釣りバカに釣られる魚は、同じ魚仲間にも見下されている気がする

「人間の死亡率は100%だから」

 それは違うような……。偶然目にした記事の見出しに引っかかって、ついクリックしてしまった。
 記事の中身は、連載中のエッセイ4コマ? の最新回。
 長生きできる時代だからこそ人生で迷っている時間はなく、隅から隅まで楽しまなければ損だ、という内容だった。これ自体は僕もその通りだと思う。
 ただ、まったく本筋とは関係のない揚げ足取りであることは重々承知で言わせてほしい。

 人間の死亡率は100%ではなくないか?

 作者さんが『死亡率』をどういう計算式で捉えているかは分からないが、僕の感覚では、人間の死亡率とは(これまでに死亡した人間の数)/(すべての人間の数)だ。「すべての人間」とは「過去に存在し、すでに死亡した人間」と「現在生きている人間」の集合であるから、「現在生きている人間」の分だけ死亡率の分母は大きくなる。つまり100%を下回る。

 具体的に計算してみよう。「過去に存在し、すでに死亡した人間」の総数を仮に1000億人とする。現在の世界人口は約80億人であるから、「すべての人間」は1080億人だ。先の式にあてはめ、死亡率を計算してみる。結果は92.6%だ。

 もちろん、本当に言いたいのはいわゆる「人は必ず死ぬ」的な文脈であって、「死亡率を計算してみると~」なんて屁理屈でないことは分かっている。実際、「人は必ず死ぬ」ではセリフとして陳腐だからちょっと変に捻ってみただけなのだろう。

 記事の雰囲気からしてそんなことはないと思うが、もし作者なり編集部なりが、こういう揚げ足取り太郎(2002~)を釣れるよう表現を工夫して、クリック数を稼ぐ魂胆だったなら脱帽ものだ。本当にそうだったなら、生粋の𝐼𝑛𝑡𝑒𝑟𝑛𝑒𝑡 𝐵𝑜𝑦……である僕にとっては一生の恥なので、さっさと介錯しにきてほしい。

 良くない部分が出てしまったので、最後にひとつ素敵な話でお口直しを。
 先日、大学までの道のりを歩いていると、同年代くらいの自転車の女の子を見かけた。その女の子は、片手に素朴な花束を持っていて、信号が青に変わると、颯爽と走り去っていった。ちらりと見えたポピーとカスミソウが自転車の風に揺れていた。
 とくにオチはなく、それだけの話なのだが、ただ僕もそういうふうに生きてみたいと感じた出来事だった。

 さて、これくらいで取り返せただろうか。
 IDの数だけ腹筋をしながら送信。

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