未完小説 鮮血の彼岸花
飼い犬に襲われたことがある。一瞬のことであった。あんなに愛想のいい毛玉が、私の腕に噛み付いた。尖った犬歯は、動脈を突き破り、血が噴水のように湧き上がる。左手で庇っても、止まらない。しかし、痛みより驚きの方が勝るのであった。初めて見た、自分から溢れる血はまるで赤い花だった。
時計に付属した温度計は二十三度を示す。殺されるような暑さはやみ、やっと秋らしい肌寒い風が窓の隙間を、ヒューという不気味な音を鳴らしながら通るのだった。
教師が余分なエネルギーを使って、チョークで黒板に殴り書く。その数式を必死に追いながらも、風の音の煩わしさに耐えられず。私は窓を閉めようと、二席分ほど離れた窓を目指して、腰をあげる。
「おはようございます」
椅子を引く鈍い音と同時に、黒板側のドアが開く。そして、授業中関係なしといった大きな声で、数式を途切れさせる。ガサツに長い髪を結んで、サバサバとした足並みで入ってくる田中桔梗だった。
「おい、田中。元気なのはいいことだがな。今授業中なんだぞ、空気を読んで入ってきたらどうだ」
「すみません、気をつけます」
遅刻した桔梗は、頭をペコペコ下げながら自分の席についた。そして観衆でひそひそと笑いが起こる。そして、教師は全くもうと言いたげな表情で黒板と再び向かい合った。
なんとなく序盤だけ書いた小説をあげます
この後のストーリは一切考えてません(*´-`)