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浪人と忍者のはなし 2
忍者は城のなかに入り込もうとしましたが、警備が厳重なので入れませんでした。このままでは、敵の武将を殺すことができません。
そこで、忍者は、来た道を引き返して峠に戻りました。みると、真っ暗な山の頂上に、ぼんやりと明かりがともっています。
そこにいたのは、昼間にすれちがった子供たちでした。子供たちは、忍者が殺した父親たちの屍体を見つけて、そこにうずくまっていました。
忍者は、荷車の中から、糧食を取り出して、子供たちに与えました。子供たちは忍者にお礼をいいました。
忍者は、子供たちを集めて座らせて、このように言いました。
「子供! さっきこの道をとおるときに、城の侍たちが、この男たちを殺すのを見たぞ」
すると子供たちは、それは本当ですか、と聞きます。
「本当だ。おれは行商人だが、侍たちが、この男たちを殺すのを見たぞ」
子供たちは、10人ほどいましたが、みな立ち上がって騒ぎました。
「それは本当ですか」
「本当だ。その証拠がこれだ」
忍者は、屍体の1つに近づいて、しゃがみこみました。そして、ふところから出した城の兵隊の持ち物を掲げました。さっき、兵隊たちに武器を見せていたときに、こっそり盗んでいたものです。
「見ろ。城の侍たちが持ち物を落としていった。侍たちが、この男たちを殺した」
子供たちは、忍者の話を聞いて、相談しました。
「城の侍たちが、わたしたちの父親を殺したようだ」
「そのようだ。絶対に許せない」
「城の侍たちを殺そう」
忍者は、子供たちに武器と火薬を与えました。
「子供たち。わたしは武器と火薬を売る行商人である。わたしは、おまえたちにたくさん武器をやろう」
子供たちは、峠の山道を少し降りたやぶの中に、洞窟があったので、そこにこもると、毎日毎日、忍者から教育を受けました。10人の子供たちは、山の中で、雨の日も、嵐の日も、鉄砲を撃ち、拳法を練習し、木登りや崖登りの練習をしました。
子供たちは、みるみるうちにたくましくなって、山の中で熊やイノシシを捕まえては解体して食べました。栄養をたくさんとったので、手の力や足の力がとても強くなりました。
10人の子供たちは毎日腕相撲、首相撲、相撲をやりました。するといつの間にか、手で木や岩をちぎって、山の向こうまで投げられるようになりました。
一人の子供は、人の頭くらいの岩をちぎって、向かいの山の斜面に投げつけました。岩は、そこを歩いていた鹿に当たりました。
10人の子供は、忍者から、敵の城主の顔について教わりました。
「この顔の男が、おまえたちの親を殺した城主だ。この顔を忘れてはいけない」
忍者は年を取って死にました。子供たちは忍者を土に埋めてから、城に向かって1列になって前進しました。
ぼろぼろの服を着た子供たちが、1列にならんで、音もなく山から下りてきます。
城の兵隊たちは、子供たちに声をかけました。
「おや、見慣れない子供たちだなあ。このあたりの村から来たのかな。それとも、となりの城から来たのかな」
子供は言いました。
「はい。ぼくたちはもともとこのあたりの村にいましたが、丁稚奉公にいって、いま帰ってきました」
「そうなのか。それはお疲れ様」
兵隊たちは、もう子供たちに興味を失って、自分たちの賭け事に集中しています。酒も飲んでいるようです。
子供たちは、完全な無表情で、一列になって、城にむかって進んでいきました。
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