な教師でした。こういう先生が先輩として若い先生をサポートしてくれるといいなと私は常々思っていました。

去年の春、3年生のクラス担任になった時にちょっと悪ふざけが目立つ子供(A君)の担任になったそうです。

彼女が「そのA君が、言っていいことと悪いことの区別がつかないのか、平気で友達を傷つけること言うみたい」と言うので、「どんなこと言うの?」と尋ねると、

「これがわからない奴は頭が遅れてます」とか「宿題忘れてきた人は親のしつけがなっていない」的なクラスの他の子もドン引きすることを平気で言っちゃうそうです。先生に対しても「授業の問題が簡単すぎてつまらないので何とかしてください」とか無視して授業を続けると「給料泥棒じゃないですよね?」など、聞いている私までムカ(-"-)っとさせるような言葉が次から次へと出てくるのだそうです。

一方で頭は良いそうです。親が塾に通わせているせいかテストの点は良いし、世界の国の名前と首都と国旗を暗記しているなど、びっくりするほどの知識を持っているんだそうで、「天才オタク君」ってクラスメートから呼ばれているそうです。で、社会の授業などで彼の知識を刺激する単元が出てきたりすると、授業内容に関係あろうとなかろうと、知ってることを披露し始めるため授業が進まず困っていたそうです。

親を説得すると・・・

これは親になんとかしてもらわないとと思った先生は両親を説得します。A君を通級という2週に1回開かれる情緒学級に通うことを進めたそうですが、母親からは「授業中はご迷惑をおかけしすみません。ただ、通級はうちの子供が通うにはレベルが低すぎるし、そもそも発達障害の傾向は家でも気づいているので月に1回程度心療内科のあるクリニックに通っています」と断られたそうです。

ただ学校での振る舞いは数か月経っても変化がないので、先生はA君の様子を具体的に知ってほしいと思い、普段は学校公開(昔でいう授業参観)に来ないA君の両親に対し、連絡帳で「○○日に学校公開があります。お二人でいらして、授業中の様子を一度じっくり見てください」とダメ元で訴えたところ、両親で来ることになったそうです。

授業参観に来るには来たが・・・

来てくれたのは良かったのですが、教室は異様な感じだったそうです。父親は三脚を付けたビデオカメラで教室の後ろのど真ん中に陣取り、しかもカメラは子供のA君ではなく、先生に向けられていたそうです。そして母親はスマホで先生の板書を写メで撮りまくっていたそうです。そしてA君の不適切な発言はいつもどおり行われていましたが、両親は子供はまったく眼中になし、だったそうです。

周りの父兄も子供と両親の異様さに気付き、授業中は気まずい空気ができていましたが、先生もさすがに子供たちの前で授業中ビデオ撮影や写メを注意したくないと思い我慢したそうです。ただ、子供よりビデオ撮影に夢中な両親には驚きを超えて、呆れた気持ちと怒りが渦巻いていたそうです。

で授業後に両親を読んで「今日の授業はいかがでしたか?」と撮影に熱心だった父親にやんわり尋ねると、「先生が連絡帳で書かれたとおり、授業をもれなく撮影できました。今日の映像をよく分析して考えたいと思います」と驚きの反応が返ってきたそうです。

まあ最初話を聞いたときから何となく予想はしていましたが、この時点まで聞いてちなみに父親は大手IT企業で務めているそうです。そんな立派な企業にお勤めの父親が先生が連絡帳に書いた内容を適切に受け止められなかったことに深いショックを受けたそうです。確かに「お二人でいらして、授業中の様子を一度じっくり見てください」とは書きましたが・・・

確かに両親のうち一人が定型発達だったら、「あんた何授業中に撮影してるのよ!」とかそもそもA君の振る舞いを恥じて休み時間に「ちょっと何言ってんのよ、いい加減にしな」くらいの注意するのが普通ですよね?でも両親とも発達障害だったら、そのズレを修正する人がいないという、すさまじい家庭だなって聞いてて思いました・・・

その先生は学校公開後に、三脚を担いで帰っていく親子3人の満足そうな姿を見送って暗たんたる気持ちになったそうです。副校長にすぐに相談したのですが「両親で授業参観に来るだけでも良かったね」という先生の困った感が十分に伝わらず余計にガックリきたそうです・・・

次回へ続きます (@^^)/

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