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ショートショート・おはなし

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ショートショート・短編・小説等まとめです。
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#超短編

『東京オリンピック大失敗』 超ショートショート

開会式が始まるその日、各局では朝から中継が始まりその瞬間を今か今かと待ち構えている。 スタジオでは芸能人らがヘラヘラと開会式がどんな催しなるか予想したり、金メダル期待の選手を何時間もかけて特集したりしている。そしてついに開会式がいよいよ始まる10分程前という時間になり…スタジオのアナウンサーが一旦スタジオの盛り上がりを抑えて、仕切りなおし、静かに話し始める。 「さぁ時刻は回りまして…はい…いよいよ始まります…東京夏季オリンピック。東京は国立競技場、もうすぐ始まる開会式ですが

『学生』 超ショートショート

Aの部屋にて A「もうダメだ、大学ではいつも一人、就活もなかなかうまくいかない。自分の将来も考えるだけで吐き気がするよ、はぁ」 テレビつけると夏休み明けの憂鬱の特集を、やっている。 テレビ「学校へは行かなくても良いんです。君の居場所はたくさんあるんだから。嫌だったら無理に行かなくていいんだよ。それでも全然生きていけるし君はまだ若いんだから大丈夫よ、大丈夫」 おばさんコメンテーターの優しい言葉にAは涙ぐんだ。 A「そうか…行かなくてもいいよね。もう単位なんてどうでもい

ショートショート「焼け」

『焼け』 父と息子。二人は丘の上にある小さな公園から景色を見ている。 「ねぇお父さん、向こうの山の方を見てよ、夕焼けがすごい綺麗だね」  「ああそうだな、とても綺麗な朝焼けだ」 「夕焼けでしょ?」 「いや、あれは朝焼けだ」 「そんなの嘘だよ、僕は騙されない」 「騙すも何もそう決まったんだ」 「誰が決めたの?」 「国の絶対最高機関だよ、テレビのニュース見てないのか?」 「何それ、どういうこと?」 「さぁ詳しくはよく分からん、でも俺たちは何も考える必要はない

ショートショート「夜と男」

ルール:思いついた3つのワードで短編小説を作ります。 今回の3ワード:美人,山間,電灯  『夜と男』 コンクリートで舗装された山間の車道。深い森に囲まれた曲がりくねったその道は日中であればサイクリングをする奴らで賑わう。でも夜になれば、人の姿は無くなって辺りは一切の闇が包みこむ。 夜、俺はあてもなくこの山間の道を1人歩いていた。手に持った懐中電灯、豆電球の灯は淡く俺の足元をオレンジ色に照らしてその行く先をぼんやりと小さく浮かび上がらせる。試しに遠くを照らしてみてもその微

ショートショート「人影の町」

ルール:思いついた3つのワードで短編小説を作ります。 今回の3ワード:タクシー,うちわ,スマホ 『人影の町』​ 8月の中旬、連日この町は地獄のように熱くクーラーのついた車内を出ればモワッとした空気が包み込む、日差しは皮膚を焼くほどに強く熱い。 自動販売機でスポーツドリンク買って、私はすぐに車内へと駆け込んだ。 「あぁ暑い暑い、ちょっと出ただけでもうこの汗だ。クーラーが無きゃ死んじまうな。」 そんなことを言ってると車道の向こう側を近くの中学校の野球部が掛け声をかけながらジ