ゲーム『穢翼のユースティア』感想 魅力的なキャラクターたちについて
こんにちは。vita版の『穢翼のユースティア』という美少女ゲームをクリアしたので感想を書いていきます。まだおまけは見ていませんがとても面白いゲームだったので感想をすぐにでも書きたいと思い、こうして書いています。ネタバレだらけなのでご注意ください。
このゲームの魅力的なところは世界観、ストーリー、テキスト、音楽、絵などたくさんありますが個人的にはキャラクターの良さがあると思いました。萌え的な意味だけではなく、魅力的なキャラクターがたくさん登場します。全員ではないですが一人ずつ感想を書いていきたいと思います。キャラクターによって感想の長さは違いますが、どのキャラクターもそれぞれ魅力的だと思っています。
カイム
主人公です。最初は主人公にしては冷たい性格だなと感じました。でも牢獄ではそうでないと生きられなかったのだなというのが物語を読み進めるとだんだん分かってきて、責められなくなってきました。
コレットの前の聖女が処刑された時、聖女に対して死ねと叫んでいたという描写は主人公の描写としては珍しいなと感じました。そういった負の感情を抱えている主人公だからこその物語だったと思います。
それとよく他人に説教をしているな……と感じていたのですが、ユースティアルートでそれが全部カイム自身に返ってくるのは上手な展開だなと思いました。
このゲームの感想でユースティアルートでのカイムの決断が遅いという意見をたまに見かけましたが、個人的にはそうは思いませんでした。都市の命運がかかっているというのは言葉は抽象的ですが、大崩落後兄弟代わりとして育ってきたジークや、なんとか自立し始めたエリスなどの命も秤には載っているわけで、いくらカイムがティアの事を好きだとしても迷うだろうなと思いました。
フィオネ
フィオネは最初に攻略したキャラクターだったので、彼女のルートはこういう世界観のゲームなんだな〜ということに気を取られていてあまり彼女自身を見ることができず個人的にはフィオネに申し訳ないです。
フィオネはいわゆる戦う女性キャラクターで、格好良いのですがそれだけではなく融通のきかない部分を持っています。ただ格好良いだけのキャラクターではないところが穢翼のユースティアの良いところだと思いました。
個人的にはユースティアルートでの関所を守る際、本当は牢獄民を手にかけたくないという気持ちと仕事をしなければならない気持ちとの間で揺れている姿を見て、戦っているのだとしてもそのひとりひとりはやっぱり人間なんだな……と感じました。リシアを支えるシーンも良かったです。
エリス
エリスは個人的にこのゲームの攻略キャラクターの中で一番好きなキャラクターです。最初は皮肉屋でツンデレなのかな? と思っていたのですが彼女の抱えているものはずっと重かったです。
私は普段ヤンデレ系のキャラクターをあまり好きにならないのですが、エリスはエリスルートでの行動こそ変わっているものの彼女の根底にある気持ちは理解できるような、それでいて簡単に理解できると言ってしまってはいけないようなものがあって良かったです。私は彼女が個別ルートやその先で自立してしまった時に、カイムとの共依存が見たかったので少しがっかりしたのですが、カイムに身請けの時のお金を返しに来た時にすごく良いシーンだと思いました。だからこそエリスを自立させるという展開にしたのかと納得しました。
それにしても、野外診療所での経験がエリスにある意味良い影響を与えた部分があったのだとしたら皮肉ですね。
コレット、ラヴィリア
この二人はまとめて書きます。コレット、ラヴィリアルートは私自身が宗教や信仰というものに苦手意識を持っているせいか最初はあまりはまりませんでした。でも、コレットが教会の信仰(聖女が都市を浮かせている)をへし折られて、それでも自分自身の信仰(天使様)を自分で見つけていく姿は良かったです。
また、救世主としてのコレットもフィオネとはまた別の意味での強さがあって格好良かったです。ジークと手を組むしたたかさを身に着けたところもいいなと思いました。
ラヴィリアは本当にいい子だなと思いました。他のキャラクターたちが一筋縄ではいかないものを持っている中、彼女はある意味普通の人間で、その彼女がコレットについていくのも良かったです。良いキャラクターだと思うので、ラヴィリアのルートは独立したものとして読みたい気持ちもありました。
リシア
リシアの魅力はなんといっても登場した時から物語が進んでいくにつれての成長度合いだと思います。この作品ではカイムやエリスなどストーリーの中で内面的に成長していくキャラクターが多いのですがリシアの成長ぶりには驚きました。
リシアルートを読んでいて思ったのは、私がもしリシアの立場だったとしたら恐らく彼女のようにはなれないなということです。執政公の嘘を仮に知ったとしても、自分に危害を加えなければ見てみぬふりをしてしまうだろうなと。だからリシアの迷いには勝手に共感しました。なのでそんな中カイムがリシアに俺のことが嫌いでも会議には出ろと言うシーンは刺さりました。
また、王になってからのリシアがユースティアルートで必死に暴動を止めようとする姿は、これまでのリシアの姿を知っている身からすると悲しかったです。でもコレットたちが悪いわけでもなく、正義と別の正義との戦いだなと感じました。
ユースティア
メインヒロインです。最初の方からふわふわしている部分もあるけれどいい子だと言うことは分かっていたので、かわいい、報われてほしいと思っていました。フィオネルートでティアが泣いていたのも印象に残っています。
基本的には明るいので重たい話が多い本作の癒やしポイントでもありました。
でもただいい子なだけではなく、もしもカイムが自分が死んだ後で他の人と結ばれてしまったら嫌だとティアが思うシーンは人間らしくて好きです。それでもカイムのために彼女は人間でなくなってしまうのですが……。
ジーク
ジークは最初、なんだかセクハラっぽいなあ……と思っていてあまり魅力的に感じていませんでした。でもカイムとのやり取りは皮肉にしても牢獄での兄弟としてのものとしても面白く、クスッとブラックな笑いを誘いました。
ベルナド達との戦いではリーダーとしての強さを発揮し、拷問を受けた部下を楽にするシーンは重みがありました。最後のコレットたちと共にした戦いでも、ジークの強さは貫かれていて良かったです。私は勝手に彼はストーリーの中で死んでしまうのではないかと思っていたので生き残ってくれて良かったです。
そして、私が一番好きなジークのシーンはコレットの代の崩落の後、メルトの敵を討ちたいと言うところです。本当にメルトの事が大切だったんだなと思いました。メルトが亡くなって悲しんでいるのはカイムだけではないというのも、場違いかもしれませんが救いがあるような気がしました。
その後色々言いながらもコレットたちを生かしてくれて、それが救世主に繋がってくるのも良かったです。
メルト
メルトもエリスと並ぶくらいに好きなキャラクターです。彼女もリリウムでの生活でも、身請けされた後でもなんとか明るく生きてきた強い人だと思います。私はメルトが登場するシーンになると何故か毎回安心した気持ちになりました。
客に恋をしてしまった遊女に、あんたは売れて売れて仕方がなかった女じゃないか、店までもらって……と言われるシーンは辛かったです。遊女の気持ちも分かるような気がしますし、かといってメルトは彼女ではないから彼女をどうにかすることは出来なくて……といった葛藤を感じました。
メルトは基本的に優しいですが清濁併せ呑むようなところもあって、カイムとジークの両方と遊女としての関係を持っていたしたたかさ(仕事だから仕方ないのですが)もある良いキャラクターだと思います。カイムもそうですがそういうふうにしかきっと生きられなくて、でもその中で明るく優しくあろうとしたメルトが私は好きです。
クローディア、リサ、アイリス
リリウム三人娘はまとめて書きます。
クローディアは上品な雰囲気があって、リリウムという場所でもその上品さを保っているのが眩しいなと思いました。また、他の遊女たちを気にかけているのも、きっとクローディアにだって余裕はないだろうにすごいなと思いました。彼女が自分の仕事に少しでも誇りを持てているといいなと勝手に思いました。
リサはリリウムでの仕事が辛すぎて現実逃避のために少しハイになってしまった女の子です。そういった気持ちは、彼女ほどの境遇でなくても多くの人が経験するものだと思います。この作品には人間の強さを感じるようなキャラクター達が多いですが、彼女はそこまで強くなくて、それでもやっぱり生き残ろうとして心を犠牲にする姿には悲しさと強い意思を感じます。
アイリスは恐らく幼い年齢でリリウムに売られた子です。なのに彼女はどこかで生きることを諦めているような雰囲気があり、それでもカイムがコレットの代の崩落の時に飛び降りるのを必死に止めました。アイリスは口調こそ毒舌ですが、心のどこかにまだあたたかい気持ちを持っているキャラクターだと思います。
アイリスがリシアに身請けを申し出られて激怒するシーンも印象に残りました。あの時のアイリスの気持ちは私には全ては理解出来ないのですが、あの年齢でもなんとかプライドを持ってやってきた彼女の事を思うと苦しかったです。
ルキウス
ルキウスは独裁者(執政公)を倒すために頑張ってきましたが最終的に自分が独裁者のようになってしまいます。こういった事は恐らく現実にもあるんだろうなと思いました。彼の言っていることは間違ってはいないけれど、そのために多くの人の命が犠牲になってしまいます。
ただルキウスが執政公と違うのは、ルキウスはある意味正気の状態で独裁者のような事をしているということです。執政公とどちらの方がより悪いのかは私には分かりません。
彼が最後までルキウスでありアイムにはならなかったのは、ルキウスが都市の人々の命を奪った事から自分は逃げてはならないと思ったからでしょう。それはそうでなくてはならないことだったと私も思いますが、アイムとしての彼は果たして救われたのだろうかと少し悲しい気持ちになりました。
システィナ
システィナはルキウスの副官で、ルキウスのことを慕っています。私はシスティナの格好良いところとルキウスへの想いが好きです。ルキウスとシスティナは恋愛的な関係こそ結びませんが(そんなことをしてよい立場ではないということを二人とも分かっているのがいいと思います)、信頼関係があり、システィナは最後までルキウスに尽くします。
ティアにシスティナが同情していたのも、自分とルキウスの関係を当てはめていたからだと思います。しんどいですが好きな関係性でした。
また、システィナは戦う女性という意味でフィオネと似ていると思うのですが、ユースティアルートでのフィオネが恋愛を選ばず、システィナがルキウスに仕えることを選んでいるのが対比としていいなと思いました。カイムとシスティナが初めて会うのが確かエリスルートで、その時点ではもうフィオネとカイムのフラグは折れているのでそれが意図的なものにせよたまたまにせよすごいなと思います。
ギルバルド
わりと全ての元凶のキャラなのですが、ユースティアルートでカイムが都市を捨ててティアを選んだのとギルバルドのやっていたことは似ているなと思いました。だからギルバルドの全てを責めるのは違うのかな……と思ったり、でもやっていることは悪そのものなので……彼が悪ならカイムも悪なのか……と考えてしまう難しいキャラです。結局カイムが許された(?)のは結果的に最後に都市が滅ばなかったからなので。
ガウ
ガウは最初は正直なんだこいつと思っていたキャラクターなのですが、彼女はこうなっていたかもしれないカイムの姿なんだなと思いました。牢獄で女がどうなるか知っているだろう? といった言葉はガウのこれまでを想像させて辛かったです。ただ、カイムも性的な意味で売られかかっていた過去があるので男女だけでは言えないなと思いました。
長文になってしまいましたが、今回のnoteはここまでです。本当に素敵なゲーム体験でした。
ここまで読んでくださって本当にありがとうございました。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?