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カナダの学校で見たcovid-19感染対策

covid-19パンデミックの影響を受けて、British Columbia州では2020年3月半ばから学校が閉鎖され、多くの授業がオンラインに移りました。その後、感染者数が落ち着いてきて、7月頃から対面授業とオンライン授業を混ぜて実施する学校が出てきました。この記事では、カナダの学校内で見かけたcovid-19感染対策の工夫について記録しておきます。

※この記事の内容は、あくまでもBritish Columbia州のある学校2020年7-8月におこなわれていた取り組みです。

よくいわれるcovid-19の感染予防策は、次のとおりです。

- こまめに手洗いする
- 人との距離を約2mとる
- 人が触れる物の表面を頻繁に拭く
- 体調が悪い場合は家にいる

学校では上記を実行するために、人数制限定期的な消毒導線の変更学校スタッフによる声かけといった方法がとられていました。順に説明します。

人数制限

1. 教室やトイレの使用人数を制限する

教室では、通常2人用と思われる机に椅子が1つずつ配置されていました。自分の体から半径2m以内にほかの人が座る椅子はありません。1つの教室に10-15人分だけ席がありました。

トイレの入り口には、「同時入室は最大3人まで」の貼り紙がありました。トイレ内の通路はせまいので、手洗い場などで人が近づきすぎるのを避けるためでしょう。トイレの外の床に2m間隔でビニールテープが貼られていて、距離を保って順番待ちをするようにとの貼り紙があります。

2. 出席曜日と時間を分散する

人数制限をすると大勢での授業はできないので、クラスを複数の小さなグループに分けて、登校曜日や時間帯をずらす工夫がされていました。たとえば、次のタイムテーブルのような感じです。

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グループ1の生徒は、月曜の午前と水曜の午前だけ登校して、ほかの曜日は自宅で自習します。同様に、グループ2の生徒は、月曜の午後と水曜の午後だけ登校する、といった具合です。

金曜日は、特に支援が必要な生徒のためにあらかじめ確保されていました。どのグループの生徒でも、「今週は金曜日も学校へ行って先生に質問したい」と思ったら、前日までに教師に連絡して予約します。教師が時刻を指定して、登校を許可します。(質問はオンラインツール (Microsoft Teams) やメールでもできるので、この仕組みを使う生徒は少数でしたが)

3. 休み時間を分散する

休み時間を全員が一斉にとると、通路やトイレに大勢の人々があふれてしまいます。そのため、休み時間の開始と終了の時刻がクラスごとに細かく指定されていました。これによって、教室外に一度に出る人数を制限します。

定期的な消毒

1. 入り口で消毒液をスプレーする

学校の入り口は一箇所だけ開放され、建物を出入りする時は必ずそこを通ります。建物に入ってすぐの空間に机と椅子が設置され、常にスタッフが座っていて、入館者の手のひらに消毒液をスプレーしていました。

スーパーマーケットで同じ方式で消毒をおこなっているのを見かけたことがあります。人を配置するのは、無人の場所に消毒スプレーを設置しても使われなかったり、プッシュ式容器自体が多くの人の手に触れて汚染されたりするからでしょう。

2. 休み時間ごとに教室を消毒する

休み時間に清掃スタッフが教室に入り、机や椅子の表面を拭いていました。作業の妨げになるため、教師や生徒が休み時間に教室に残ることは許されず、荷物や上着も教室の外に持ち出します。

前述のとおり、休み時間はクラスによって異なるので、清掃スタッフが短い時間に大急ぎで複数の教室を消毒する事態は避けられています。スタッフは休み時間がはじまったクラスを順に回って、丁寧に作業していました。

導線の変更

1. 手洗い場に直行させる

建物に入ってすぐ消毒液をスプレーされた後は、壁や廊下の表示が入館者を手洗い場に誘導します。この学校では、教室内に複数の流し台がある科学実験室を一部屋、手洗い場に流用していました。

お湯が出る水道で液体石鹸を使って手を洗い、ペーパータオルで拭いて、ペーパータオルはゴミ箱に捨てます。

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2. 通路や階段を一方通行にする

せまい空間で人々がすれ違うのを防ぐために、ほとんどの通路が一方通行に指定されていました。1つの建物の中で、南階段は下り専用、北階段は昇り専用というように、階段も使い分けられていました。

写真のような目を引く色の一方通行表示が、数メートルおきに壁や床に貼られていました。

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学校スタッフによる声かけ

1. 入館前に体調を確認する

建物の入口の外にスタッフがいて、登校した生徒に次の事項を質問していました。

- 熱はないか
- 咳や鼻水などの症状がないか
- 同居者に上記のような症状のある人はいないか
- 2週間以内に海外から渡航してきた人と同居していないか

すべてNo(はい)なら入館が許されます。

2. 生徒に人との距離をとらせる

学校スタッフが校内の生徒に実にまめに声かけをしていました。固まって会話したり、1つのスマートフォンを複数人で覗き込んだりしている集団がいると、学校スタッフが「6フィート (2m) 離れてくださいね」と言います。

また、一方通行の通路を逆向きに通る生徒がいたら、一方通行である旨を伝えます。大きな声を出したり、怒って驚かせたりはせず、ごくふつうの口調で伝えます。異様に厳密な運用をするようなことはなく、すれ違う人がいない場合は、逆走は見逃されますし、スタッフも逆走していました。

所感

7月からオンラインと出席混合のコースを受講し、さまざまな仕組みによって学校のcovid-19感染対策がおこなわれているのが興味深かったので、この記事を書きました。

これらの工夫のなかで改善点を探すべき箇所があるとすれば、声かけでしょうか。建物の入口での質問は、やはり形骸化しがちに見えました。初日にはかなりじっくりと質問されましたが、数週間後にはお経のような早口で儀式的に問うだけで、No以外の回答を想定していないのが明らかでした。まあ、授業を受けるつもりで学校にきて、入り口で熱がありますと申告して帰されたい人はいませんよね。

安全な環境を維持するには、仕組みを作る側だけでなく、参加する側の協力が必須だと感じました。授業が終わると同時に教室を飛び出して、ほかのクラスの恋人と熱いキスや抱擁をする生徒たちもいます。スタッフの「6 feet!」の声は彼らには届きません。やれやれ。

なにはともあれ、パンデミックで大変な時期でも授業を提供し続けてくれた学校と先生方に感謝します。


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