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VRChatは気持ち悪い?

 ――皆さんは『VRChat(ぶいあーるちゃっと)』をご存知ですか?

 ……なんて書き出してみたけれど、この記事に興味を持ってくれるのは、たぶんVRChatの「住民(ユーザー)」。でもそうじゃないに皆さん向けて、まずは簡単な説明から。

 VRChatとは「アバターを介して、世界中の人と交流できるVRゲーム」。色んな人と話したり、絶景を巡ったり、音楽ライブや演劇を鑑賞したりと、ここには多くの可能性を秘めた「仮想現実空間」が広がっている。

 メタバースやVRSNSと呼ばれる「VRChat」だけど、Googleなんかの検索エンジンで調べると、よく出てくるワードがある。それがタイトルにも書いた『気持ち悪い』という言葉。キーワード予測とも呼ばれるこの機能。詳しくはないけど「その検索、よく見かけますよ」ってことなんだろうね。

 「気持ち悪い」っていうのは、とても強い言葉。はっきり言って悪口で。自分が言われたら当然、傷ついてしまう。だからもしそう感じたとしても、面と向かって相手に伝えることは少ないと思う。

 同じ理由でこの記事も、読んだ人の心を傷つけたり、楽しくない気持ちにさせるかもしれない。それでも、この「VRChat気持ち悪い問題」、ひいては「嫌悪感」というものについて、自分で考えて、言葉にしたい。もし興味があったらお付き合いください。




どこが気持ち悪いの?

 まず「どこが気持ち悪いのか」を考えてみる。ゲームをプレイしたことがあれば、心当たりがあるかもしれない。一方、VRChatを知らない人の目線で想像したとき、真っ先に思いつく気持ち悪さは「性的な違和感」だと思う。

 使用されるアバターの大部分は、かわいらしい女性の姿。そしてそこから男性の声が聞こえる。(中身は)男性同士が、女性の姿で仲良くしている。ここで生まれた独特な文化もあるから、それも含め「違和感を覚える」のは仕方ないかもしれない。

 それからVR全般に当てはまることだけど「部屋にこもって、ゴーグルをかぶって遊ぶなんて、健全じゃない」と考える人もいる。これは気持ち悪いというよりも、何をしてるかわからなくて「気味が悪い」って感じかな。

 あとは、ひとりのユーザー目線で感じる気持ち悪さも結構あって。Public(誰でも入れるワールド)で迷惑行為をする人や、相手の都合なんてお構いなしに追いかけ回して、特別な関係を迫る人。これはもう気持ち悪いというより「恐怖」でしかないよね。

 こんな風に、ひと言で「気持ち悪い」と言っても色んなパターンがある。違和感、気味の悪さ、恐怖。もしかしたら単に「VR酔い」で気持ち悪いというケースも、予測検索には含まれているかもしれない。


気持ち悪いってなに?

 じゃあ今度は「気持ち悪いとは何か」について考えてみたい。

 VRChatユーザーへ向けられる「気持ち悪い」の多くは、違和感とか気味の悪さだと思う。「普通じゃない」ものへの『嫌悪感』なんて言い方もできるかな。そしてこの嫌悪感には、違和感とは「別の感情」が込められている、と僕は思う。

 そう思う理由のひとつに、子どもの頃のエピソードがある。当時、小学生だった僕は、セーラームーンが好きだった。妹と一緒にテレビで観ていた。でも学校で女子とセーラームーンの話をしたら、他の男子から仲間はずれにされた。「アイツ、気持ちわりーな」って言われて。

 でもさ、セーラームーンを見てた男の子、いっぱいいたと思うんだよね。土曜の19時からセーラームーン、19時半から「SLAM  DUNK」だったから。宗教上の理由でもない限り、どっちも観るでしょ?それこそ「普通」なら。

 まぁ今みたいに「アニメは日本の文化」なんて風潮もなかったと思うし、作品も男の子向けと女の子向けとが、はっきり分かれていたと思う。だから「男のくせに、女向けのアニメ見て、女子と楽しくおしゃべりしやがって」と思われても仕方ない。だけどこうも思う。「羨ましかったのかな」って。

 これは極端な例かもしれない。でも、気持ち悪いに込められた感情には、こういう「羨望」が含まれることがあると思う。自分は我慢しているのに、暗黙のルールを守ってるのに。アイツは好きなようにやりがってみたいな。要は嫉妬だよね。

 いやいや、別に羨ましくないよって、思うかもしれない。だったら、別に興味もないはず。誰がどこで、何をしていようとも。わざわざ気持ち悪いと思ってしまうのはなぜか。それは、抑圧された欲求を解放できているから。相手が(自分とは違って)自由に楽しんでいるから、じゃないのかな。

 性別に関係なく「好きなものを好き」とか「かわいいものをかわいい」と言えるのは、素敵なことだと思う。男らしく、女らしくとかじゃなくてね。「仮想現実空間」には、そんな自由さ、解放感があって、僕はそこが好き。もっとも、自由が過ぎる分、苦労するときもあるんだけどね。


わかりあえないままで

 ここまで、気持ち悪いという感情の仕組みを見てきた。色んなパターンがあるし、裏に隠された感情もあるような気がするけれど。ひとつ言えるのは「相手を不快にさせている」ってこと。それが意図的かどうかは別にして。

 ただ、ひとは誰かを気持ちよくさせるために存在するわけじゃないから。あんまり気にする必要はないと思う。あなたがそうであるように、相手には相手の、感情や考え方、都合があるわけだからね(もちろん、公の場で迷惑行為をするのは許されないけど)

 気持ち悪いと思われちゃうのは仕方ない。だからと言って、どうにかして気持ち悪いと思われないようにする話でもないと思う。わかってくれないとなげいたり、わからせてやろうとしたりするのは違うから。そういうもの、他者を支配しようとする行為こそ、僕は「気持ち悪い」って思う。

 それを選ぶこともできますし、もし苦手だと感じるなら、距離を保っても構いません。そんな選択肢の多さが、本来の多様性だと思うのです。

「よくわからないけど、そういう人もいるんだね」
「それでも、うまくやっていけるようにしたいね」

 それぞれの価値観を持ったまま、距離を保っても、同じ社会で暮らせる。こういう「寛容さ」こそ、望ましい多様性だと思うのです。

メタバースで暮らす/#多様性を考える|とらお (note.com)


 「気持ち悪い」と感じるのはごく自然なこと。それこそ「気持ちいい」と感じるのと同じくらいに。冒頭で予測検索の話を書いたけど。あれも本当は変だよね。「VRChatって気持ち悪い」と思ったら、それで終わりじゃない。

 ひょっとしたら「自分は『気持ち悪い』と思われてるかも」って考えて、検索しているユーザーが多いだけかもしれない。そんなことを考えながら、記事にしてみたんだ。読んでくれたあなたが、自然体で過ごせますように。


撮影ワールド:Noname/ぷすけ_psk さん

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