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悪い病気じゃなくて、ほっとした話

ここ数週間、喉の調子が悪い。喉に何かが詰まっているような違和感があり、それを放っておいたら腫れてしまった。

母親の入退院以外で病院へ行くのは久しぶりだった。数年前に歯の痛みに耐えられなくなり歯科医に駆け込んだことがある。病院へ行くのはそれ以来だ。まぁ、その時もすぐに歯科医に行くことはせず、放っておいて虫歯が酷くなり、結果的に治療が長引くことになって後悔をしたのだが……。

転んでどこかを擦りむいたりと外から見てわかる症状なら自己判断でなんとかするのだが、人体の内側の不具合だとやはり怖い。重い病名が頭をかすめる。

怖いことがあるから余計に知らなければならないのだが、怖くて病院は行きたくはない。

ここ数週間は気持ちが重かった。自然と喉が治ることを期待していたのだが、初めは違和感だけだったものが、段々と腫れだして痛みをともない、食べ物は飲み込みづらくなるし、体に良さそうなビタミンを摂ろうとオレンジジュースを飲めば喉がしみる。症状は悪化するばかりで少しの食事とアメを舐めるだけとなり、子供にも心配されてしまい、とうとう病院へと駆け込むことにした。

前日は不安でなかなか眠れず。

悪い病名を予測して色んな科が揃っている市立病院を選び、早朝から病院へと向かった。番号を呼ばれ、ドキドキしながら診察室へ入り、おそるおそる先生に症状を話すと、先生は鼻からカメラを入れて喉の中を診てくれた。

結論からいうと、幸い重い病気ではなく単に「喉の腫れ」ということだった。その一言で心が軽くなった。

最近は膝をついただけなのに激痛が走ったり、両肩が痛かったり、咳が出たりと、喉以外にも調子が良くないので悪い病気を想像し、悪い病名を宣告されることを考えた。

怖さに押し潰されないだろうか? どう考えれば良いのだろう? ずっと痛いのだろうか? そんなことを考え、やる気も出ず、食欲もわかず、実家へも足が遠のき、喉に良いだろうアメを舐めダラダラと長椅子に横になる日々だった。

映画館で映画を観ると、本編が始まる前に暗転し、今後公開される映画の予告が流される。たまに予告が終わり本編が始まる直前に慌ただしく館内に入ってくる方が居る。僕は予告も観たいし、時間に追われるは嫌なので早めに座席に腰を下ろしているから、そんな人を見ると「もっと早く来れば良いのに」などと冷ややかな目で見ていたのだが、悪い病気だったら予告を観るのはとても辛いだろう。余命という言葉はとても残酷な言葉だ。遅れて入ってくる方の中にも、もしかしたらそんな事情がある方が居るのかもしれない。

ちゃんと早めに病院へ行かないといけないし、健康とはとても尊いということも痛感したし、色んな角度から物事を見なければいけないし、いつかは死ぬんだなぁ。とか、そんなことを考える数週間だった。

早く喉が治らないかな。

「症状が改善されなかったら、また来てください」と先生は言っていた。

ちょっとだけ、まだ不安だ……。




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