全ユーザーに50GB無償提供するNifMo

新型コロナウィルス感染拡大の影響により、モバイル通信各社がオンライン学習支援のために毎月の通信容量の制限を緩和している。総務省のお達しに各社が応じた形だ。各社の実施方法に違いはあれど、大抵のキャリアが25歳以下の契約者を対象に何らかの通信量優遇措置をとっている。

3大キャリアの対応

例えば、docomoは「新型コロナウイルス感染症の流行に伴うU25向け支援措置」として25歳以下のユーザーに1GB追加オプションを上限月50GBまで無償提供するなどしている。au、ソフトバンクも同じような仕組みで月50GBを無償提供している。MVNO(いわゆる格安SIM)も同様の措置を行っていて、OCNモバイルONEが月10GB、IIJmioが月30GBを無償提供するなどしている。

なお、モバイル通信各社の対応状況は名古屋大学の情報担当部門のwebページにわかりやすくまとめられていた。

NifMoの場合

さて、今回話題に挙げたいのはインターネットサービスプロバイダ「ニフティ」が運営するNifMo(ニフモ)だ。

NifMoは3月下旬から「巣ごもり支援」として全ユーザーを対象として2GBの通信容量無償提供を始めた。3大キャリアが4月3日に学習支援を目的として25歳以下への50GB無償提供を決めたことを考えると、容量は少なかれど早期から全年齢対象に措置を講じたNifMoの先見性を感じられる。

その後、3月の巣ごもり支援は終了し、4月10日に25歳以下を対象に月20GBの無償提供を発表した。20GBという容量は3大キャリアと比べると見劣りしてしまうが、OCNモバイルONEが月10GBBIGLOBEモバイルが月20GBであり、MVNOとしては標準的である。

大学院生や学び直しの社会人など様々な年代層の学生がいるためすべての学生が25歳以下ではない。しかし、学生証等の提出で学生であることを確認するのは通信事業者にとって手間がかかり、通常業務に支障をきたすだろうから、年齢で線引きするというのも理解できる。

老舗ISPの本気

そのような状況の中、NifMoが5月1日に本気を見せてきた。法人を除く全ユーザーに月50GBを無償提供すると発表した (*1)のだ。執筆現在、他のキャリアでは見られない、非常に大胆な措置だ。NifMoは「新型コロナウイルス感染症の影響で長期化する教育機関の休校措置や、医療機関のオンライン診療等、リモート環境の需要拡大を踏まえ、追加支援措置を実施します」としており、オンライン学習支援だけでなく、新型コロナに関する社会全体の様々な影響による通信需要の増加に対応した形だ。

インターネットの通信帯域は無制限ではないため、通信量が増加した分、通信設備のリソースを消費してしまう。NifMoは大手通信キャリアの通信設備を借りて事業を行うMVNOであるため、通信量増加分の金銭的負担が増えることになるだろう(ちなみに、このあたりの事情はアカマイ本に詳しい)。全ユーザーに月50GBの通信を無償提供するという今回の措置の裏には、相当な企業努力と経営者の覚悟があったに違いない。

ニフティといえば日本におけるインターネットサービスプロバイダの最古参の一つだ。コンピュータ製造の雄、富士通の出資によって1980年代に設立され、パソコン通信サービス「ニフティサーブ」で一時代を築いた。近年は富士通から切り離され、ノジマの完全子会社となるなどの動きがあったが、今回のコロナ対応を見ると、老舗プロバイダの魂は健在ではないかと思わされた。

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* 1
NifMoには月3GB、7GB、13GBの通信プランがあるが、最も容量の少ない月3GBのプランでは1日あたりの通信量が650MBに制限されており、今回の支援措置にこの制限の撤廃は含まれていない。この場合、単純計算で月約19GB (650MB×30日=19,500=19.5GB) しか利用できない。
7GB、13GBのプランはもともと1日あたりの通信量制限は無いが、すでに3GBプランを利用しているユーザーが速度制限回避目的にプラン変更することは禁じられている。詳しくはNifMoのwebサイトを参照されたい。

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