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AIR JAM'98から25年。ハイスタのSET LISTの謎に迫る。

今から四半世紀も前のこと。

1998年8月22日に、現在の豊洲市場になってる場所にあった豊洲ベイサイドスクエアで開催されたのが、AIR JAM'98

AIR JAM'98とはHi-STANDARDが主催した野外ロックフェスで、普段はライブハウスを主戦場にしているアンダーグラウンドなバンド達が集い、3万人を動員した伝説的なイベントです。

豊洲ベイサイドスクエアは同年7月に開催されたFUJI ROCK FESTIVAL'98の会場にもなっており、AIR JAM'98はインディーズ主体のフェスでありながらも世界的なロックフェスと肩を並べたイベントだったわけです。

年中ひっきりなしにロックフェスが開催されてる現在とは違って、まだフェス自体が珍しかった黎明期期。様々なルールもかなりゆるかった時代。そんな時代のインディーズのフェスということもあり、ライブハウスのノリがそのまま3万人になった感じでした。

だからこそというべきか、豊洲ベイサイドスクエアに集ったパンクス達は誰もが受け身ではなく、むしろこのイベントを支えてやってるぐらいの勢いだったんですよね。逆に出演バンドのメンバーが場内を普通にうろついてたり、演者とオーディエンスがフラットに近い関係性のような雰囲気だったことが、伝説といわれるAIR JAM'98の特筆すべき点だったと思っていて。

といったあたりのことは昔のブログに書いてるのでこれぐらいにしておいて。

ハイスタのSET LISTに対して感じる違和感

で、今回取り上げたいのはこのAIR JAM'98の主催バンドであり大トリを務めたHi-STANDARDのSET LISTについて。

ある日ふと、AIR JAM'98でハイスタって何の曲演ってたんだっけ?って気になったんで、ネット検索してみたんです。

そしたらまず25年も前のことなんで、情報が全然ない。パッとすぐに出てこないのよ。

とりあえず色んなサイトをしばらく探してみて、ようやく某サイトにて『MY HEART FEELS SO FREE』から始まって『MAXIMUM OVERDRIVE』で終わる12曲のSET LISTを見つけることができた。

やっとあったわ〜!と思って、もっとちゃんと眺めてみると、…ん?って何か違和感。

…。

…。

…。

『CAN'T HELP FALLING IN LOVE』が
入ってないやんけ………。

AIR JAM'98のメモリー

『CAN'T HELP FALLING IN LOVE』といえば言わずと知れたElvis Presleyの名バラード。それをハイスタがカバーして、2000年の4月にマキシシングルでリリースした曲。

音源のリリースは2000年だけど、その2年前、AIR JAM'98で既に演奏してたんです。

さっき上でリンク貼った昔のブログにも書いてる通り、当時現場で聴いてむちゃくちゃ感動して、AIRJAM'98といえばコレってぐらいハッキリと記憶に残ってるのよ!他の曲は何演ったかとかは改めてSET LIST見てもほとんど覚えてないけど、コレだけはマジでハッキリと!

にもかかわらずネットでようやく見つけたSET LISTにはなぜか『CAN'T HELP FALLING IN LOVE』の曲名がない。歴史から抹消されてしまっている…。

ハイスタのSET LISTといえば、オフィシャルサイトにこれまでのLIVEスケジュールを全て残してくれていて、しかもざっと半分ぐらいのLIVEのSET LISTもアーカイブしてくれるんです。

※赤枠で「SET LIST」となっているところをポチッとしてください。

それを急いで確認してみると、残念ながらAIR JAM'98のSET LISTはアップされていない…。

ならばと手元にある当時の雑誌を4冊引っ張り出して、全て探してみたけど、写真や簡単な文章ばかりでやはりSET LISTはどこにも載ってない…。

パンク雑誌『DOLL』に至っては見開きページの写真のみ…。


AIR JAM'98のSET LISTって改めて調べてみるとちゃんとしたエビデンスが全然残ってないじゃんってことに気づく。これにはしばし茫然とさせられた。

え、マジでELVISなんて演ってなかったってこと…?

いやでもそんなはずはない。AIR JAM'98の翌日、(当時高2だったんで)部活の時に友人たちにその感動を熱弁してた記憶までちゃんとあるし、そこまで含めて俺にとってのAIR JAM'98の大切なメモリーなのよ…。

でも人間って記憶を自分の都合良いように無意識に書き換えちゃうじゃん。まさかその翌日のことまで丸ごと全部がただの妄想だったのか…?って疑心暗鬼が止まらなくなって、「俺、めっちゃホラ吹いてたかも…」ってすげー凹んだりなんかしちゃって。


でも、そこで諦めずにもうちょい色々探してると、ようやく個人ブログでAIRJAM'98に行かれてる方の記事が出てきて、なんとそこに『CAN'T HELP FALLING IN LOVE』について記載がありました!!!

夕暮れ空でおそらく初披露のCAN'T HELP FALLING IN LOVE、マジで泣けました。

『KOOL LIFE』より

※勝手に引用&リンク貼らせて頂きます。

よかったー!!!

とりあえず当時現場にいた3万人のうち少なくとも自分以外にもう1人、『CAN'T HELP FALLING IN LOVE』を演ってたと言ってる方がいた。超心強いっす。

そして更に、さっきのハイスタのオフィシャルサイトにあるLIVEスケジュールをもう一度よく見てみましょう。

AIR JAM'98の3日前。AIR JAM前哨戦的なLIVEである1998年8月19日@恵比寿MILKのSET LISTをご覧ください。

よく目を凝らして見て頂きたいんですが、12曲目に薄めの鉛筆書きで、しかし紛れもなく

『FALL IN LOVE』

って書かれてるでしょう!!!

つまりこの時期のハイスタのLIVEでは既に『CAN'T HELP FALLING IN LOVE』がレパートリーに組み込まれてるんですよ。 

だとすると、ここから3日後のAIR JAM'98の舞台でこの曲を演奏するのは全然おかしくないどころか、むしろ自然な流れでしょう。そうだよね。そうに決まってるじゃん。もう絶対にそうじゃん。


ということで以上の2つの要素を踏まえて、結論。

・AIR JAM'98でハイスタは『CAN'T HELP FALLING IN LOVE』を演っていた可能性がかなり高い。

・何曲目にやっていたかは、もはや知らん(多分中盤あたり)。

LIVEとは情緒的な体験

でね、このことで思うのは、LIVEに関してはSET LISTのような情報って後から振り返る際の補完には便利だけれども、当然ながらそこに載ってる情報だけが全てではないということ。鵜呑みにしちゃいかんぞと。

LIVEとは情報や理屈じゃなくて、情緒的で感覚的な体験なんです。

日本が誇るロックンロールの神様・マーシーこと真島昌利もこのように言っています。

僕にとってのロックンロールっていうのはさ、情緒的で感覚的な体験なんだ、常に。だからそこで理屈が入り込む余地がなく、まずドーンッとくるっていう、そういうものが好きなのね。
(中略)
だから理屈もいいけど、やっぱり理屈じゃない部分っていうところが、僕は大事だったりするんじゃないかなと思うんだ。

『ロッキンオン・2003年1月号』より

究極、仮にAIR JAM'98で『CAN'T HELP FALLING IN LOVE』を本当に演ってはいなかったとしても、自分の中に『CAN'T HELP FALLING IN LOVE』が鳴ってたという知覚があるなら、それもひとつの個人的なかけがえのない記憶でありLIVE体験でしょうよ!!!(もしそうならかなりヤバめの情緒不安定さではあると思うけど…)


というわけで、たとえちゃんとしたエビデンスが残ってなくても、情緒的かつ感覚的にドーンと喰らったAIR JAM'98の体験は、決して書き換えられることはありません!

尚、さっき上で出した昔のブログのAIR JAM'98の記事で、ハイスタのオープニングを描写した文章をもう一度ご覧ください。こんなこと書いてます。

ケンくんが「E.YAZAWA」パロディのハイスタタオルを掲げてステージ上に現れる。ピンクパンサーの人形をマイクスタンドにぶら下げてから

ここの太字の部分ね。

今回久しぶりにYouTubeなんかでAIRJAM'98の映像見てみたら、マイクスタンドにピンクパンサーの人形なんて全然ぶら下がってないんですけど…汗

え…。
妄想はそっちだったんかーい!?
やっぱホラ吹いてたw

※ケンくんがピンクパンサー人形をスタンドにかけたのは『PINK PANTHER THEME』やる直前だったかも…汗

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