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ゴミの城~006~恐るべきゴミの王

  これまでのお話

 ゴミ屋敷の主人、父親が他界して一か月。一週間に何度か実家へ行って、呆れるほどのゴミを片付けているが、先日、兄に

「ベランダにハクビシンが居る」

 と言われ半信半疑だったのだが、いつも通りゴミをまとめて帰ろうとした時に、庭にある父の仕事場だったプレハブ小屋の裏から鳥のような鳴き声がした。そこはゴミだらけで覗くこともできない。実家を後にして歩きながらスマホで「ハクビシン 鳴き声」を検索してみた。

 動画はすぐに見つかり、それを再生してみた。……似ていた。調べてみるとハクビシンは「鳥獣保護法」で保護されているために殺鼠剤などで勝手に殺すことも出来ないらしい。それでも「ニンニクの匂い」が嫌いらしいとのこで、翌日すりおろしのニンニクと刻んであるニンニクを一瓶ずつ、それとニンニクを束で買ってきた。

 仕事終わり、いざ鬼退治へ。

「庭にニンニクをたっぷり撒き散らしてやる」

 実家には小さな庭があり、そこに親父のプレハブの仕事部屋がある。仕事部屋と言っても、もう何十年も前に引退していて使ってはいない。そのプレハブ小屋の奥に横に細長く庭が広がっているのだ。昔はキッチンの窓から出れば仕事部屋まで行くことができた。それが今ではキッチンから外に出ても物だらけで歩くスペースもない。大きな水槽、発泡スチロールなどが高く積まれている。それならば隣の和室の窓から外に出ればよいのだが、その部屋も物だらけだったので、おそらく何年も雨戸を開けてはいなかったのだろう。いつも雨戸は閉めっぱなしだった。今はその部屋に僕がまとめたゴミ袋が何十個も溜めてあり、ゴミの日が来るのを待っている。ネズミは黙って待ててはくれないので、そのゴミ袋は所々がネズミに嚙まれている。

庭のゴミ
通ることは不可能だった

 仕方なく和室に置かれた、たくさんのゴミ袋をどかして窓を開けてみた。それが上の写真。そこには地面がなかった。キッチンから覗いたときは、もう少しマシかと思っていたが、窓を開けると植木鉢や発泡スチロールやクーラーボックスがたくさん。歩くスペースもなかった。これだと何処にハクビシンが居ても分からないし、怖くて何も出来なかった。完全に心が折れた。

 いかれてる。……頭がおかしい。昔は縁側だったのに、今は全く庭に出られやしない。

 話しているときは普通だったのに……。父が物を捨てられないのは知っていたが、これは酷い。異常な世界だ。取っておいてメリットがある物は、ひとつも見当たらない。

 今なら原稿用紙八千枚、親父の悪口が書ける!

 長年、掃除関係の仕事をしてきたし、無駄な物は捨てる主義で、お掃除レベルにしたら30くらいはあると思っていたのに、ゴミの王には全く歯が立たなかった。ゴミの王がネズミとハクビシンを仲間に引き連れ、行く手に立ちはだかる。カビやバイ菌、発泡スチロールに植木鉢が邪魔をする。

 結局、そのままニンニクを撒かずに諦めた。帰る前に二階へ行って母親に声をかけた。 

「塗り絵とか、ペン習字とか書いてる?」

 ここ最近は掃除を終えると、挨拶だけして帰っていたのだが、それが良くなかった。認知症の予防になるかと思い母に塗り絵やペン習字の練習帳などを渡していたのだか、ノートは前に見た時と変わらなかった。褒めると嬉しそうな顔をしていたのに、掃除に夢中になり母が書いたノートを見なかった。母は全然、やっていない。反省。気にかけてあげないと。

 ネズミとハクビシンをなんとかしよう。つぎ実家に行っても、ゴミの王には線香をあげてやらない。

 確かもうすぐ四十九日だったな。

動画をご覧になりたい方は~こちらから

続く ~007~ 一難去ってまた一難

 


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