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年末後半に観た映画のレビュー

2023年もあと少し。
久しぶりの映画レビューになってしまいました💦
今年も色んな作品を観ました。海外の映画も日本映画も良い作品が多かったですね。
と言うわけでレビューいきたいと思います。


『CRIME OF THE FUTURE』
アップリンク吉祥寺で鑑賞。
デビッド・クローネンバーグ作品はあまり馴染みがありませんが、作品に設定とか造形物に独特の世界観(というより独自ルールに近い)が反映されてて「ルール設定の作り方」が面白い作品が多い印象です。ゲームっぽさがある映画を撮れる作家ってオタクに人気があるのか一定層のファンがいますよね。
臓器を生み出す特異体質の男性とそれを切除する事をアートパフォーマンスにしている女性がメインキャラクターとなりストーリーが展開する。
「手術」「ライブパフォーマンス」「造形物」、全振りで男子ウケしそうな作品でした。


『アステロイド・シティ』
TOHOシネマズ・シャンテで鑑賞。
他のTOHO系の映画館と違ってここは海外のインディペンデント系の映画をよく上映しているので個人的にお気に入りな映画館です。場所柄なのか、お客さんも上品な人が多めな印象。
作品はアステロイドシティで起こる群像劇とそれを上演する舞台が交差する構成になっている。
W・アンダーソン作品は個人的にあまり感情移入出来ない作品が多いのですが、本作も同様にどことなくしっくりこない感じがありました。
デザイン的な構図や音楽の使い方、色調など可愛らしい印象があるし、今回の作品は劇中劇の様な構成になっていたのでそういう作品が嫌いではないのだけどテンポが速くからなのか感情移入が出来ずに終わる事が多い。
次作も多分劇場で観ると思うけどおそらく乗り切れずに終わるんだろうなぁ。笑


『サタデーフィクション』
吉祥寺アップリンクで鑑賞。
モノクロ、ワイルドバンチ配給、ロウ・イエ作品とくれば面白くないわけがない。
太平洋戦争開戦前7日間の日本軍と敵対するスパイ、そこに上演を控えた劇が交錯する構成になっている。
今回も過去作と同じように手持ち撮影で撮られており、さらに映像がモノクロ(コントラストが柔らかいのも印象的)なのでどことなくゴダールの「勝手にしやがれ」みたいな感じがしました。
あと、音楽の使い方もすごくオシャレでした。本作品では劇伴は一切ないんだけど、劇中の演奏シーンが手持ち撮影のライブ感によくあっていた。
役者陣はコン・リーにオダギリジョー、パスカル・グレゴリーと国際色豊かなキャスティングでしたが、個人的に梶原役の中島歩のスタイリッシュな佇まいがこの作品によく効いていたと感じた。


『ヨーロッパ新世紀』
渋谷ユーロスペースで鑑賞。
舞台はルーマニアの田舎町。ルーマニア人やハンガリー人、ドイツ人など異なる民族が暮らしている街にスリランカからの出稼ぎ労働者がやってくることで生じる分断を描いている。
背景に労働者の賃金問題や伝統を重んじる保守的な考え方の人達との軋轢など、どこにでも存在する出来事を多言語や他民族を交えることで特色を出し、1シーン1カット、手持ち撮影で描き切っている。
数年前にカンヌに行った時にも移民問題はホットなトピックだったけどより多面的に描かれていた。テーマや状況は違うけど、どことなく『ドゥ・ザ・ライト・シング』を思い出させる作品。
監督のクリスティアン・ムンジウの設立した制作会社がプロデュースも兼ねている。
海外は監督自ら制作会社を持っているケースが多いのでしょうか。
パンフレットには資金集めが順調だった事にもチラッと触れており、意欲的な作品を作るには制作体制って大事だなぁと実感。
原題のR.M.Nはルーマニア語の略で英語だとMRIを意味する。


『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』
TOHOシネマズ渋谷にて鑑賞。
R.M.N.同様にこちらもインディアンと白人の軋轢から生じる分断を描いているけど、こちらの方がよりサスペンスを基調とした娯楽作品になっている。3時間の長尺だけど見応えのある作品。
ディカプリオ、デニーロが出演しているスコセッシ作品というだけで映画好きには堪らない作品じゃないかなと思います。


『水いらずの星』
新宿武蔵野館で鑑賞。
別れた夫とその妻、BARのママさんの3人しか登場せず主要なシーンはアパートの一室という構成になっている。別れた夫婦の取り留めもない会話から二人の溝がこれでもかと描かれる。
戯曲が原作という事もあるのか限定された空間での芝居は映画でも役者映えするなと思いながら見てた。本作はアパートの一室だったけど「限定された空間」という縛りはまだまだ応用が出来そうです。
パンフレットには映画で描かれなかった元夫婦の生活感ある写真が載ってて裏・水いらずの星という感じでこちらもオススメです。


『ゆりに首ったけ』
池袋のシネマロサで鑑賞。
おっさん4人による恋愛劇。そういえばこういう恋愛劇ってあまり観たことがなかったので新鮮な感じがしました。こちらも「水いらずの星」同様にシーンの多くがBARで撮影されており、
予算に留意した作品を造るならこういうアプローチがやりやすいのかなと思いながら観てた。
おっさん達のユリに対する感情を吐露する事が作品を引っ張る構成になっていてそれがテンポを維持する原動力になっていた。ある意味これもサスペンスだよね。
脚本を書いた人が舞台出身の役者さんなだけあってセリフが演劇っぽい感じがあるけど、コメディテイストの作品によく合ってた。
本作は主演の4人がプロデュースを兼任している。役者さんが自分が演じたいと思う作品を自らプロデュースするという現象が他にも出てきそうで自主映画でこういう試みもアリだなと思った。


『ほかげ』
渋谷ユーロスペースで鑑賞。
塚本晋也作品。手持ち撮影を多様し短期間で撮影をした印象があった。個人的にですが『野火』や『斬、』にあったデジタル感のある映像の質感が少なくなっていて画的には好きな作品でした。グレーディングも良かった。
戦後の闇市を通して戦争に対する批判が伺えた。
近年の塚本作品は反戦をテーマにした作品が多いので以前より暴力の描き方がリアルで変質性も少なかった(男性俳優のぬるっとした変質性は健在でしたがそれも少なめだった)。本作を撮る前に亡くなっていた石川忠の音楽が随所に使われていたが作品によく合っていた。
監督、脚本のみならず撮影や編集を全て自社で完結する制作スタイル(当然プロデュースもしている)は今も昔も自主制作者にとって模範になり得るスタイルで
僕個人に置き換えてもこういうスタイルを自分の作品に反映させられたら良いなと思いながら観てました。


『首』
TOHOシネマズ日本橋で鑑賞。
本能寺の変を秀吉視点で描いた時代劇。これまでの北野武作品同様にコミカルさは健在だったけど、より大衆的な雰囲気になってる感じがした。
とはいえ通常の時代劇にはない男色が描かれていたし、時代劇版アウトレイジみたいな武将達による謀略など新たな試みもあり見応えのある作品だった。
この作品を見てアウトレイジを見直すと色々と発見ありそうだなと思った。

以上、23年後半の映画レビューでした。
来年は貯めずにちょくちょく更新をしていきたいですね😅💦
それでは皆さま、良いお年をお迎えください。

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