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「切り絵で世界旅」ヘビ使い(ニューデリー/インド)ヘビ使いを生業とする漂白民が奏でる音色


 ニューデリーにあるガンジー廟をでたときのことだ。ヘビ(主にインドコブラ)使いのおっちゃんが笛を吹いており、コブラがくねくねと頭を揺らしながら競り上がっていた。この笛はプーンギーと呼ばれるもので、スコットランドの楽隊が吹くバグパイプの音色に似ていた。

 とっさに思い出したのは、東京コミックショウが「ヘェ〜イ、レッドスネェ〜ク。カモォ〜ン!!」と言いつつ笛を吹き、3つの壷からカラフルな蛇の縫いぐるみを登場させる三蛇調教だった。だが今回は本物だ。ヘビ使いを見たのはもちろん初めてであり、「さすが、インド!」と妙に感心した。実はコブラの動きは、笛の音に反応しているのではなく、蛇使いが足でカゴを叩く振動や目の前の笛の動きに反応しているそうだ。

 ご存知のように、インドには今は憲法で禁止されているが、社会習慣として根強く残っているカースト制がある。カースト制においては,人は生れによってカースト小集団(ジャーティ)に所属し,この地位は一生変わらない。ジャーティ集団は厳格な内婚制をとり,他集団との婚姻関係を認めない。だからヘビ使いのジャーティ集団に生まれたら、一生、ヘビ使いを生業とする漂白の大道芸人として生きねばならない。

 発祥のインドでは数十万人ものヘビ使いが存在していたが、2000年代後半からインド当局が野生生物保護法の適用を厳格化しコブラの捕獲が事実上不可能となった。警察による摘発も進んだため、2010年代に入るとインド国内からは急速に姿を消している。では現在、ヘビ使いはどうやって生計を立てているのだろか? あのおっちゃんに聞いてみたい。

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