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枯れ枝は放置厳禁!樹木にとっての悪影響と対策

ToriDoriみどりでは多肉植物の生産の他、造園業、樹木医業も行っております。
今回は私たちが剪定すべき枝の一つ、「枯れ枝」について述べさせていただきます。


枯れ枝とは?

枯れ枝とは栄養や水分が供給されなくなった枝。
枯れ枝は様々な要因によって生じます。風などで枝が折れたり、樹木自身が成長過程で不要と判断して枯らすこともあったり。

また、枯れ枝に菌が入りこみ、樹体全体に菌が蔓延することにも。自然界では枯れ枝は自然落下が普通ですが、公園や街路樹、庭園など、人が往来する場所では危険といえます。
以上のようなことから剪定すべき枝として言われることが一般的です。

近年増えている枯れ枝による事故

キャンプ場や学校など、落枝や倒木による死亡事故がありました。
近年のアウトドアブーム、グリーンインフラ(詳しくは後述します。)としての樹木の老朽化も、枯れ枝による事故の増加の要因といえるでしょう。

枯れ枝から身を守る方法

公園やハイキングなど、ミドリの多い場所は私たちに元気をくれます。そういった場所での散策や休憩は日ごろの疲れを忘れさせてくれる瞬間でもありますね。
しかし、樹木は人間のために枝葉をつけているわけではありません。樹木の下を通ったり、休憩するときは少しだけ、頭上を確認しましょう。枯れ枝のかかり枝や折れかけの枝がある場合は、風が吹いたことをきっかけに落ちてくる可能性があります。
また、ほとんどの老木・大木には枯れ枝があります。特に天気の悪い日にはの下に入らないことも大切です。風で枯れ枝が落ちてきたり、樹高が高い場合、最悪、落雷の危険性もあります。

常にヘルメットを着けて!ということまでは申し上げませんが、自然の中にお邪魔していることを忘れないよう・・・。

管理者としての責任〜台風の日に木の下にいた人がわるいの?〜

緑地や公園、自分の家の庭でも、落枝などて人身、物損の事故が起きた場合、保険でどうにかなるんでしょ?とお思いかもしれませんが…それは否。免責事項になるかどうかはその事故が予見できたかどうか、に焦点が集まります。国家賠償法

かかり枝を以前から放置していたり、きちんと巡回点検などをしていなかったり、造園関係者から危険木の提案があったのに対応していなかったりすると、予見できたのに事故につながった、となります。

私たち(造園業者)が注意すること

造園業者として樹木を剪定する際、必ず枯れ枝は除去します。
私の場合はまず最初に枯れ枝を取り除き、そのあとの整枝剪定です。
なので剪定後は枯れ枝が残っていない!、と理論的にはなりますが、言い切れないこともあります。
なぜなら、枯れ枝かどうか、時には触らないと分からないこともあるのです。

クスノキ。しっかりとした枝のように見えるけども・・・
しっかりとした枝のように見えるけども・・・
過去の剪定跡から腐りが入ってました。
はさみがザクザク入っていくほどに腐りが。
木部はスポンジ状。

この枯れ枝は4mくらいの高さにありました。よく見ると不自然な樹形になっていて発見できましたが、外観だけでは枯れていることが分かりにくい枝でした。
このように樹皮はしっかりしていても、内側の木部がグズグズのものは見ただけでは分かりにくいです。

木部の半分が腐ってました。
地下まで不朽が進行してました。

次に伐採の依頼のあったこの樹木。
地上部は旺盛に生育しており、体重をかけたところ、違和感がありました。案の定、不朽が写真のように進行しており、根元から倒れる恐れも。
木部はいわば死んだ細胞の蓄積。形成層が生きていれば樹木は枯れないので、見た目に騙されないよう気をつけないとですね。

私たちはよく樹に登りますのでこれらのような枝に足や手をかけると事故につながります。体重をかける前に生木なのか枯木なのか、しっかり見極めながら登ります。造園業をされている方ならヒヤッとしたこともあるのでは・・・?

残すべき枯れ枝(24/10/7追記)

「枯れ枝は取り除く」は基本ではありますが、例外もあります。
樹種によっては枯れ枝の不朽が進みにくく、落枝の可能性が極めてすくないものもあります。ビャクシン(シンパク、イブキビャクシンとも)という樹種がその例です。高級盆栽に使われるビャクシンですが盆栽でも”枯れ”は白く硬く、見せるものとして残されます。
20mを超える巨木であってもこの樹種の枯れ枝は落ちる気配なし。まさにカチコチでたたけば高い音が鳴ります。こういったものは修景的な意味も含め、枯れ枝であっても残すことがあります。

最後に

「グリーンインフラ」という言葉をご存知でしょうか?
ダムや道路などをグレーインフラと表現することに対し、公園や緑地などの樹木や草花をグリーンインフラといいます。街路樹などはイメージしやすいのではないでしょうか。
植物も生き物ですが、インフラとして扱う考え方があります。水道管や橋梁、トンネルなどの老朽化はメディアでもよく取り上げられていますが、グリーンインフラはどうでしょう?
樹木に「老朽化」という表現を使うことは少々抵抗がありますが、インフラとして考えてみると、維持作業や更新作業も必要となってくるでしょう。
私たち樹木医や造園業者が毎年剪定や消毒を行っており、安全を維持するよう努めていますが、老朽化は進んでおり、いつ枯れ枝や倒木が起きるか、「必ず」は言い切れません。
公園や緑地などでみどりを楽しむ前に、目の前のグリーンインフラを少し確認してみて、安心して気持ちよく樹木たちと付き合ってみてはいかがでしょうか?

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