社会科の言葉 憲法・法律・政令・条例
私たちは、いろいろな「きまり」に従って生活しています。
その「きまり」に違反すると、警察に逮捕されたり、刑務所に入ったり、被害者に損害を賠償したりしないといけません。
ところで、この「きまり」には、いろいろな種類があって、その「強さ」も種類によって違っているということをご存知ですか。
★「きまり」は、つくる機関によって名前が違う
私たちが従わないといけない「きまり」は、どこがつくるかによって、実は名前が違うのです。
憲法・・・国会が、特別の手続きによって提案し、国民全員の投票(国民投票)を経て、つくったり改正したりする「きまり」です。
日本国憲法 第九十六条第一項 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
法律・・・国会がつくります。
日本国憲法 第四十一条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
政令・・・内閣がつくる「きまり」です。
日本国憲法 第七十三条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
六号 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
(内閣がつくる「きまり」の中には、内閣全体で決定する政令以外に、各省庁がつくる省令といわれるものなどもあり、行政府がつくる「きまり」全体をまとめて「命令」ということがあります。)
条例・・・都道府県や市町村など、地方自治体(地方公共団体ともいいます)の議会がつくる「きまり」です。
日本国憲法 第九十四条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
以上をまとめると、、
国会が提案し、国民投票でつくる「きまり」・・・憲法
国会がつくる「きまり」・・・法律
内閣がつくる「きまり」・・・政令
地方議会がつくる「きまり」・・・条例
ということになります。
★憲法・法律・政令・条例は、強さも違う
4種類の「きまり」は、強さの順も決まっています。
憲法が一番強い「きまり」で、憲法>法律>政令>条例の順になります。
一番強い「きまり」は、憲法です。
憲法に違反する法律、政令、条例はつくることができませんし、もしまちがってつくられたとしても無効です。
憲法81条の条文からそれがわかります。
日本国憲法 第八十一条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
二番目に強い「きまり」が法律です。
政令は、法律よりは弱い「きまり」です。
日本国憲法 第七十三条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
六号 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができな い。
政令は、「この憲法及び法律の規定を実施するため」とあるので、政令のほうが法律より下位にあることがわかります。
条例は、もっとも弱い「きまり」です。
日本国憲法 第九十四条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
条例は「法律の範囲内」とあるので、最下位であることがわかります。
★憲法>法律>政令>条例となる根拠
憲法>法律>政令>条例の、強さの序列には根拠があります。
日本国憲法の前文に、「主権が国民に存することを宣言し」とあるように、わが国は国民主権を政治の基本にすえています。
国民がもっとも偉いということです。
だから、国民全員で決める憲法が一番強い「きまり」なのです。
いつも国民全体の意見を聞くわけにはいきませんから、実際の政治は、国民から選挙で選ばれ、国民の委任を受けた国会が方針を決定します(日本国憲法前文 「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動」)。
だから、憲法に決められていないことがらについて定めた法律は、それ以外の「きまり」よりは上位のものだということになります。
内閣は、その長である内閣総理大臣を国会が指名しますから(日本国憲法 第六十七条 「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する」)、国会の指示の範囲内で実際の政治をおこなう機関です。
だから、政令は国会のつくった法律よりは下位の「きまり」です。
最後に、条例はもっとも下位の「きまり」です。
国民はすべて平等でなければなりません(日本国憲法 第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない)、住む場所によって差別的な扱いがあってはいけないのです。
だから、特定の地方自治体だけの「きまり」である条例は、国の「きまり」である憲法・法律・条令よりも下位だということになります。
俊英塾代表。「塾学(じゅくがく)」「学道(がくどう)」の追究がライフワーク。隔月刊誌『塾ジャーナル』に「永遠に未完の塾学」を執筆中。関西私塾教育連盟理事長。