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ブログ:映画の話

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映画の感想文。
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2023年4月の記事一覧

映画感想 太陽の王子ホルス

 アニメ史上における“最初の”名作。 太陽の王子ホルス 制作が始まるまで 『太陽の王子ホルス』は日本アニメ史における黎明期時代の作品。当時の事情、制作が始まった経緯まで、大雑把に話しておこう。  もともとアニメーション制作を担当する「東映動画」は、東映内の「教育映画活動」と呼ばれる小さな部門であった。そこで短編アニメを制作し、当時は映画館のない地方も多かったことから、農村や漁村を巡る巡回上映などを実施していた。戦後はまだ映画は俗悪で「教育によろしくない」と考えられていた時期

映画感想 ユーリー・ノルシュテイン傑作選

 ロシアの名作アニメーション!  まずは偉大なるアニメーターであるユーリ・ノルシュテインという人物を見てみよう。  ユーリ・ノルシュテインは1941年、第2時世界大戦の最中に疎開先のペンザ州ゴロヴィンシチェンスキー地区アンドレエフカ村で生まれる。ユダヤ人家族の子である。1943年母親と兄とともにモスクワに戻り、マリナロシュチェ地区で子供時代を過ごす。  父親は教育を受けていない木材加工工場整備工であったが、高等数学を理解し、絶対音感と音楽的記憶力の持ち主だったと言われている

映画感想 エセルとアーネスト ふたりの物語

 “何でもないこと”が尊い。  高名な絵本作家であるレイモンド・ブリッグスがこの世を去ったのは2022年9月。彼が制作した『スノーマン』や『風が吹くとき』といった作品を知らない者の方が少ないだろう。その彼が自身の両親を主人公にした絵本『エセルとアーネスト』を出版したのが1998年のこと。第1次世界大戦後のなんでもない夫婦の幸せを描いたこの作品はイギリス国内でベストセラーとなり、英国ブックアワード最優秀イラストブックオブザイヤーを受賞することとなった。  そのベストセラー絵本

映画感想 シドニアの騎士 あいつむぐほし

 ウチクダケー!  シドニアの騎士――それは播種船《シドニア》を守る戦士のことである。  原作は弐瓶勉。月刊アフタヌーンにおいて2009年から2015年まで連載されていた作品である。2015年第39回講談社漫画賞・一般部門、2016年には第47回星雲賞コミック部門を受賞。  その作品がテレビアニメーションとして制作・発表されたのは2014年春。第2期が2015年春。アニメーション制作はポリゴン・ピクチャアズ。アメリカでは『スターウォーズ・クローン・ウォーズ』(2008年)『

映画感想 神々の山嶺

 フランスの名作アニメ映画誕生!  『神々の山嶺(いただき)』は夢枕獏による小説だ。1994年から1997年まで『小説すばる』にて連載し、1997年8月集英社より単行本が発売される。2000年谷口ジローによる漫画版の連載が始まり、この漫画版は2001年に第5回文化庁メディア芸術祭マンガ部門・優秀賞を受賞する。  2016年には『エヴェレスト 神々の山嶺』というタイトルで実写映画化。監督は平山秀幸、主演は岡田准一、阿部寛が演じた。  今回視聴したのはそのアニメ版。アニメ版のタ