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くそ昭和っ子ごみかす40代の僕ですが、ヤバイTシャツ屋さんをここらでちゃんと推しときたい

ヤバイTシャツ屋さん(通称ヤバT)は、今年2023年に通算5枚目のアルバムをリリースし、結成10周年ということでベストアルバムもリリース。ありぼぼがめでたく入籍もして色々と活動の節目感がハンパなかった年でした。

ヤバTっていまやどのロックフェスにも欠かせない存在だし、メディア上でもいろいろなタイアップ等でよく見かけるから知名度も抜群だとは思うけど、節目のタイミングだし折角だからクソ昭和っ子ごみかす40代から見たこのバンドの凄さをちゃんと推しておこうと思った次第なんですよね。

メロコア界の革命児

ヤバTとは大阪を拠点に活動する、こやまたくや・ありぼぼ・もりもりもとによる3人組ガールズテクノポップユニットでして、躍動感溢れるパフォーマンスとストーリー性のある歌詞で50代女性をターゲットに活動しています。

(いやだって公式HPにそう書いてあるしw)

で、いきなり大袈裟なこと言っちゃうと、ヤバTってメロコア界の革命児だと思ってまして。

サウンド面はいわゆる2ビートの疾走感ある曲がメインで、泣きのメロディ炸裂しまくってて、男女ボーカルのハモリが最高な、ザ・メロコアなやつ。

そこまでだと似たようなのは他にも沢山あるんだけど、ヤバTがヤバイのは、彼らが歌う歌詞の圧倒的なゆるさとその言語感覚。

メロコアってだいたい英語で歌われるか、真摯で熱いストレートな日本語で歌われるかのどっちかなんです。

ヤバTは基本日本語なんだけど、家帰りたいとか、ネコ飼いたいとか、ノリで入籍してみたらええやんとか、ざつにどうぶつをしょうかいしたりとか、肩幅が広い人は肩幅が狭い人よりも説得力が増すとか、普段暮らしてて感じる等身大の視点をそのまんま歌っちゃう。

その脱力したユーモアやシュールな言語感覚がたまらんのと、しょーもないことひたすら歌ってるようで、たまにめちゃくちゃ哲学的じゃね?っていう普遍的な領域に到達するような深みもあったりして気が抜けない。

音だけ聴いてたらとんでもない名曲なのに歌はしょーもないっていう、バンバン名曲をムダ使いしていくスタイル(ちなみに褒めてます)がメロコアバンドにあまりなかった新鮮な感覚なんです。

名曲のムダ使いでいえば、FUNKサウンドに歴史ネタ縛りの歌詞を歌うレキシによく似てます。

もっと言うと日本のポップス・歌謡界に『勝手にシンドバット』でコミックバンドばりのリズミカルかつユーモアに富んだ言語感覚を持ち込んで革命起こしたサザンオールスターズばりの偉業じゃないかと。

ちなみに毎回アルバムタイトルをTank-Top縛りにしてて、アートワークも同じフォーマットで毎回統一するスタイルもやっぱりレキシとよく似てます。

ヤバTはこういうレジェンドクラスのバンド・アーティストと同様、メロコアに今までなかった脱力歌詞を融合して新たな魅力を生み出し、革命を起こすことに成功してるんですよ。

メロコアバンドを背負って立つ

でね、何気にここまで「メロコア」というワードをあえてバンバン使ってきてるんだけど、この「メロコア」って実はわりと取り扱い注意なセンシティブなワードなんです。特にメロコア界隈の中心に近い人たちほどその言葉に対する拒絶反応が凄い。

だって日本のメロコアのパイオニア、Hi-STANDARD横山健が「嫌い」ってハッキリ言っちゃってる。

- 一時期、バカにする意味で「メロコア」って言葉が、使われてました。
横山:いや、俺は今でもそう思ってるよ。メロコアのメロはメロディックのメロじゃなくて、メロドラマのメロだから(笑)。俺らが「Hi-STANDARD」を始めた時には、なかった言葉だから。「Ken Band」も含め、自分たちの音楽をメロコアだなんて思ったこともないし。今でも(メロコアという言葉は)、嫌いだね。

「メロコア」とは「メロディックハードコア」を略した言葉でして。
80年代後半にアメリカでBAD RELIGIONNOFX、イギリスではSNUFFなんかがやり始めたグッドメロディでファスト&ショートなパンクサウンドが発端となり、90年代に入るとGREEN DAYOFF SPRING、日本ではHi-STANDARDを筆頭に世界中でこのスタイルのムーブメントが広がっていった。こうしたサウンドスタイルやバンドを称して「メロコア」という言葉が使われ定着してきた。

が、この「メロコア」という言葉は、言葉の響きからしてもう薄っぺらい。「はいはいメロコアでしょ」みたいにバカにする意味で蔑称として使われることもよくあったりしたわけです(ちなみに「青春パンク」や「ヴィジュアル系」っていう言葉にも近いものがあるのかなと思ってるけどそれはまぁいいや)。似たような音楽性の中にも各バンドのオリジナリティがあるのに、それをキャッチーな省略ワードで括ってレッテル貼るんじゃねぇ、という健くんの立場もすんごいわかる。

でも健くんが言ってる通り、これは受け取り方やとらえ方次第だと思っていて。メロコアバンドのサウンドに感動させられた受け手側は別に「メロコア」という言葉に感動してるわけじゃなく、サウンドに感動してるわけじゃん。

その純粋な感動を他の誰かに伝えようとする時に、より広く伝わる「メロコア」というワードを使うのは全然アリなんじゃないのかな。要するに使う側が蔑称の意味ではなく、純粋に愛着こめて使うならいいじゃんと。

で、だいぶ遠回りしたけど、ヤバTはこの「メロコア」というワードをあえて使って、メロコアを背負って立つ決意表明をメタ的に楽曲そのもので打ち出してるのがヤバイ。

『メロコアバンドのアルバムの3曲目ぐらいによく収録されている感じの曲』。これタイトルからしてもうメロコアバンドを揶揄してね?って思うじゃん。歌詞でも「ライブで観客を座らせて飛ばしがち」「PVは大体魚眼レンズで撮影されていてバンドの後ろをスケーターが通りがち」とかメロコアバンドってこんな感じでしょ?って茶化してるようにも聴こえちゃう。

でもこれむしろ逆で、メロコアのナメられがちな要素をあえて戯画化したうえで、そこまでひっくるめて自ら引き受けて「We are メロコアバンド」って純粋な決意表明を叩きつけてくる。

おそらく「メロコア」というワードのセンシティブ性もわかったうえで、あえてよくわからんってフリしてタブーなところに突っ込んで引っ掻き回したうえで全部引き受けて背負って立つ。これってすんごいPUNKやん。

それからもう一曲。 

『dabscription』。これ、最初めっちゃオシャレなシティポップなサウンドなのね。歌い方もよそ行きな雰囲気ですましてて、ここだけ聴いたら「え、Suchmos?」「Awesome City Club?」ってなる。が、後半もう我慢できん!って感じで怒涛の2ビートでいつもの調子に戻っちゃうという構成になってる。

これしか出来へんねん 背伸びしてみても
ぼろが出る 挙句にモノマネ
好みの分かれる音で we fight
迎合で芸事は good going 死す

BGMになれないの
BGMになりたくないの

耳触りのよいBGMのような普段の生活や環境に溶け込むようなサウンドじゃなくて、むしろ耳に引っ掛かりを残すようなサウンドを掻き鳴らすことしかできないし、むしろをそれをやっていきたいんだと。ずっとメロコアを鳴らし続けるというアティテュードを曲そのもので表現してるという。これって素敵やん。泣けるやん。

メロコアバンドのお約束、カバーもうまい

メロコアバンドのお約束といえばカバーなんです。一流のメロコアバンドは誰が言ったか知らんが伝統的にカバーがうまい。

音源化されてるヤバTのカバー曲は10-FEETサンボマスターROTTEN  GRAFFTYのカバー。これにキッズソングとか。

あとライブだけで演奏されてて音源化されてない曲もあります。『香水』とか『うっせぇわ』とか。

自分が観たマキシマムザホルモンのツアーでヤバTが対バンで出た時のLIVEでは、ホルモンの『ニトロBB戦争』のカバーやってました。どちらかといったらホルモンよりもむしろヤバTの持ち曲なんじゃないかぐらいめちゃくちゃハマってましたよ。

ざつに楽曲しょうかい

今回ベスト盤が出たので、あえてベスト盤から漏れた楽曲を補完するべく、好きなやつをいくつかピックアップ!

L・O・V・E タオル

ベイシティローラーズ『SATURDAY NIGHT』風でもあり、ラモーンズ『THE KKK TOOK MY BABE AWAY』風でもあるという、メロコアサウンドでありながらオールドパンク・ロックの要素がふんだんに感じられて超楽しい。シンセサイザーとホーンが入ってくる間奏も素敵。コレありぼぼ曲なんだけど、ありぼぼ曲は他にも『秋』とか、ほんのちょっとだけ捻った独特の感触あって癖になるわー。

ネコ飼いたい

基本ネコ飼いたいしか言ってないシンプルな歌詞なんだけど、聴いてもらえれば分かる通り、前半のこやまパートは完全にGARLIC BOYS(もしくはももクロ)『あんた飛ばしすぎ』!一転ありぼぼパートはミドルテンポでしっとりと。後半段々こやまがエモーショナルになってって、クライマックスはみんなで大合唱!最後ちょっと『Don't Look Back Anger』(Oasis)意識してる風の歌い方になるの腹立つ(褒めてますw)。アンダーグランドなパンク・ハードコアの名曲(ももクロがカバーしたから知られてる?)から普遍的なロックアンセムまでの振り幅が「ネコ飼いたい」のひと言にギュッと詰められてる奇跡の一曲。

君はクプアス

冒頭の歌い出し「君はとっても綺麗だね クプアスみたいだね」を聴いた時、こ…これは…ブルーハーツ『リンダリンダ』で「ドブネズミみたいに美しくなりたい」と歌って以来の、価値の反転を説く名曲なのでは…!?と一瞬だけ思う。

が、それに対して「クプアスってなに?」って当然ながら戸惑うありぼぼ。一方的に「クプアスみたいに優しく大切にしたい」と歌い続けるこやま。しまいには「なんでこれに例えたの?」「感性疑うわ」って、ありぼぼと共通理解が得られるどころかむしろ絶望的に乖離していく…。このコミュニケーションが成立してないかけ合いが違う意味で震撼させられる名曲。ミドルテンポの裏打ちリズムで、後半ハープなんかも入ってくるいい感じにレイドバックな雰囲気がよりこやまのサイコパス感に拍車をかけてくる。

くそ現代っ子ごみかす20代

いや普通にさ、サビの泣きメロと、こやまとありぼぼの声のアンサンブルが最上級に素敵な曲じゃない?今年ハイスタの『I'M A RAT』の次に聴きまくってる珠玉のメロコア曲なんだけど。あとさっきの「メロコア」もだし、「ゆとり」やこの曲の「20代」といった、ナメられがちなワードや要素を取り出して、自分たちからあえて茶化しつつも、同じ属性のリスナーをほんのり勇気づけたりエールを送ったりする。こーいうとこ好きだわー。

職務質問〜一日に2回も〜

サビのメロディがどことなくAA=を思わせる気がしなくもない。そこはかとない上田剛士み(と白川貴善み)。更にギャーギャー言ってるカン高いデスヴォイスのとこはホルモンのダイスケはんみ。結果、なぜか上田剛士とタカとダイスケはんが職務質問されてるような気がしてくるカオスなラウドミュージック界のオールスターソング。

寿命で死ぬまで

これは茶化し一切なしのどストレートな一曲。

今年2023年は青春時代を彩ってくれた大好きなミュージシャンが何人も旅立ってしまい、人生の有限性を強烈に痛感させられた年だったので、最後にこちらをチョイス。


というわけで信頼のメロコアバンド、ヤバイTシャツ屋さんを寿命で死ぬまでまだまたこれからも推していきまっせ!

↓何気にもりもとがずっと一貫してMOB STYLESコスチュームなのも信頼できる!

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