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でももっと哀しい瞬間に 涙はとっておきたいの

斎藤飛鳥ちゃんの卒業に絡めてじゃないけれど、たまたま聴いた筒美京平トリビュート・アルバムで生田絵梨花さんが歌う「卒業」が沁みた。

オリジナルの斉藤由貴さんの歌も好きで何度も聴いてたけど、生田さんが歌う歌詞を聴いてて「ああ、この曲の主人公はこういう事を考えて、こんな気持だったんだ」ってやっと気づいた。何十年もたってんのに気づくの遅すぎ、ワシ。

サビにある歌詞については、オリジナルの斉藤由貴さんの当時のイメージから、ちょっと気が強いクールな女の子が「私卒業式でなんて泣かないわ」って強がってるんだろうと勝手に解釈してた。

でも歌詞を頭からしっかり聴くと、おそらく高校を卒業して東京の大学へ進学してゆく彼氏に対して、そのうちきっと彼は私のことを忘れてしまうんだろうな、という漠然とした、でもそれは確実に訪れるだろうという想いを抱きつつ、それでも彼のことが大好きだから、などという溢れる気持ちが歌われているのがよくわかって涙が少し溢れた。

都会の生活に馴染むにつれ彼は自分のことを忘れてしまうんだろうという悲しい予感を胸に抱える主人公は、自分の涙は卒業式ではなく「もっと悲しい瞬間」である彼との別れの時にこそ流そうと決心した歌なのですね。

制服の胸のボタンを
下級生たちにねだられ
頭かきながら逃げるのね
ほんとは嬉しいくせして

人気ない午後の教室で
机にイニシャル彫るあなた
やめて想い出を刻むのは
心だけにしてとつぶやいた

離れても電話するよと
小指差し出して言うけど
守れそうにない約束は
しない方がいい ごめんね

セーラーの薄いスカーフで
止まった時間を結びたい
だけど東京で変ってく
あなたの未来は縛れない

ああ卒業式で泣かないと
冷たい人と言われそう
でももっと哀しい瞬間に
涙はとっておきたいの

席順が変わり あなたの
隣の娘にさえ妬いたわ
いたずらに髪をひっぱられ
怒ってる裏ではしゃいだ

駅までの遠い道のりを
はじめて黙って歩いたね
反対のホームに立つ二人
時の電車がいま引き裂いた

ああ卒業しても友だちね
それは嘘では無いけれど
でも過ぎる季節に流されて
逢えないことも知っている

「卒業」松本隆

最初のサビあとの歌詞などは、主人公の揺れ動く気持ちが描かれてて、彼女の決心の辛さがよく分かる。

作詞は松本隆氏で、作曲者の筒美京平氏とは同じ内容でもこの曲よりも無邪気な主人公が時間を経て悲しい現実を悟るっていう名曲「木綿のハンカチーフ」を生み出したコンビなんですね。

どちらも同じテーマを扱っているけれど、主人公の性格の違いでまた違った味わいがある。

名曲は時代を越えますねってことで、今回はおしまい。

生ちゃんの歌声が持つ高音の魅力が味わえます。

生ちゃんの歌っていえば、ワシにとってのイチバンはこれです。大概はオリジナルがイチバンなんですが、これに限って言えばオリジナルを越えてる。
生ちゃんも素晴らしいんですが、久保ちゃんも最高です。


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