【小説】キマイラ/半端な淫夢の記録
プレゼントされたランニングウェアなるものが、ベッドの上に広がっている。前には姿見。
試着してみた。
なぜか、とうに出たはずの実家の自室にいる。
なぜなら、これは夢だから。
白黒のストライプ生地を切り替え集めて作られたカットソーは、ウェスト周りはぴったりと、続く胸元にはフリフリひらひらの装飾がくっついている。襟ぐりは広くひらいて鎖骨は露出し、かがめば胸の山や谷がのぞく。袖はフレンチスリーブで、かろうじて肩は被われているものの、二の腕はまる出し。脇あたりの開きも深い。
ホットパンツのような短さの白いボトムを履く。ホットパンツ姿のストップ!ひばりくんの画がちらと浮かぶ。裾はフレアーでひらひらとしていて、開放的というか。
もう、全身破廉恥で、あれこれはみ出てしまいやしないかと、試しに、鏡を前にベッドに腰かけて手をつき、膝を立て、脚を大きく開くと、衣服の布にも下着にもおさまりきらない双頭のぺニスのかま首が映った。
やっぱり。
こんな格好では外に出られない。
脱いだ覚えもないのにあらわになった下半身を眺めて、観察する。
まるで角のごとく、天に向かってそびえ立つ二本のぺニス。 色は意外にも無垢な肌色。浮き出た静脈をところどころに這わせながら、はち切れそうにぱつんぱつんに太く膨れて、怒っている。左の方がより太く、その分短くも見えるが、双方おそらく二十センチを超えている。
大きいって、なんだか面倒くさい。
やれやれだ。
視線を先端から落としてゆき、なるほどここからかとぐるり、発毛のラインを目でなぞるように確かめる。 陰茎という言い方があるが、たしかに植物の茎に根が生えているようでもある。
女性器があるべきところに見えるのは妙にシンプルなクレバスのみで、おそらくは女性器の何かが男性器の何かに発達したのだろう。女性の何が男性の何に対応する等あったはずだと、思い出そうとするが、思い出せず、諦める。
お医者にかかるべきか。
いや、これは病気ではない。治すようなものではない。
こういう身体というだけだ。
では。
誰が、こんな身体を抱いてくれるのだろう。
怖がられ、気味悪がられ、引かれるに違いない。
もう、誰にも抱かれることはないのか。
あるいは、こんな身体だから抱きたい、という誰かも必ずいるだろう。
それも嫌だ。
さみしい。
いや。
これが初めてだっただろうか。
そうではなかった。
こんな身体では誰にも抱いてもらえないと、思いつめた過去があった。
一度出会えたのだから、また、今度も、出会える。
私を開(ひら)き雄々しいぺニスたちを見られ愛撫され、恥ずかしがりながら切ない声ですすり泣き悦ぶ自分を想像する。
うん、違う。
突っ込む為に、私はこれを生やした。
誰のどこにどうやって突っ込みたかったのか。
突っ込んで、よがらせ、どうしたかったのか。
壊したかったか。
支配したかったか。
繋がりたかったか。
もう、夢は醒めている。
アレの、見た目はずいぶんと立派だったけれど、なんの身体感覚も私に伝えなかった。
夢だから、ではないと思う。
夢うつつのエクスタシーは私に珍しくない。
癒したかったか。
癒されたかったか。
(了)
こちらはりりかるさんの作品『Bar Lilith 03 妄想という名の媚薬 』『Lolita Lollipop 』にいんすぱいあされて書きました。
ご本人了承済みです。
他にもたくさんの方のたくさんの作品にいんすぱいあされています。
(あっ、否定しないで~断らないで~)。
いつもありがとうございます。
ヴぁんぱいあじゃないよ。
よね??
ヴぁんぱいあってパクリかも。
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