見出し画像

005『白川郷を歩く3番外編飛騨高山を歩く』

005『白川郷を歩く3番外編飛騨高山を歩く』

文:守屋佑一

2009年8月31日未明

暑い。とにかく暑い。それでも極限の疲労が身体中を蝕み、暑さを軽減するアクションをとることが出来ない。
自分が起きているのか寝ているのかも分からない朦朧とした状態で苦しむなか、誰かが車全部の窓を空けてくれたのが分かった。
少し風が入ってくる。
ああ良かった。死んでしまうところだった。
ほっとして僕はまた眠りについた。

朝の6時半頃。日が出てきてまた暑くなってきて僕は目を覚ました。車の窓が全部開いている。夜中のことは夢ではなかったのだ。まだ眠るみんなに遠慮して僕は一人朝の下呂で散歩をした。
朝の観光地の爽やかな空気。
とてもお腹が空いたのでコンビニで大盛パスタを買って一人食べた。

車に戻ると、みんな起き出した。後部座席のYSはゲームをやりながらポテトチップスを食べ始めた。運転席で寝ていた僕が必然的に運転をすることになった。
この日は旅の最終日。
小田原に帰る前に飛騨高山に行って鍾乳洞を見ようと前日に本を見ながら決めたのだった。

飛騨高山で見た鍾乳洞は大橋さんという人が発見したらしい。
大橋コレクション館なんてものも併設されていた。べつに偉くなりたいとは思わないが、こうやってコレクションを見せられるような場所は趣味人として将来欲しいかもしれない。

鍾乳洞のなかはとても涼しく、快適で案内板には説明も丁寧にしてあり、分かりやすく楽しめた。

案内板の一つにはコウモリがこんな風に書かれていた。

きっと大橋さんは茶目っ気のある人だったのだろうか…いや、誤植か…しかしこんな誤植誰も気付かない訳がない…
ともあれ鍾乳洞を後にし、そこで昼食をとった。
これまた観光地特有の寂れているようで寂れていない場所でとる夏休みのお昼はなんだか懐かしい気持ちを感じさせた。
途中スズメバチが乱入する。
騒ぐTY。そうだ。こいつは中2のとき部活中スズメバチに刺されたんだっけ。
YSは料理に使われた味噌に感銘を受けてレシピまで聞いて味噌を購入していた。いやまて、お前は家で料理なんかしてるのか。さらにパチンコのための財布に入れるパワーストーンまで購入していた。突っ込みどころが多すぎる。

それにしてもお昼よりはだいぶ早い時間だったことや8月の最終日ということもあって、その食事処にはほとんど人がいなかった。
盛りの間は毎日忙しかったのだろうか。
9月に入れば、ここで働く人たちは夏の間の休みを取り戻せるのだろうか。

大学3年生。じき就活が始まるということもあって僕は働くということについてぼんやりと考えていた。

飛騨高山をあとにし、小田原を目指す。下道で長野、山梨経由だ。また飛騨高山もゆっくり歩きたい。その後2015年2月にこのへんは少しだけ歩くことになるのだけれどそれはまたの機会に。
道中温泉を探す。昨夜の車内蒸し焼き状態で身体にはまだ嫌な汗が残っている。
修学旅行で行った日光のいろは坂を思い出すような坂とカーブ。もちろんあのときはバスだったが、この旅では自分の運転。TYと交代での運転だったと記憶している。YSはこの旅で一度も運転しなかった。
そして、霧深い山中で姿を現した「神の湯」という温泉。

僕たちはここに入ることに決めた。

他にお客さんは二人。その霧も相まって本当に神様がいるんではないかと思えるような温泉だった。
そういえばこのとき、他のお客さんの一人が脱衣所に戻ってカメラを手に戻ってきてちょっと撮らせて欲しいと僕たちが温泉に入っていたにも関わらず何枚かの写真を撮影していったのだけれど、いったいあれはなんだったのだろうか。温泉雑誌のライターかなにかだったのか。
この疑問はいまだに解けていない。

温泉のおかみさんと話しているとやはり話は就職の話へと及んだ。おかみさんの息子さんは社会人になったばかりらしかった。働くということについて、考えてはいたし就活の準備もちゃんとしてインターンシップも行っていたけど、たかが1年半後に働いている自分をリアルに想像していなかった。いまでさえ1年半はあっという間に過ぎる時間だったけど、このときの1年半はとてつもなく長い時間だった。

山を抜け、霧が晴れると素晴らしき長野の景色。長野では松本城に立ち寄った。

長野を抜ければ甲府、河口湖。甲府はいつもいつもとても混む。

だんだんと旅の終わりが意識される。
河口湖まで来たらもう地元みたいなもんだ。
ここを抜けて国道246号と合流したらもう一瞬で小田原だ。

こんな感じではじめての自分たちの運転での弾丸旅行は幕を閉じた。

いつもいつも弾丸旅行はとても楽しいのだが、見たことや感じたことは覚えていても車内でみんなと話したことはたいてい覚えていない。それでいいのだろう。一々全てを記録する必要なんてなにもない。SNSが発達していなかったこのへんはだいたい全部がうろ覚えだ。
けれどもこうして文としてみなさんに紹介しようとするとやっぱりちゃんと記録しておけば良かったとそう思う。

皆さんもいつか白川郷と飛騨高山に行ってみてほしい。予定さえあえば僕も一緒に歩きたいものだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?