1945年から今日まで、10人の「在日朝鮮人作家」の作品と人生、その歴史背景を、文芸評論家の林浩治さんにミニ評伝で紹介していただきます。
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2022年8月の記事一覧
林浩治「在日朝鮮人作家列伝」03 金石範(キム・ソクポム)(その5)
→(その4)からつづく
金石範──「虚無と革命」の文学を生きる林浩治
6)『火山島』と金石範
『火山島』は1983年に3巻まで上梓され、翌年の大佛次郎賞に選ばれた。97年に全7巻が完結すると、毎日芸術賞も受賞した。
『火山島』は東アジアの戦後史に焦点をあて、歴史に翻弄される人間の孤独と情熱、愛と性、正義と欺瞞を描き日本語文学史上に屹立した孤高の大作である。
軍国主義の日本が敗戦し、植
林浩治「在日朝鮮人作家列伝」03 金石範(キム・ソクポム)(その6 最終回)
→(その5)からつづく
金石範──「虚無と革命」の文学を生きる
(その6 最終回)林浩治
7)42年ぶりの韓国
金石範は1988年11月に42年ぶりの韓国行を果たす。その後も韓国の政治情勢の変化に伴った困難と付き合いながら、十数回の韓国行を「朝鮮籍」(**注5)のまま敢行していた。
2008年に金石範は次のような発言をしている。
解放後一九四八年八月、四・三抗争のさなかに米軍占領下