ヒルベルトの無限ホテルのパラドックス

友達が作ったやつを読んで僕もやってみたくなったんで始めてみました。数学が好きなそこら辺の大学生です。 僕もnote?を書いてみたいと思ったんですが、数学以外に書くことがないので、とりあえずヒルベルトの無限ホテルのパラドックスのことでも書こうかなと思います。

あるところに無限ホテルと呼ばれる、名前の通り部屋が無限にあるホテルがあったとしましょう。
部屋は1号室、2号室·····と番号づけられていて、もちろんその数字はいくらでも大きくなります。
今、その無限ホテルのどの部屋にも、1人誰かが入っているとします。 普通のホテルなら、満室っていう状況ですね。(もしもの話なので、人間は無限にいない!とかそう言うのは忘れましょう)
このホテルに、新しいお客様が1人でやって来ました。もちろん、普通であればもう新しい客を受け入れることは出来ませんが、ここは無限ホテルです。ホテル内のどの部屋にも、その部屋の次の部屋が存在します。1号室には2号室がありますし、34645号室には34646号室があります。
ここで、全ての客に、「自分の部屋番号+1」の番号の部屋に移ってもらうとどうなるでしょうか。さっきも言った通り、どの部屋にいる人もその次の部屋は存在するし、元の部屋から次の部屋に移動することもできます。このように全員に移動してもらえば、無事1番の部屋には誰もいない状況が作れました。もちろん元々ホテルにいた人は全員ホテルの中にいます。これで無限ホテルは新しい客を迎え入れることが出来ました。

しばらくすると、今度は無限に続く人の列がこちらに歩いてきました。どうやら全員このホテルに泊まりたいようです。さっきは1人だけだったからなんとかなりましたが、無限人の客を同じように泊めることができるでしょうか·····
まあ、答えから言うとできるんですけどね。
もちろん、さっきと同じようにずらせばいいんだ!って言って、ホテル内アナウンスで「全員部屋を無限個分ズレてください」なんて無茶は言えません。しかし、代わりに「自分がいる部屋番号の2倍」の番号の部屋に移ってもらうことは可能ですね。(1000000号室の人には1000000個分歩いてもらわないと行けませんが·····いつかは終わります)
しかも、こうやって移動してもらえば、1番、3番·····と奇数番の部屋は全てからっぽになって、無限個の空き部屋を作ることに成功しました。


·····というのが無限ホテルのパラドックスと呼ばれるものです。(本当はここから、無限に続く人の列が無限個ある、というものもあります)
これは数学の話が元ネタになっているし、これはただ人間の直感から外れやすいだけだから、実際にはパラドックスではないんですよね。
ここからはその元ネタであろう、「集合の濃度」というものについて話そうと思います。
ここで言う集合は、高校生以上ならわかると思います。数学Aで習った、あの集合です。
さっそく濃度について話していきますが、
集合の濃度とは、「個数」の拡張です。 本棚にある本はいくつあるか、この地球上にある砂は何粒か、とか。数学っぽい例をあげるなら、50以下の素数は何個あるか、とかですね。 で、この「個数」を、無限個あるものに対しても考えたい、というのが「濃度」です。もちろん、無限にあるものを数え上げるなんてことはできませんから、この集合の濃度(元の個数)は〇〇だ!とは言えないです。ただ、この集合とこの集合の濃度は同じだ!と比べることはできるんです。
じゃあどうやって比べるのか、というのを考えていきましょう。

まずは分かりやすく有限集合(集合の中身が有限個)で考えてみましょう。
あなたの家に友達が大勢集まりました。あまりにも大勢の人が集まったので、夜ご飯は出前でピザを1人1枚頼むことにしました。そこで、あなたは家に来た友達の人数を数えないと行けませんが、中にはコンビニに出かけていたり、忘れ物をして一旦帰っている人もいます。どうしようかと考えていると、今日はハロウィンパーティーであったことを思い出しました。家に来た友人はみんなそれぞれ1つづつお菓子を持ってきていて、しかもひとつも被っていません。そしてそのお菓子達は全部そのまま机に置いてあります··········
この状況になれば、あなたはほぼ確実にお菓子の数を数えると思います。なぜなら、お菓子の数と、家に来た友達の数が同じはずだからです。
友人たちが「全員」「1つづつ」お菓子を持ってきているのだから数が同じになるのは当たり前ですね。 しかし、これから無限集合の話も始めるので、念の為深堀してみましょう。 いま、机の上に沢山お菓子が置いてあるのですが、そこからひとつ好きにお菓子を取ってみましょう。そのお菓子は、友人たちが持ってきたものの中にあるのですから、その「お菓子の持ち主」が、必ず「友人たち」の中にいるはずです。しかも、友人たちは、それぞれ1つづつしかお菓子を持ってきていないので、ふたつの違うお菓子が同じ持ち主のものである。ということもありません。さらに全員お菓子をちゃんと持ってきているはずですから、友人たちは必ずどれかのお菓子の持ち主です。
ちょっと分かりにくいのでまとめると、

1)それぞれのお菓子の持ち主は友人たちの誰か
2)1人の友人が持ってきたお菓子はひとつだけ
3)友人はそれぞれお菓子持って来てる

ということになっています。つまり、お菓子と、その持ち主でペアを綺麗に作れることになりますね。わざと言い換えると、お菓子たちと、友人たちの間で、1体1の対応づけが存在する、と言えます。これは、
「あるお菓子を指定すると、1人の友人が指定される」、かつ「家に来た友人を1人指名すると、お菓子をただ1つ指名したことになる」ということですから、お菓子を数える行為は、最早友人を直接数えているのと同じことだと言えます。
それでお菓子の数=友人の数が言えるわけですね。

さて、ここから無限集合(中身が無限個あるような集合)も含めて考えていきます。
無限集合としては、例えば自然数達の集合{1.2.3.4.5··········}や実数全部の集合などがわかりやすいですね。
集合を2つ用意して、それにA, Bとそれぞれ名前をつけます。
これからAとBが同じ濃度だ!と言える条件を見つけたいわけですが、
さっきのお菓子と友人の話で、1)〜3)の3つを思い出してください。お菓子の数と友人たちの数が等しいのは、1)〜3)を満たしているから。という話をしましたね。では、これを一般の集合に対しても使ってみましょう。
さっきと同じことを言うだけですが、

お菓子と友人達の間には、「お菓子に対して、その持ち主を対応させる。」という対応づけを行うと、
a) 全てのお菓子は、友人の誰かが対応されている
b)2つの異なるお菓子に対してそれぞれが対応する友人は別の人
c) 全ての友人は、どれかのお菓子に対しての対応づけになっている
の3つを満たしている。
·····というのが、お菓子の数と友人の数が等しいと言える理由でした。
では、同じように、
・AとBの間に、
a) Aのどの要素に対しても、Bのある要素がひとつ対応し ている
b) Aの2つの異なる要素に対して、それぞれが対応するBの要素は異なる
c) Bの全ての要素は、何かしらのAの要素の対応になっている

の3つを満たすような対応づけが存在すれば、AとBの濃度は等しい。と言えるのではないでしょうか?

実際に、AとBの濃度が等しいことの定義は、まさに上に書いた通りとなっています。
例えば、とても簡単な例では、「1週間の間の日数」と、「1〜7までの自然数」も同じ濃度です。(有限個の場合は個数と言っても問題ないですね。)
この場合は、単純に、1→月曜日、2→火曜日·····
7→日曜日、としてあげれば3つの条件を満たしますね。
無限集合同士の比較は、最初に話した、無限ホテルのパラドックスにでてきたものに合わせて考えてみましょう。
まず、無限ホテルの部屋は、番号づけられているので、「無限ホテルの部屋の集合」の要素は、その部屋番号で呼ぶことができますね。
(これは、自然数達の集合と、無限ホテルの部屋達との対応づけになっています。しかも、これは明らかに3つの条件を満たしているから、「自然数達の集合の濃度」と「ホテルの部屋の集合の濃度」は等しい、と言えます。)
この話では、最初に1人あたらしい人が来ましたね。この人がホテルに泊まれるためには、
「その人と、ホテルにいる人達」の集合の濃度と、
「無限ホテルの部屋」の集合の濃度が等しいことが言えればいいですね。
では、どのように対応づけをすればいいか、ですが、それは話の中で出てきたように、
新しい客→1番号室
元々いた客→元々の部屋の番号+1の部屋

というふうに対応をつければ、無限ホテルですから全ての客は対応先が決まっていて、対応先が被ることもありません。 さらに、どの部屋も、誰かが部屋に入ってくることになりますから、この対応は3つの条件を満たしています。これで1人の客が増えても対応できることも確認出来ましたね。
同じように、無限の人の列が来ても、同じように考えることができます。
めちゃめちゃ長くなってしまいましたが、これは数学でも割と大事な話で、特に3つの条件を満たす対応と言うものは、今でも勉強する時によく使います。数学ではこのa)を満たす対応を写像といい(関数も実数達と実数達の対応づけだから写像です。)、b)を満たす写像は単射、c)を満たす写像は全射、b),c)ふたつとも満たす写像は、全単射な写像と言われます。

適当にダラダラ話していましたが、ここまで読んでくれてありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?