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布施明「とまり木」 男はつらいよ第23作翔んでる寅次郎の劇中歌

この曲を紹介すること自体が、映画のネタバレになるかもしれません。ですが、まあ、それを知って映画を見たとしても問題ないと勝手に判断し、書いていきます。
これで興味を持って、映画を見ていただけることを優先したい。

映画「男はつらいよ 翔んでる寅次郎」は1979(昭和54)年8月の公開作品。この作品の主人公は、寅さんを差しおいて、入江ひとみ(桃井かおり)と小柳邦男(布施明)の2人だろう。資産家同士の政略結婚的なものに、心からは納得ができない女性のマリッジブルーを描いています。布施演じる小柳も裕福な家庭に育ちながらも、純粋な心を持った青年を演じ、好感の持てる2人です。
一度は豪華な結婚式をウエディングドレス姿のまま、逃げ出す桃井ですが、やがて小柳の実直な人柄、不器用さみたいなものに魅了され、2人は再び結婚することになります。

2度目の結婚式は、1度目の豪華絢爛なものとは全く違う、妹さくらと博が結婚式を挙げたような会館の宴会場みたいなところで執り行われます。

結婚式も宴たけなわ。最後の新郎あいさつ。
ここで、小柳は「あのー、僕、歌が下手、いや話が下手なもんですからあいさつの代わり員歌を歌いたいと思います」と言い、ギターを持ってこの「とまり木」を歌い始めるのです。
ネットで調べたところ、「とまり木」は下村明彦さんという方の作詞・作曲ですね。失礼ながら、知りませんでした。
さらには、倍賞美津子さん(さくら役)もこの「とまり木」を歌っているようですが、映画で披露された部分の歌詞は微妙に異なっています。

「壊れそうな 優しさを 僕は抱きしめ
君の前ではいつでも 陽気でいたい
きらびやかなものに 惑わされないで
どうか僕のとこへ やってきておくれ」

アコギ1本で静かに歌い始める布施明さん。歌詞は、映画の内容に合わせて、原曲とは少し違っていますが、こちらの方がこのシーンにはぴったりです。
ただ、朴訥な青年は、次のフレーズにて、歌手・布施明となってしまいます。

「君は君のために 翼を広げて 信じるものに向かい 飛び立つんだ
僕にできることは 何もないけど
とまり木ぐらいにはなれるだろう」

ハイトーンボイスが会場を席巻します。
「飛び立つんだああああ」「なれるだろうおおおおお」のビブラート、ロングトーンなんて、常人では絶対に真似できません。
山田監督はこのシーンを想定して、布施さんをキャスティングしたのでしょうか。存分に活用しているところに感服させられます。
ただ、ここまで歌がうまいと、ちょっと引いちゃいますが・・・。

「いつまでもいつまでも 変わることのない
大切な何かを見つけてほしい
いつまでもいつまでも 大切な何かを・・・」

布施さん、涙ぐみながら歌うのをやめてしまう。
このへんで、歌手布施明から、俳優布施明に戻って演技へと。

23作翔んでる寅次郎は、桃井かおりさんがマドンナだが、これまでのマドンナとは少し雰囲気が違っている。正直言えば、寅が恋するようなタイプではない。実際、映画では恋をしていたような設定、セリフ、シーンもあるのですが、ちょっと違和感がある。

この作品の主役は、やはりこの布施さんが歌うシーンですね。
一見、一聴の価値あり。

2022年10月14日 トラジロウ

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