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貧乏草

その花を貧乏草と呼ぶ人は、きっといなくなるのだろう。

「びんぼう草なんてなまえ、ひどい」

何度もそう言い、くやしがり、怒っていたゆきちゃんを思い出す。

ふたりで探検していたある日、ぱっと視界が開けると、その花が生いしげる野原があった。

きれいだねと喜びあった。

一生懸命さがしたけれど、もう二度とたどり着けなかった場所。

息子には、貧乏草を教えなかった。

息子もそうと知らなかった。

私が貧乏草のお話をするのは、これを最後にしたいと思います。