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僕らはきっと誰もが愚かなんだ。でもそれに気付いて変わっていける。生きていれば。

どうもお久しぶりです。とらぎつねです。
今回は漫画レビューに挑戦です!
なかなかの良作に出会いました、そのタイトルは…

「なれの果ての僕ら」

と言います。

この漫画、マガポケというマンガアプリで発見しまして。
もうほんと、面白くてどんどん続き読みたくなってしまい…!
単行本も出ているようで、完結済みの作品です。全8巻。
長すぎず、いい巻数でまとまっています。

<あらすじ>

とある小学校の旧校舎にて立てこもり事件が発生する。
校舎の中にいたのは、その小学校に通っていた同級生の高校生たちと当時の担任。
中では同窓会が開催されていた…はずだった。
しかし実際はその同窓会の主催者である夢崎みきお(16)が、集まった27人を監禁。
約52時間後に機動隊が突入したことで解決するも、その間12人が死亡した。
「極限状態での善性」を問う実験により、多くの犠牲者を出したこの事件。
疑惑、欲望、暴露、復讐、そして裏切り。
道徳を糾弾する、倫理崩壊サスペンス!

<この作品の魅力について>

一見すると、バトルロワイヤル系のデスゲーム作品だろうという印象ではないでしょうか。
ゲームに失敗したものたちが、残虐な死に方をして次々と人数を減らしていく…。
その予想は、外れてはいません。
ただし同じような作品でも「飽きさせない見せ方」については、格段に進化しています。
もしマガポケで読むなりお試しで読むなりで、第1話を読めるのであれば是非読んでください!
冒頭でいきなり事件解決の記事から始まるんです。
首謀者の夢崎みきおによって同窓会として集められた者たちが監禁されたこと。
初日に何名がどういう死に方をしたか。
2日目には何名がどういう死に方をしたか。
そして、首謀者の夢崎みきおも死亡したにも関わらず、争いが続いたこと。
これらのことが第1話の冒頭で明らかにされます。
このモノローグがあって、ようやく同窓会が始まるんですね。

そして読み進めていくうちにきっと気づくと思います。
このマンガ、気になるところで終わらせるのうますぎ…!!ということに(笑)
な、なんだって…!?
まさか…お前だったのか!?
というような事実が明かされた、または明かされる直前で次号に続きます(笑)
続きが!読みたい!!(゚Д゚)クワッ!
ってなる構成力…!
これは担当編集者の力なのか漫画家さんの力なのか。
とにかく話の構成の妙が光ります。

構成という視点でいくと、実はこの話、事件解決後の登場人物が過去の話としてこの事件について語るという場面も挿入されています。
「その時は思いもしませんでした…。まさか、あの人がここで死んでしまうなんて…。」とか、気になる話し方するんですよこれが(笑)
読者にとっては、この場面を読むだけで「最後まで生き残る人」が誰かわかる、いわゆるネタバレになってしまう構成の仕方です。
しかしこの手法でもまた驚く展開が用意されています。
ほんと、仕掛けるの上手い…!!

<メッセージ性>

この作品、実はメッセージ性もかなり強いものだと感じています。
それは言語性と非言語性で表現されていて、例えば首謀者のみきおは
「何か凶悪な事件が起こると頭の悪いマスコミや世間は何かに原因を求めたがる。ゲームをしていたから悪い、アニメを見ていたから悪い、引きこもりだから悪い…。しかしそんなものには何の意味もない。何か、自分とは違うものが原因だったと決めつけて安心したいだけなんだ。」
などと講釈します。
これは言語性のメッセージで、作品中に何度か出てきます。

そして非言語性のメッセージ。
これは極限状態における各登場人物たちの行動そのもので表現されています。
この場面でこういう行動に出た人を、自分はどう思うだろうか。
自分だったら、この時にどうするだろうか…。
そしてもしこんな事件が起きた時、自分が部外者だったらどう見るだろうか。
そんなところまで考えさせられます。

<自分の思った疑問点など>

非常に面白い作品ではありましたが、驚愕の展開に持っていくためなのか、振り返ってみるとちょっと行動がおかしいような感じのする人も出てきました。
この人、こういうこと考えてたんだったら、この場面でこういう行動に出るの不自然では…?的な。
そういうことろが気になる人は読み返すでしょうし、それを狙っているのかもしれませんが。(そうだったら見事に思惑通りに動かされてる…!)

また、首謀者のみきおは「人の善性を試したい」と言っているのですが、この「善性」とは何か、定義がされていません。
彼の頭の中にはあったのでしょうか。
はたまたこれも読者に委ねて「善性とは何か」考えさせる意図があったのでしょうか。
そもそも善悪などは時代や権力者によって決められるため、明確な定義は存在しないという考え方もあるでしょう。
そうなるとこの実験は、何を証明するためのものだったんでしょうね…。

<おわりに>

もしこのマンガを読んでいないという人でここまで読んでくれた方(いるのかそんな人(^^;))には、是非とも読んでもらいたいです!
ネタバレになってしまうのでコメント欄で意見を交わすのも言葉を選びながらになってしまいますが…。
読みましたよ!という方はネタバレしないでの感想、お待ちしてます!
なお、自分が一番好きな登場人物は、石井です。
カッコよくもあり、悲しくもあり、自分と闘い続けた姿は切なくも美しかったと思います。
そんな石井だからこそ、彼女は「この顔の傷は残っててもいい」と受け入れたのではないでしょうか。(読んだ人にだけ伝われ…!!)

以上、2021年に完結している作品「なれの果ての僕ら」について書き連ねてみました。全74話!中身濃厚の単行本8巻分!
この夏の思い出に是非どうぞ♪
それでは、また。

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