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週刊映画語りvol3『バッド・ジーニアス』

 みなさん、カンニングしたことはありますか?
 褒められたことではないですが、千早は一度だけしたことがあります。ヴァーチャル小学校時代、塾の小テストで悩んでいた時、ふと隣の人の答えが目に。思わず今までのを消して書き直し。かえってきたテストを見てみれば、お隣さんのほうが間違っていて、元の自分の答えがあっていました。自分のことを信じるべきだな、カンニング割に合わない、と痛感したものです……カンニングの思い出はその一度っきり。

 さて、今日紹介するのは『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(Amazon PrimeやNetflix、UNEXTなどで配信中)カンニングを題材にした映画です。

 主人公のリンは成績優秀な天才少女。父親との貧しい二人暮らし。奨学生待遇で進学校の高校に転校しました。高校三年間でかかる通学代やランチ代、教科書代を即座に暗算できるほど数学が得意。
 彼女が仲良くなったのは、後ろの席のグレース。おせっかい焼きの甘え上手、お金持ちで勉強は大の苦手。グレースは学校でやる演劇に出たいのですが、校則によればそのためには次のテストで高い点を取らなければなりません。
 はじめは真っ当にグレースに勉強を教えていたリンでしたが、テスト当日、苦戦しているグレースを見て、リンはグレースにカンニングさせる作戦に出ます。それは消しゴムに自分の答えを書いて渡すというものでした。はたして、リンはバレないようにカンニング作戦を遂行できるのか。

 カンニングさせるリンたち、それを取り締まる学校や試験官たち両陣営の攻防が手に汗握る一作です。カンニングって多くの人には殺人とか強盗とかよりもずっと近くにある悪事で、その身近さゆえのわかる緊迫感が最高!
 カンニング計画を立てていく様は強盗映画のようだし、実行中は「どうなる」とか「あ、やばい!!」とか声上げそうになります。主人公がお金を得るためにカンニングビジネスに手を染めていく様、カンニング作戦が身の丈を超えて暴走していく様は、犯罪ものジャンルとしても魅力もたっぷり。

 映画舞台のタイは日本以上の学歴社会らしく、良い大学に入る=社会的成功みたいな図式があるそうです。貧しさから抜けるため、カンニングビジネスと学業に打ち込む主人公も、恵まれているけど勉強ができず家の格や社会的地位を守るために良い大学入学を宿命づけられている周囲の切実さも描かれていて、社会問題を扱った映画としても味付けがしっかりしていて素敵です。

 ぱっと見の派手さはないけど、その実エンタメとしても最高の傑作でした。皆で天才たちの行く末を見届けましょう!
 

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