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#9 ヴィヨンの妻

今年は古典的な文学にも触れたいということで、たまたま手に取ったのが本書であった。

この本で描かれている世界は

ロマンチックからのリアリティ

である。

妻が夫を思う気持ち(ロマンチック)

飲み屋から金を奪って逃げてきた夫。飲み屋の店主が追いかけてきたところ掴み合いになって、警察沙汰になりそうになった。そこで妻が説得し、翌日から店で働くことになった。子連れで大変にも関わらず、夫のために働く姿に女性の強さを感じた。

気付かされるリアリティ

女は働いて気づいてしまった、その飲み屋には悪人が集まることに。おそらく夫も悪人たちに影響されてしまったのではないだろうか。女性は冒頭では笑顔を見せて明るい印象だったが、次第に暗くなっていく。最後には「生きてさえいればいいのよ」と現実的な発言もしている。

人の本性はわからない

最後飲んだくれの夫が金を奪った理由も「久しぶりにいいお正月にしてやりたかった」と意外な優しさを見せた。

夫に一途な妻と思いきや、飲み屋で出会った青年と一夜を過ごしている。妻の想いの強さは、案外こちらが思い描いているだけなのかもしれないと偏った見方をしていた自分が急に恥ずかしくなった。

人の行動はその人の一面であり、行動=性格なわけではない。本に出てくる登場人物についても同じようなことがあるので、性格を決めつけて読むのは危険だなと気づいた。今後は文脈をしっかり捉えて読めるとよい。

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