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4月の短歌(十首)

 名も知らぬ あなたの紡ぐ 言の葉と 散りゆく花が ふいに重なる

 柔らかな 春の日差しを 浴びながら このままここで 眠りにつけたら  

 ドナドナの 歌が聞こえて 来るようで ちっとも慣れぬ 満員電車

 もったいない スマホでいいよと 言う君の 呆れた顔を こっそり写す

 大切に したいと思う 気持ちでも 毒になるのは 薬と同じか


 味がある そういうことに しておけば 世の中もっと 生きやすいのに

 くだらない 吐き捨てるよう 思うたび 固執するのは 自分と気づく


 
 ふくらみが 足りませんねと もう一杯 勘弁してくれ バリウム検査

 いらっしゃい そのひと声が 聞きたくて 遠くなっても また足運ぶ
 

 4月は変化の多い月ですね。桜が咲いたと思ったら、もうすっかり葉桜になっていました。もちろん、瑞々しい緑は、それはそれで美しいものです。

 変化の大切さ、というのもわかります。けれど、一度変わってしまえば、
失ってしまうものがあるというのも事実。例えば、強くなるということは、弱い自分との別れですが、強くなってしまえば、弱かった頃の繊細な感覚や優しさは、失われてしまうでしょう。

 三日会わざれば刮目して見よ。久々に会った人の変化を、頼もしいと思う反面、寂しいと感じてしまうことも少なくありません。ですが大切なのは、本人が「変わりたい」と願って、それを実現したこと。いつまでも、自分の知っている「あの子」でいてほしいなんて、きっとただのエゴだから。

 僕が知る 君の姿は 見えねども 去り行く人の 背を見届ける

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