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【300字小説】その瞳輝く

 猫だって夢をみる。大きな魚の夢、ふわふわの毛布に潜り込む夢、見たことないはずの海の夢。
 昨夜は夢の中、夜空高くにきらきらと星が光るのをみた。もう齢17の老猫だが、夢の中では子猫だった。どうしてもあの星が獲りたくて、躍起になってジャンプして、がむしゃらに猫パンチを繰り出した。けれどやがて力尽き、夢の中でも眠ってしまった。
 そして早朝、人間はまだ夢の中、目覚めた猫の瞳にはあのきらきらの星が微かに瞬いていた。老猫を労る、夢の神の粋な計らいか。
 人間は起きるとまず、猫のために新鮮な水と食事を用意する。今日はいつになく眼を爛々と輝かせて食事する老いた猫を見つめ、昔互いがまだ若かった頃の事を懐かしく思い出した。

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