定滑車・動滑車・組み合せ滑車
滑車のすべての問題は、2つの原理さえ理解できれば簡単に解けるようになります。
原理1:1本の糸にはたらく力の大きさはすべて等しい。
図で、左に引く力が1なら、右に引く力も1です。
糸を滑車にかけても、この原理は変わりません。
図で、左下に引く力が1なら、右下に引く力も1です。
原理2:上に引っ張る力の和と下に引っ張る力の和はつねに等しい。
例えば、滑車を上に2つの力で引くとき、1つの力を1とすると、上に引く力は2つの力を合わせて1+1=2となります。
その力とつりあう、下に引く力は2です。
滑車を上に3つの力で引くとき、上に引く力の和は1+1+1=3となり、下に引く力は3の大きさになります。
定滑車と動滑車
定滑車・・・固定されて動かない滑車が定滑車です。
糸を下に引くと、おもりは上に上がります。
「1本の糸にはたらく力は等しい」より、糸を引く力は、おもりの重さ(おもりにはたらく重力)と同じ大きさの力です。
糸を引く力=おもりの重さ
糸を下に引いた長さと同じ長さだけ、おもりは上に上がります。
糸を引く長さ=おもりがあがる長さ
動滑車・・・おもりが滑車にぶらさがっていて、おもりと一緒に滑車も動くのが動滑車です。
糸を上に引くと、おもりも動滑車も上に上がります。
「上に引っ張る力と下に引っ張る力は等しい」より、図で、動滑車にかかった糸の左の部分と右の部分の滑車を上に引く力の和(合計)が、おもりが滑車を下に引く力(おもりの重さ)と等しくなります。
また、「1本の糸にはたらく力は等しい」より、糸の左の部分と右の部分とは同じ大きさの力です。
だから、糸が滑車を上に引く2つの力は等しく、ともにおもりの重さの半分(1/2)だということになります。
糸を引く力=おもりの重さの半分(1/2)
また、下の図を見たらわかるように、糸を上に引く長さは、おもりが上に上がる長さの2倍になります。
動滑車の2糸を引く長さ=おもりが上にあがる長さの2倍
(糸を引く長さが2倍になることを、さらに詳しく説明すると・・・)
一つの例として、おもりを10cm上に引き上げるときを考えてみましょう。
図で、おもりが上に10cm上がるとき、おもりをつりさげている滑車も、10cm上に上がります。
このとき、滑車が10cm上に上がると、糸は、糸の青の点線の部分である、10cm+10cm=20cm引き上げられていることが、図よりわかります。
では、ここまで学んだことを使って、まず基本的な問題を解いてみましょう。
例題1:図1、図2のように、滑車を使って100gのおもりを持ち上げました。滑車の重さを考えないものとして、次の問いに答えなさい。
(1)図1、図2でおもりを持ち上げるとき、ひもを引く力はそれぞれ何gですか。
(2)図1、図2でおもりを10cm持ち上げるとき、ひもをそれぞれ何cm引けばよいですか。
(3)図1のア点、図2のイ点には、それぞれ何gの力が力がはたらいていますか。
(4)図1で、ひもを引く方向をAの向きにかえておもりを持ち上げるとき、ひもを引く力は何gになりますか。
(考え方と解答)
(1)図1、図2でおもりを持ち上げるとき、ひもを引く力はそれぞれ何gですか。
図1は定滑車です。
ひもを引く力はおもりの重さと同じです。
ゆえに、ひもを引く力は100gです。
図2は動滑車です。
ひもを引く力はおもりの重さの半分(1/2)です。
ゆえに、ひもを引く力は50gです。
(2)図1、図2でおもりを10cm持ち上げるとき、ひもをそれぞれ何cm引けばよいですか。
図1は定滑車なので、ひもを引く長さはおもりが上がる長さと同じです。
ゆえに10cmです。
図2は動滑車なので、ひもを引く長さはおもりが上がる長さの2倍です。
ゆえに20cmです。
(3)図1のア点、図2のイ点には、それぞれ何gの力が力がはたらいていますか。
「上に引っ張る力と下に引っ張る力は等しい」の原理を使います。
図1で、定滑車を下に引く力は、おもりの100gとひもを引く力100gの合計の200gです。
アにはたらく力は定滑車を上に引く力であり、下に引く力=上に引く力なので、アにはたらく力は100+100=200gです。
図2で、動滑車を下に引く力は、おもりの100gだけです。
動滑車を上に引く力は、イの力+ひもを引く力であり、イの力=ひもを引く力だから、イの力(=ひもを引く力)は100÷2=50gです。
(4)図1で、ひもを引く方向をAの向きにかえておもりを持ち上げるとき、ひもを引く力は何gになりますか。
ひもを引く向きをかえても、1本のひもを両方から引く力は等しく、かわりません。
ゆえにAの力は100gです。
次に、複雑な「組み合わせ滑車」の問題を解いてみましょう。
原理1、「1本の糸にはたらく力は等しい」と、
原理2、「上に引っ張る力と下に引っ張る力は等しい」の、
2つさえ上手に使いこなせたら、どんな複雑な滑車の問題もすらすらと解けるようになります。
組み合わせ滑車
例題2:滑車を組み合わせて、おもりを下げてつり合わせました。あとの問いに答えなさい。ただし、滑車の重さは考えないものとします。
(1)図で、つるしたおもりア、ウ、エはそれぞれ何gですか。
(2)図のイの点にはたらく力は何gですか。
(考え方と解答)
(1)図で、つるしたおもりアは何gですか。
まず、「上に引っ張る力と下に引っ張る力は等しい」から、動滑車を上に引っ張る2つの力は1と1で、下に引っ張るおもりの重さは2です。
おもりの重さ2が500gだから、1の力は、500÷2=250gです。
次に、「1本の糸にはたらく力は等しい」より、アの力は250gです。
(1)図で、つるしたおもりウは何gですか。
「1本の糸にはたらく力は等しい」から、糸のそれぞれの部分に1を書き込んでおきます。
図を見たらわかるように、おもりのぶら下がった2つの動滑車を4本の糸が上に引いています。
つまり、上に引く力は1+1+1+1=4です。
1にあたる力が80gですから、4にあたる力は80×4=320gです。
「上に引っ張る力と下に引っ張る力は等しい」より、ウのおもりの重さは320gということになります。
(1)図で、つるしたおもりエは何gですか。
「1本の糸にはたらく力は等しい」ことから、エのおもりをさげている糸の3か所に1を書き込みます。
「上に引っ張る力と下に引っ張る力は等しい」ことから、1+1で下に引っ張られている右の動滑車を上に引っ張っている糸に2と書き込みます。
さらに、「1本の糸にはたらく力は等しい」ので、2とつながっている糸の部分にも2と書いておきます。
そうすると、左の動滑車を上に引っ張っている力は、1+2+1=4だとわかります。
「上に引っ張る力と下に引っ張る力は等しい」ので、その動滑車を下に引っ張っているおもりの重さ240gも4の力です。
以上より、1の力は240÷4=60gです。
よって、エのおもりの重さは60gです。
(2)図のイの点にはたらく力は何gですか。
右の定滑車が固定されたイを下に引く力は、1+1=2の力です。
2の力は500gだから、イの力は500gです。
このように、
原理1、「1本の糸にはたらく力は等しい」と、
原理2、「上に引っ張る力と下に引っ張る力は等しい」の、
2つの要領さえ理解できたら、どんな問題でも解けます。
例題3:図1~3の組み合わせ滑車はつりあっています。おもりア~エの重さは何gですか。ただし、滑車の重さは考えないものとします。
例題3の3
(考え方と解答)
おもりアの重さは何gですか。
「1本の糸にはたらく力は等しい」ので、480gのおもりを下げている糸の3か所に1を書き込みます。
そうすると、「上に引っ張る力と下に引っ張る力は等しい」から、右の動滑車を上に引っ張る糸の力は2だとわかります。
最後に、左の動滑車を上に引っ張っている力は、1+2+1=4の力です。
1の力が480gだから、4の力は480×4=1920g、アのおもりの重さは1920gです。
おもりイの重さは何gですか。
この問題の糸はつながった1本の糸なので、「1本の糸にはたらく力は等しい」より、4か所に1と書き込んでおきます。
左下の動滑車を上に引っ張っている糸は3本だから、動滑車を上に引く力は1+1+1=3の力です。
「上に引っ張る力と下に引っ張る力は等しい」から、動滑車を下に引っ張っているおもりの重さも3にあたる量です。
3にあたる量が240gだから、1にあたる量は240÷3=80gだとわかります。
ゆえに、イの力は80gです。
おもりウ、エの重さは何gですか。
まず、「1本の糸にはたらく力は等しい」ので、つながった1本の糸のそれぞれの部分に1を書き込みます。
中央の、2個のくっついた動滑車は4本の糸で上に引っ張られているので、「上に引っ張る力と下に引っ張る力は等しい」より、下に引っ張っているおもりの重さも1+1+1+1=4です。
4の力が200gだから、1にあたる力は200÷4=50gだとわかります。
ゆえに、エの力は50gです。
最後に、ウを考えましょう。
左下の動滑車を上に引っ張っている糸は2本だから、上に引く力は2です。
だから、下に引く力のウも2の力です。
1にあたる力が50gだったので、ウの力は50×2=100gです。
まとめ
組み合わせ滑車の問題では、2つの原理、
「1本の糸にはたらく力は等しい」と、
「上に引っ張る力と下に引っ張る力は等しい」を、
上手に使えばよい。
上手に使うためには、最初、1本の糸のそれぞれの部分に1と書き込めばよい。
俊英塾代表。「塾学(じゅくがく)」「学道(がくどう)」の追究がライフワーク。隔月刊誌『塾ジャーナル』に「永遠に未完の塾学」を執筆中。関西私塾教育連盟理事長。