見出し画像

「切り絵で世界旅」真冬のハイドパーク(ロンドン/イギリス)真冬の公園で女性が優雅に泳ぐ

 ロンドンで宿泊したホテル、コーラス・ハイドパークは、ジョージアン様式の立派な外観を持つが、部屋は驚くほど狭かった(価格のせいかもしれない)。だが最大の利点は、ロンドンの中心部にある巨大な公園、ハイドバークに隣接していることだった。ホテル前の横断歩道を渡れば公園だ。

 1月のロンドン。それも気温3~4度の朝だった。イギリスで唯一安心して食べられる朝食を済ませて、ハイドバーク内を散歩することにした。木々にはリスが走り回り、乗馬を楽しむ人もいた。そういえば、ローリング・ストーンズが行った伝説的なライブコンサートもここだった。

 公園内のロングウォーター湖に沿って歩くと、閉店中のレストランを見つけた。外壁に貼られたメニューを見るために近づいた時、背後から配偶者が素っ頓狂の声をあげた。「水着の女性がいるよ」。振り返って彼女が指さす方向をみると、確かに女性が湖に張り出された板の先端部分に立っていた。女性は帽子に手をやったり、腕を振ったりした後、板と水の間にある階段を降りて湖の中に身を沈め、そして白鳥やカモなど多くの鳥の間を悠然と平泳ぎで泳ぎ始めた。泳ぐと、扇を広げたように水紋が水面に広がった。
 彼女の姿が小さくなるまで呆然と見続けていた私たちは、はっと我に返り、冬のハイドバークを再び歩き始めた。すると、湖のそばにある小屋から5、6人の水着を着た男女が次々にあわられ、湖に飛び込んでいった。たぶん寒中水泳を楽しむサークル仲間なのだろう。寒さに弱い私には考えられないことだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?