クックパッドとかいうラフテル
朝起きて、第一声、「とんでもない発明だ……」と思った。
たまに目が覚めると、頭の中にアイデアが漂っていることがある。夢で見たのか、まどろんでいるときに無意識で考えたのか。それは分からないが、その内容は多種多様だ。書いている小説に関するものもあれば、そうでないものもある。今回でいえば後者だった。
それはある料理のレシピだ。これ以上ないほど画期的で新しいお菓子のレシピだ。いくら記憶をさらっても、僕はそれを見たことも聞いたこともなかった。だが思いついてみれば、どうして誰もやっていないのかと不思議に思うほどの納得感をもっている。つまり大発明なのだ。
あまりハードルを上げてがっかりされてもいやなので、さっさと具体的な話をしよう。
使う材料は砂糖、水、生クリーム。そして主役はポン菓子だ。
察しの良い方ならこの時点で「ああ!」と膝を打っていることだろう。
前半3つから作られるのはキャラメルソース。それをポン菓子にかけることで、ポップコーンのキャラメル味のようなことができると考えたのだ。
言われてみればポップコーンもポン菓子も、似たような仕組みで似たような見た目。トウモロコシを使うポップコーンと米のポン菓子。和風ポップコーンと名乗るのに、これほどの適材はそうないだろう。映画館でコーラ片手に食べられたっていいはずなのだ。
映画館でポップコーンが普及したのは、(発祥であるアメリカでは)トウモロコシが安価で、スナック菓子等に比べて静かに食べられるからと聞いたことがある。だが最近はチュロスやポテト、果てはタンドリーチキンまで売っているのだ。映画館というアトラクションの進化とともに、かつての初心はとうに失われている。だったらその末席に、ポン菓子を加えてやってもいいじゃないかと思うのは、博士の異常な愛情だろうか。
寝ぼけまなこをこすり、スマートフォンを手に取った。着信はない。ブラウザを開く。このポン菓子キャラメルが本当に発明なのか、考えたのは僕が世界で初めてなのか、確かめようと思った。
「ポン菓子 キャラメル」で検索。
真っ先に出てきたのは、クックパッド。
皆までは言わない。まあ、既出だったわけだ。
驚嘆すべきはクックパッドだ。ひょっとしたら、これから人類が考えるすべての料理があそこには眠っているのかもしれない。
発明ではなかったとはいえ、不思議なものだ。どうしてこんなことを思いついたのか。ポン菓子なんてここ半年は食べていない。まるで寝ている間にアイデアを植え付けられでもしなければ、こんなことにはならないだろうに。
カレンダーを見て気づいた。そういえば、今日は金曜日だ。
夜には映画ドラえもんを観ようと思う。
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