今回の本は、エーリッヒ・フロム著、鈴木晶訳、紀伊國屋書店発刊の『愛するということ』です。 この本は、正しく『愛』について書かれた数少ない本です。 巷では、偽物の「愛」が、本物の『愛』のように話され、書かれていますが、この本が扱うのは後者の方です。 偽物と本物の違いとして、普遍性があるかどうかと、唯一性があるかどうかが挙げられると思います。 偽物の「愛」は、好きな人や身内だけを愛するというような、排他的で差別的なところがあります。 一方で、本物の『愛』は、愛
登校初日 (クラス分けの張り紙が張り出された廊下。その前で立ち止まる七海) 七海(目をギラギラさせながら心の中で) 『運命の相手はどこだー!』 萌木(水田と二人で七海に近づきながら) 名前見ただけじゃわからないでしょ。 七海(二人を見て) あら、萌木と水田じゃない。どうかしたの? 水田 どうかしてるのはお前だよ。 七海
こちらの記事は、岩波文庫さんの、ゲーテ作『ファウスト』の読書感想文になります。 全体を通して、無限の広がりを感じさせられました。 それは何も世界観における空間的な広さではなく、精神の広がりです。 物語として、天使とか悪魔が出てきたり、時間的にも空間的にもあっちへ行ったりこっちへ行ったりするわけですが、ただそれらが出てくるからというだけで、無限の広がりを感じることはできないと思います。 この世の理、真理、精神について描いているからこそ、それを成し遂げられるのでし
こちらは、ボーカル『水瀬いのり』さん、作曲『武田将弥』さん、作詞『岩里祐穂』さんの、『heart bookmark』という楽曲の歌詞考察をする記事です。 ガイドを務めますのは私、心の図書館司書、徳川酔易でございます。 それでは早速、本を開いていきましょう。 全体が与える印象 まず、歌全体が与える印象についてです。 メロディの雰囲気は陽気で明るく、元気な曲ですが、能天気な明るさとは一味違います。 メロディ自体も軽薄なポジティブさは感じられず、リアリスティックな天
ようこそ、ライブハウス「歌詞考察」へ。本日の曲は『星座になれたら』です。演奏は『結束バンド』の方々、作詞は樋口愛さん、作曲は内藤英雅さん、編曲は三井律郎さんです。 DJは私、深淵なる孤独を経験せし者がお送りしてまいります。 この曲はアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』に出てくるため、その登場人物についての隠喩であるとするのが妥当なのでしょうが、今回は、また別の解釈をしていきたいと思います。 それでは、わかりにくいところを見ていきましょう。レッツゴー。 まずは、『影を
歌詞考察へお越しいただき、誠にありがとうございます。 私は客室を担当いたします徳川酔易(とくがわよいやす)でございます。酔い止めを飲み、シートベルトをしっかり締めてください。 今回の旅のご説明に移ります。今回扱う歌詞は、米米CLUBさんの『浪漫飛行』になります。 それでは参りましょう。 まず、この歌は最後まで私たちに語りかける口調が続きます。 ここでは、その語り手を自身の心としましょう。 私は心と各々の自我は、別々のものだと考えています。心は運命と限
今回の歌詞考察は、『いつも何度でも』。作詞は覚和歌子さん、作曲は木村弓さんです。 この歌は、歌詞だけを見ても、曲だけを聞いても、生死をテーマにしているのだなと伝わってくる歌ですね。 ただ、テーマが壮大な分、なんとなくしかわかりにくいかもしれません。なんとなくでも心まで染み渡ってくる素晴らしい歌ですが、せっかく意味が少しでもわかるなら、知りたくありませんか? チャンスは今だけですよ! ……嘘です。『いつも何度でも』知る機会はあります……。 ということで、勝手に始めて
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この記事で扱うのは、ボーカル水瀬いのりさん、作詞・作曲 志村真白さんの『アイオライト』です。 アイオライトという石は、昔海賊が羅針盤代わりに使用していたということで、そこに込められた意味は、『迷わず進めるように』です。なので、皆さんが他の曲と間違えないように先に言っておきました。 では、案内人は私、エレベーターでもたまに酔う桃園涼明が担当いたします。それでは『アイオライト』の世界へ、出航〜。 お待たせしました。ここから本編に入ります。 最初の部分ですね。ここ
巨人に体を掴まれて振り回されるようでした。 若きゲーテが心情として見たものは、現代に生きる我々が見るそれと、それほど大差はなかったと思います。 ストーリーも、超大まかに見れば三角関係で、現代のラブストーリーにおいて定石化されているものです。 ただ、その解像度の高さと圧倒的な表現力によって、他のラブストーリーとは一線を画す魔力的なエネルギーを秘めた物語へと変容しているのです。 とにかく、凄まじいパワーを感じました。 宇宙まで放り出されたかと思ったら、深淵ま
今回の本は、『増補 宗教者ウィトゲンシュタイン 星川啓慈 法蔵館文庫』です。 ウィトゲンシュタインについては、「語り得ないものについては沈黙しなければならない」という言葉しか知らなかったのですが、宗教が人間の社会的側面によって営まれるのではなく、人間の人間的な部分によって行われることもあり、彼の人間としての一面を知ることができました。 今回は、この本を読んで得た、私的人間像を話していこうと思います。 とその前に、注意なのですが、この記事では「語り得ないもの」につ
人間とはどういう生き物なのか。人生にはどういう意味があるのか。 ヘルマン・ヘッセの考える、偉大な人間の生き方について書かれた本です。 この本のテーマは大きく分けて三つあります。それぞれ「精神構造」、「ユーモア」、「偉大な人間」です。 これらのテーマを、独特な設定を通して表現しています。 この本は、ハリー・ハラーという人物が概ね自分を主人公にして書いた原稿(物語+論文)を、編集者が公表した、という形式で展開されます。 この形式は、おそらく現実世界の事情によ
底なしの欲望を満たすことで頭が一杯、人が傷付くことになんとも思わない。 こういった現代に蔓延している悪癖の病巣は、虚無感から逃げるところにある。 虚無感が生まれると、あらゆる価値や意味が消えてなくなる。 生きている意味がわからなくなる。 空っぽになって全てが止まってしまったように思える。 こんなことになるんだから、資本主義からしたら天敵だろう。 それでも、もう少しよく見て欲しい。 本当に空っぽで何もないわけじゃない、本当に止まっているわけじゃない
この記事は、フィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の解説という名の感想をまとめたものです。 取手を握って、早速始めましょう。 全体の構成まず、この物語は主人公のリックがアンドロイド狩りとして、地球に紛れ込んだアンドロイドを殺していくお話です。 しかし、この物語は氷山のようになっていて、プロットと、そこに込められた意味が2:8ぐらいの比率で構成されているので、真意を掴めると、あの世界観以上の、宇宙大の広がりを体験できるのです。 なので、
読書感想文を書くのが下手な子の読書感想文のタイトルみたいですが、その通り、今回は読書感想文が下手な子の読書感想文です。 こんかいわたしがよんだほんは、『悠木碧のつくりかた』というほんで、中央公論新社さんからしゅっぱんされています。 このほんは、ちょしゃじしんのじんせいやすきなことなどについてかかれたほんです。 ここから前置きが始まります。飛ばして本編に行きたい方は、20秒未来へ転移してください。 読書感想文といえば、本編の要約を軽く載せて、そこから読んでどう