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6月30日 天外魔境……シリーズ復活しないかな……

CD-ROMを使った世界初のRPG『天外魔境』が発売された日。大容量を活かした演出が後のゲームに多大な影響を与えたほか、坂本龍一氏の起用も話題に【今日は何の日?】 - ファミ通.com

〈引用〉
 『天外魔境 ZIRIA』は、ハドソン(当時)から発売されたRPG。『天外魔境』シリーズの1作目で、世界で初めてCD-ROMというメディアを使用したRPGでもある。企画・原案を務めたのはアニメ『魔神英雄伝ワタル』シリーズや『サクラ大戦』シリーズなどで知られる広井王子氏。外国人から見た誤った日本的なテイストの架空世界“ジパング”を舞台に、自来也(ジライア)、綱手(ツナデ)、大蛇丸(オロチ丸)ら火の一族と、マサカドの復活を目論む大門教との戦いを描く。メインテーマなどの楽曲制作に坂本龍一氏を起用したことも大きな話題を呼んだ。

 『天外魔境』か……このシリーズ、復活しないかな。第1作目の最初からちゃんとリメイクしてさ。
 この『天外魔境』シリーズもずいぶん昔に終了してしまい、今やすっかり“過去の作品”扱い。若い人はこのゲームをやったことないだろうし、もしかすると存在すら知らないかもしれない。“過去の作品”というか、“忘れられた作品”だ。

 でもこの作品の独創性は唯一無二。「外国人の視点から見たおかしな日本」というコンセプトになっているが、もちろんそんなわけはない。なぜなら奈良の大仏が立ち上がるし、神戸では電車が走っていたりする。いくら外国人でもそこまでおかしな“日本像”を持っているわけがない。これは完全に日本人による日本の歴史パロディ。知っているからこそのパロディだ。
 そしてただ面白おかしくパロディとして即興的にポンと出したものではなく、これはある意味の“再構築”。日本の歴史、文化を一旦解体して、『天外魔境』という世界観、コンセプトに集約させて再構築したもの。それが『天外魔境』だ。
 この世界観が恐ろしく壮大で、遠大で、しかも奥深く作られているところにある。単純な「ちょっと愉快な日本」の物語に、背景にはがっちり作り込まれた巨大な“世界”があり、その上に物語やキャラクターが載っている。風呂敷が異様にでかいんだ。
 一見するとおかしな、奇妙な日本の風景だけど、入り込んでいくと広大な世界観があり、奥行きあるドラマがあり、最後には感動の名場面がある。『天外魔境』フォロワー的な“変な日本”をフィールドにした物語はそこそこあるけど、『天外魔境』ほど壮大に作り込んだ世界を持った作品はない。

 ただ……やっぱりいま当時の作品を振り返ると“古い”という印象がまず来てしまう。1989年の時代では“最先端”の技術で作られた作品だけど、今時代に見るとせいぜい「RPGツクール」で作られたような絵面。はっきりショボい。

 最近、当時携わった人達が一杯インタビューに出ていて、そこで初めて知る話も一杯あるわけだけど、あの時代はそもそも「CD-ROMにどうやってデータを入れるのかわからなかった」というところから出発していたそうだ。CD-ROMってカートリッジの何倍もデータが入るらしいけど、そもそもどうやってこの中にゲームのデータを入れるの? ……その研究も同時並行でゲーム制作を進めていたとか。

 最初の『天外魔境』……気にはなっていたけど……戦闘のたびにローディング画面が入っていたんだ。正直なところ、「かったるいゲームだな」って思ってた。
 第1作目はその当時すでに世界的名声を得ていた坂本龍一が楽曲を提供している、という話だったけど、実際にはたったの3曲だけ。タイトル画面と、途中に入る挿入曲的な場面と、エンディング曲の3曲。間に入る曲というのは、主人公ジライヤの横顔がただ映され、その背景に曲が流れるというだけの場面。初めて見たときは「何だこりゃ?」とだいぶがっかりした。音楽は素晴らしかったけれども。
 オープニングタイトルが終わった後、デモムービーが始まる。そこで様々なシーンが描かれるのだが……いずれも本編中では一切登場しない。ホテイ丸と語り合うシーンや、宿敵に「お前……生きていたのか!」とやり合うシーンとか……本編中に一切登場しない。これはおそらく、こういうシーンを描きたかった……けれどもできませんでした、というシーンの数々だろう。初めてのCD-ROMゲームで夢一杯描いていたけれども、実現しなかったものがたくさんあったようだ。
 それでもラストまでしっかりやったのは、やっぱり世界観の大きさ。これに引っ張り込まれた。キャラクターの良さもある。あそこまで数多くのキャラクターが次から次へと登場してくるゲームは、あの時代は『天外魔境』くらいしかなかった。
 第1作目『天外魔境』は荒削りも荒削り。荒々すぎて粗も見える作品だった。当時は「CD-ROMでゲームができる!」「音楽は坂本龍一!」といった話題性の強さがあったけど、実際ははっきりショボいゲームだった。『ドラクエ』や『ファイナルファンタジー』のほうが圧倒的に面白かったし、完成度も高かった。

 続く『天外魔境2』は紛れもなく名作。名作中の名作。あれが名作ではなかったらなんだというレベルの名作。同時代のゲームがかすんで見えてしまったくらいの優れた完成度を持っていた名作。
 1作目で気になっていたところ、引っ掛かりをきっちりフォローし、さらに丁寧に磨かれ、世界観はもっと広大に、ドラマはもっと奥深くなった。久石譲の音楽も素晴らしかった。
 PCエンジンはこのあたりからこのゲーム機特有の完成度を極めつつあり、続く『イース4』であるとか、ハードとして円熟期を迎えようとしていた。
 ドット絵+生音源+アニメ的表現の組み合わせは非常に完成されていて、その後まもなくポリゴンの時代が来るのだけど、私は正直なところ、初代プレステ時代のポリゴンはあまりにも荒々しく、PCエンジン時代の表現のほうが優れていると思っていた。
 と、話題が逸れたが、とにかくも『天外魔境2』はPCエンジン後期を代表する一本。

 完結作『天外魔境3』は……はっきり良くなかった。ムービーシーンは3Dで制作されたが、この3Dがそもそも出来が悪い。正直なところ、キャラクター絵が気持ち悪かった。どうして馴染みある2Dで表現してくれなかったのだろう、と当時思った。
 ゲームとしての出来も悪く、なんと町の民家に入っただけでローディング画面が挟まる。まるでPCエンジン初期のゲームに戻ったかのようだった。
 ゲームとして面白ければ良かったのだが、その内容が平凡も平凡。ただのどこにもである2流RPG。シナリオもいまいちピンとこない、最後までうすらぼんやりした感じで、ドラマの奥行きが感じられない。感動などあるはずがない。
 『天外魔境』シリーズと言えば音楽だったが、こちらも良くない。シリーズを彩る愉快なキャラクターたちも3作目においては勢いに欠ける。
 要するに何もかもがダメダメだった、第3作目。私は『天外魔境』シリーズがものすごく好きだったから、それだけにこの完成度の低さ、華のなさにはがっかりした。これがあの名作の完結作なんて……認めたくなかった。

 『天外魔境』シリーズについて振り返ってみたが、よくよく考えてみると、良かったのは2作目だけ。その2作目も今時代に振り返ってみると、はっきり精細を欠く。あの時代では最先端だったが、今ではRPGツクールで同じものが作れてしまう。もはや古びてしまっている。
 それに完結作である3作目……あれは嘘だと言ってくれというレベルの代物。『天外魔境』伝説の汚点のような駄作。あれが“完結編”として作られたという悪夢。
 あともう一つ、名作『天外魔境2』だが……実はたいして売れてないんだ。といっても検索してみても正確に何本売れたか数字が出てこないのだが。当時ファミ通の売り上げを見ていたが「あれ? これだけ?」というくらいしか売れてなかった。その記憶だけがある。
 これはそもそもPCエンジンスーパーCDROM2(あるいはDuo)がさほど台数が出ていなかったから。話題性はあったはあったが、多くの人がそもそもゲーム機を持っていないという理由でスルーしていったんじゃないかと思われる。
 『天外魔境』シリーズ全体を見ても実はたいして売れていない。話題性だけが宙に浮かんでいるような状態だ。ある程度の知名度、というか“伝説”はあるが、実は普遍性を持っていない(素通りしてしまった人があまりにも多い)のが『天外魔境』だったりする。
 でもだからといって封印するのも惜しいシリーズ。とにかくも世界観、キャラクターが秀逸。ここだけは今時代に持ってきても充分に戦えるところ。日本の歴史、文化を再構築して練り上げた独自性はそうそう打ち破られるものではない。
 この世界観、キャラクターを大事にして、もう一回シリーズを最初から練り直してリブートかければ、とんでもない傑作が生まれるんじゃないか――そんな想像をよくしている。

 『天外魔境』シリーズをもしもリブートするとして問題になるのがその壮大さ。『天外魔境2』を遊んだ人間なら知っていることだが、『天外魔境2』は今でもそうそうないレベルのマップ数。フィールドの広大さはひょっとすると2DRPG史上最大かもしれないくらい広い。もちろんただ広いだけではなく、密度も濃い。ストーリーも長大だった。
 この広大な世界観を今時代のゲームに合わせて、抽象度を下げて、一つ一つを詳細に作り込んでいくとしたら……。『ファイナルファンタジー7:リメイク』のようにエピソードや世界観の密度を高めていったらどうなるのか。
 まず完成しない。誰も完成させられない。いくら予算つぎ込んでも完成させられない。制作が終わらないゲームになる。

 ここでハッと気付いたが、よくよく考えてみれば、いま『天外魔境』の権利持ってるのコナミじゃねーか! 絶望的だよ!
 今のコナミにまともなゲームを作る意欲もなければ、作る技術もない。『天外魔境』のような大きなゲームを動かす力……というか人材のないメーカーだ。コナミが権利持っている限り、『天外魔境』の復活は夢幻か……。
(『ボンバーマン』みたいなゲームもコナミ作ってないものね。あれは開発会社の制作)

 個人的な心象としても『天外魔境』をかつての作品として封印したままにして欲しくない。どこかで復活して欲しい。なにより1作目、3作目ももう一度きちんと作り直してほしい。
 しかし一方で、あれだけ巨大な世界観を再生させることは可能なのか……という疑念もある。最近のオープンワールドゲームでも太刀打ちできないような広大さ、長大さを持っているのが『天外魔境』だ。いったい誰なら、どんな機会があれば、またどれだけの予算と期間があればリブート可能なのか、見当も付かない。
 でも可能性があるなら見てみたい! なぜなら『天外魔境』が好きだから! そういう個人的な心象以外でも、『天外魔境』は今時代にこそ必要なんじゃないか、という気がしている。だって、最高に個性的な題材だぞ、あのゲームは!
 どこかの誰かが『天外魔境』を再生するという無謀に挑戦してはくれないだろうか。
(そういう挑戦者が現れたとき、コナミは邪魔をしないように!)


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