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1月10日 日本のアニメはライバルを見いだせるか?

 先日、Netflixアニメ『アーケイン』の感想を書いて、その中に「日本は負けだ」と書いたけれども、あれでイライラした人は多いだろう。

 私としてはイライラしてほしいんだ。なぜなら日本のアニメには、長らくライバルがいなかったから。

 話を遡ること1958年。日本最初のアニメ映画『白蛇伝』が制作された時、東映社長は「日本のディズニーを作る!」と目標を打ち立てていた。この時代は日本の最大のライバルは米国ディズニーで、ディズニーに追いつけ追い越せだった。宮崎駿夫も東映動画入社時に「打倒米帝!」を掲げていた。これも当時の空気を引き受けての話だった。

 ディズニー第2の黄金期と呼ばれる『美女と野獣』や『アラジン』が制作していた頃、アニメクリエイターはみんなディズニーを見ていて、「あんなものはたいしたことない!」「日本のほうが優れている!」と言っていた。
 なんでそんなことを言うのか……というとライバル視していたから。対抗心があったから、「あんなもの……」なんて言っていた。
 その後、低迷期に入った頃になると、もう誰もディズニーの話題なんかしなかったもの。話題にしないってことは、もうすでにライバル視もしていなかったということ。
 2008年頃、ジョン・ラセターがディズニーを統括するようになった頃になると、日本のアニメとディズニーはまるっきり違うものになっていたし、ジョン・ラセターは宮崎駿の信奉者だしで(かつてと立場が逆になってしまった)、ディズニーは第3の黄金期に入ったけれどぜんぜんライバル関係にならなかった。

 その後、日本のアニメみたいな作品を作っているのは日本しかなく、世界中にライバルがいない。なんとなくアニメが世界を席巻している……みたいになっていった。実際、アニメを見ている人は世界中でどんどん増えていった。
 そこに『アーケイン』だ。
 『アーケイン』は作品としてとんでもなくクオリティが高かった。しかも内容といいトーンといい、日本のアニメと作風がぶつかる。これまで「日本のアニメが一番」と言っていた人達も、コロッと『アーケイン』に流れていくんじゃないか……というくらいだ。
 実績として、『アーケイン』は52カ国で視聴数1位を獲得するメガヒットとなった。数字を見ても、一気に日本を追い抜いた。世界的覇権アニメである。
 『鬼滅の刃』も日本では「覇権アニメ」かもしれないが、世界の覇権アニメは『アーケイン』だ。おそらく、たくさん配信している日本のアニメをトータルしても『アーケイン』には勝てないんじゃないか……というくらいだ。

 おっ、これはいいライバルになるんじゃないか?

 そう思って、私は感想文の中で煽ってやったんだ。
 日本のアニメは『アーケイン』に負けたよ……って。
 これに怒って、「そんなことねーよ! 日本のアニメが一番だ!」ってコメントに書く奴が出てきたら、私の大勝利。そういうのが一杯出てきたら、それが「もっとすごいのを作ってやる」という勢いになる。
 出てこなかったら空振りになるけど……。炎上でもすれば、「もっとすごいの作ってやる!」とか言い出す奴が出るんだけど……。

 まあそれはそれとして……。
 実際、今の日本で『アーケイン』ほどのビジュアル感、ドラマ感の強さを生み出している作品はないよ。「負けた」と思ったのは本当。こりゃ凄い、負けた……って。クリエイターを名乗る人は全員見るべき傑作。
 日本のアニメが世界一でありたい……と思ったら、打倒『アーケイン』を掲げて意欲を燃やしてもいいんじゃないか。


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