小学生の頃のトラウマと成長
俺は本当によく先生に怒られていた
鉛筆を持たせれば鉛筆で遊んでしまい、休憩に入れば帰ってこない
女子を泣かせたり友達とケンカしたり、学校の物を壊したり
暴虐の限りを尽くし帰りの会の「1日の反省」コーナーでは毎日のようにみんなの前で謝罪をさせられていた
けど毎日の学校生活は楽しく、周りからどう思われているのかとかは少しも気にならなかった
しかし毎日ただ何も考えずに暮らしている訳ではなく、自分なりに最低限のモラルはあった気がする
これは小学校四年生の頃の話
転校してきた同級生がいた
数ヶ月ほどで次の転校先が決まってしまった
親の仕事の事情で転校が多いらしい
短い期間ではあったが昼休憩は一緒に虫を捕まえて遊んだり、休みの日は自転車に乗って町内を一緒にウロウロしたりとそれなりに仲良くしていた
転校の話を聞いた時、寂しいと思ったし俺なりに「気の毒だな」と思う気持ちもあった
そんな転校生のためにクラスのみんなでお別れの歌を歌うことが決まった
放課後や昼休憩に集まって練習することになったのだが、遊ぶ時間が潰れても全く嫌な気はしなかった
誰よりも大きな声で歌の練習をした
そして転校前日の帰りの会、転校する友達がみんなの前に立ち短い挨拶をした
挨拶が終わるタイミングで先生が曲を流し、みんなでお別れの歌の合唱を始めた
転校する友達には事前に知らせておらず最初は驚いた顔をしていたがすぐ笑顔になり、照れくさそうにモジモジ動いていた
そのリアクションに満足しつつ俺は練習の時よりも大きな声で歌を歌った
列の後ろの方だったが、俺の声が聞こえるかなとか思いながら歌った
すると隣から何か違和感を感じた
違和感の正体はすぐにわかった
隣の奴が歌詞の「さよなら〇〇くん」の〇〇の部分を俺の名前に変えて歌っていたのだ
俺は咄嗟に隣の友達の口を塞いだ
転校する友達に聞かせちゃダメだと思った
隣の友達は俺の手をむしり取ってまで面白くない替え歌を歌い続けた
その時
「何をしているの!!」
先生の高い声が教室に響いた
先生は音楽を止め、ツカツカと歩み寄ってきた
隣の奴もクラスも静まり返り時が止まったようだった
先生は躊躇なく腕を振り上げ頬を叩いた
叩かれたのは俺だった
「なんでそんなことするの!!」
訳もわからず何かを言いかける俺の言葉を遮るように
「友達を笑顔で送りたいと思わないの?」
いや、俺は精一杯送りたかった
歌だって一生懸命練習した
チラっと転校する友達の顔を見ると、何が起こったか分からないのか笑顔は消えていた
先生の顔を見ると目には涙をいっぱいに溜めていた
その顔を見ると俺はパッと下を向いてしまった
「謝りなさい」
と先生が言った時、隣の奴が俺と先生を交互に見ながら慌てている様子が目の隅に入った
「すみませーんでーしたーーー」
俺がヤケクソみたいに謝ると先生に教室を出るように言われた
元々そこにいる気がなかった俺はランドセルをロッカーからひったくるように取ると、廊下を走った
帰り道、転校する友達のことで頭がいっぱいだった
アニメのワンシーンみたいに「元気でな」と呟いたらポロポロ涙が出てきて公園で時間を潰してから帰った
心のどこかで普段の行いが悪かったのかもと思っている自分がいた
理不尽な気もしたが、全ての行動は最後自分に回ってくるのかもなと考える少し大きくなった1日だった
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