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【翻訳部辞書:O】olive branch

こんにちは、フジタです。今年の4月に近所の園芸店でオリーブの鉢植えを買ってきてベランダに置いてみました。まだ色あせていない桜の花びらが鉢の中にひとつ落ちていました。

これから世話をすることになるので参考になるものを探してみると、意外にも1冊まるごとオリーブという書籍が何冊もあることがわかりました。そのうちの1冊『まるごと楽しむオリーブの本』(岡井路子 著)を購入し、それを見ながら水やり、剪定、追肥などオリーブとの付き合いが始まりました。

実は、オリーブのことが気になり始めたきっかけは去年の8月のことで、こんなニュース記事の見出しが目に留まりました。

Moon extends olive branch to Tokyo over wartime history

察しの良い方なら、この記事が何の話かだいたいおわかりでしょう。でも、そのへんがちょっと足りない私にはステキな詩の一節にしか見えませんでした。

月からオリーブの枝が東京まで伸びてきて戦争の記憶を癒やしてくれる

まさかね……。

記事を少し読んでみると、このMoonはお月様ではなく韓国大統領の文在寅(ムン・ジェイン)のこと。olive branchは「仲直り」に使うお決まりのフレーズですね。仲直りが簡単でないことは、ちょっと足りない私にだってわかります。

それはさておき、まったく現実的でないことをあえて現実的に考えてみることにしましょう。もし「ジャックと豆の木」みたいに月でオリーブの木が巨大化して、びよーんと枝を伸ばしてきたとしても、真夏の東京にやさしい木陰を作ってくれるなんてことはないでしょう。なにしろ、月も地球もすごい勢いで回っているのですから。4回転ジャンプを跳びながらクマのプーさんとキスしなさいと言っているようなものです。

ところが人間の想像力というのはよくできていて、月が手渡してくれるオリーブの枝をそっと受け取ることもできれば、頭に柚子を乗せたまま4回転ジャンプを跳ぶことだってできます。

もちろん現実は簡単ではありません。この記事からすでに1年ほどが経っていますが、日韓両国間の懸案事項に目立った進展はないように見えます。世の中の動きには少々疎いですが、少なくともトップニュースになるような進展はなかったと思います。

さて、私の小さなベランダに置いた鉢植えは、5月半ばくらいに地味な花を少し咲かせましたが、その後は目立った進展はありません。けれども、枝先の若々しい葉をよく観察していると、ただじっとしているだけではないことがわかります。

若い葉がヨレヨレになってぐったりしてきたときが水やりのタイミングのようなので、鉢に水をたっぷり注いであげます。すると若い葉たちはすっくと立ち上がり、一度咲いた花がつぼみに戻るかのように身を寄せ合います。また何日かするとだんだん元気がなくなってくるので、水やりのタイミングを見計らいます。

こんな風に毎日観察していると、近所を歩いていても、いままで見過ごしてきたオリーブたちに自然と気が付くようになります。毎朝散歩する遊歩道の近くに品の良い2階建て住宅があるのですが、その玄関に3メートルくらいのオリーブの木が寄り添っていることに初めて気が付きました。また、広い車道沿いにある居酒屋の前の植え込みにも低く剪定されたオリーブの木がありました。

商店街では、いつも行列ができる人気のパン屋さんと猫カフェの店先でオリーブを「発見」しました。オリーブの葉は細長くシュッとしているので、おしゃれな雰囲気を演出できるのかもしれません。ノアの方舟の物語に登場したり、国連の旗のデザインに使われていたりなど、由緒正しいイメージもありますね。

こうして脳内に「オリーブマップ」がだんだんできてくると、「いまごろあのオリーブはどうしているだろう」などとふと思ったりします。どうもしていないとは思いますが、Googleマップにはない「脳内マップ」ならではの機能です。

ささやかながら私の日常に変化がもたらされたわけですが、もとはといえば、1本のニュース記事の見出しがきっかけでした。もし韓国大統領の名前が違っていたら……こんなことはなかったでしょう。

そういえば、「当の文在寅さんはどうしているのかな」と検索したところ、任期は来年までのようですね。我ながらバカだなと思いつつ、次期大統領候補者名の英語表記をつい調べてしまいました。Parkさん、Yangさん、Leeさん、Choiさん……。

日韓関係はともかくとして、私の生活に変化をもたらすとしたら……Parkさん?

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