024『和歌山を歩く1 プロローグ』

024『和歌山を歩く1 プロローグ』

文:守屋佑一

一人旅ってとっても格好良いと思うし、憧れるのだけれどそんなにしゅっちゅう旅に行けるわけじゃないし、やっぱり仲間といくのが楽しくて結局一人旅をする機会はほとんどない。
けれども、いつかは一人旅をしてみたい。

僕は昔、こんなことを考えていた。

今から7年前の大学4年製の初夏。学生生活最後の夏休みに友人たちと行う旅の予定をたくさん入れていた。
このマガジン内にある『九州を歩く』もその時のものだ。

こんなに旅の予定ばかりなのだから夏休みに一人旅なんてのは無理かな、と考えていた。元来ネガティブな性格の僕は社会人になったらきっと旅行の暇なんてほとんどなくなってしまう(実際にはそんなことなかったのだが)と思い込み、なんとかしてどこかで一人旅をできないかと必死で考えていた。

そんな折、幸いにも就職活動がスムーズにいき、他の人たちより一足早く内定がもらえそうであった。
他の友人たちはもう少しあとに内定が決まりそうだし7月上旬ならばテストなども始まる前で一人旅ができるんじゃないかと考えた。

そうして無事、6月下旬に内定をもらうことができたので7月5日に一人旅をしようと決めた。

「一人旅をする」ということが目的だったのでどこに行くかということについてはギリギリまで決まらなかった。
漠然と関西の方にでも行こうかなとか考えていた。

それで、バイト場で一人旅で関西の方に行こうと思ってると話をしていたら、和歌山なんていいんじゃないかという意見をもらった。

和歌山。確かに盲点だ。関西といえば大阪・京都などといった月並みな場所くらいしか頭の中になかったので和歌山に行ってみようとそう思った。
なんでも、和歌山にはパンダがいるらしい。(この時はまだ上野にパンダが再上陸していなかった。)
ならせっかくだしパンダを見て、それと熊野古道でもいこうかなと。
計画ともいえないこんな計画を立てた。あとはいきあたりばったりだ。

そしてやってきた7月5日。
バイトを終えて家で身支度をして、日付が変わる少し前に家を出た。
移動手段は車。学生で金もないしずっと下道の予定。

カーナビに和歌山のどこだかを入れて目的地まではジャスト600km。
長いドライブが始まった。

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