妹がきた！2023年2月19日

扉を出ると
馬がいた

荷物を背負って
主人を待っていた

馬の横を通りすぎると
馬の尻に隠れていた

やんちゃ坊主が

ナメシガワ！
ナメシガワ！

と叫び、

こっちこっちと、

執拗にとうせんぼする

ナメシガワ

なんていう名前の
有名な日本人を

知っているか！！！

ときかれているのだろう。

ナメシガワ ヒロヒコ

なんていう
80年代の
テレビタレントかなにかだろうか

ナメシガワ？
と問い直すと

メシガワ！
メシガワ！

とナを省略された

メシガワ ヒロコ

なんていう
テレビ女優だろうか？

子供達は
学校に
行かないのだろうか？

いや、こうゆう子供は
一日中
道端で客引きを
するのだろうか

ナメシガワ攻防がはじまってから

ナメシガワに連れて行ってあげる！
こっちこっち！

と輪に加わってきたのは

やんちゃ坊主とはいえない

チンピラにいちゃんだった

ナメシガワなんて

みてもみなくても同じなのだが

それがなかなかいえなかった

ナメシガワなんていう芸能人は

わたしの芸能人リストにはないばかりか

ナメシガワさんには

なにかただならぬ恐怖をおぼえた

それからそのナメシガワは
なめし革をつくる伝統工芸を

みせてくれる一角なのだということを
知った

ナメシガワは
鳥のフンで浸されたあとに

天然素材の染料で色をつけたあと

ロバにのせて
街を見下ろす丘の上まで運ばれ

カラカラに乾かした後

革製品になるのだそうだ

テラスの上から眺める
ナメシガワ工場は

糞のにほいが立ち込め

わたしたちのとなりには

頼んだおぼえのない

マフィアの面影を残した
浅黒い顔の
やつれたガイドが

立っていた

ナメシガワ勧誘は

もうこりごりだ