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ちょうどいいコミュニケーション

松江日乗 イノハラカズエ著


「本はさっぱり売れないけれど、お客さんが毎日のように差し入れを持ってやってくる。」
私の古本屋ブームがいまだ続く中、この表紙のことばに心惹かれる。
「契約はしないけど、お土産だけはたくさん持たせてくれるお客さん」にどれだけ会ってきたか。嬉しいけれど。

人はつながりやすくなったのに、どこか希薄で孤独な人が多いことが言われる。そもそも人は孤独。価値観も考えも違うし、同じ人もいないのだから、無理に接触しなくていい。むしろ、離れていて当たり前を前提にしたい。
「一期一会」っていいことば。どんな蜜月もいずれ終わる。人間関係にはもうとっくに冷めている。

イノハラさんの経営する冬營舎に訪れる人々は、年齢に関係なく個々に自分というものが確立されていて、その個を活かしつつ程よい距離感でお互いを接触させているところが、ちょうどよい温度で心地よさを感じさせてくれる。イノハラさんの冷静な観点も好き。その感覚は自分に近い。

ビジネスだから売れないと困るのだけれど、やっぱり「そのほかの諸々」が大事。自分とは違う道を歩いてきた人から教わることは多い。
人の行き来の中から、自分を大事にすること、さりげなく相手を思いやること、ほどよい距離感、NOを言える環境、そして「自分は自分」の精神が創り出されている。

こうやって、日々地方の古本屋さんにあこがれ続けている。運命とも思し召しとも思われる流れに乗ってその地にたどり着き、そこで古本屋さんをはじめて生まれるおもしろやさしいコミュニケーション。
このイメージで仕事をしたいな、と思う。

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