【小説】物語は始まらない。
一瓶の酒瓶から始まる物語があってもいい。花器一つから始まる物語があってもいい。醤油さし一つだって物語を始めるにふさわしくないということはない。しかし、物語は始まらない。最近は醤油さしはあまり使わないかもしれないし、酒瓶よりはアルミ缶の方が多いかもしれない。花器のある家はもはやすくないかもしれない。しかしだからと言ってそこが物語にふさわしくないということはない。アルミ缶一つから始まる物語も、真空パックの醤油容器から始まる物語もあってしかるべきだ。
しかし、物語は始まらない。