夜の担当者は誰か？

田舎に住む私。有難いことに保育園に落ちることが無く、子を預けて働くことができた。働きたくても、働く先が待っていても働けない方々と比べて、何と有難いことか。そう思って、働き始めた。

しばらく育児で家にいたので、その期間は、自分は誰かのお母さんとしての顔か、誰かの奥さんとしての顔しか無く、元々の私はどこかにいってしまったようだった。自分の努力や行動不足も多分にあったのだが、やはり少し、寂しかった。そんなわけで、働き出したとき、辛いこともあったが、誰かのお母さんでも、誰かの奥さんでもない私、〇〇くんのママでも、〇〇さんの奥さんでもなく、久しぶりに自分の名を呼ばれ、社会で何らかの役割を担うことができるという感覚を得られたことが、ひどく嬉しかった。

私が、戻ってきた。子どもができる前は、こんなことがこれほど嬉しく感じるとは夢にも思わなかった。私よ、おかえり。

働くにあたって、病児保育にも登録し、なるべく自分が休まないように、子を休ませないように、健康管理に必死だった。だけど、そううまくはいかなかった。

残念ながら、子も私も体が強くない…。

子が保育園を休まざるを得ないとき、病児保育にとても助けられた。時々満員で受け入れ無理ですということもあったが、看護師さんがおり、こまめに様子を確認してもらえ、かなりの安心感があった。利用手続きなど、もっと使いやすくなるといいと思う部分はあるものの、おかげで、3日仕事を休まなければならないところ、クリニックを受診するための1日休むだけで済んだりした。

しかし、もちろん夜は預け先が無い。夜の担当者は誰だ？私か夫だ。

昼間体調が安定していても、夜悪化することが多く、止まらない咳、咳込みすぎての嘔吐、世話と心配でほとんど眠れず、そのまま翌日仕事に行く。何日かそれを繰り返すと、睡眠負債がたまり、朦朧としてくる。夫はそれなりにうまく睡眠を確保していたが、私は1度看病で起きると眠れなくなったり、子の咳の幻聴まで聴くようになってしまった。

ボーっとした状態で、仕事に行く。ケアレスミスをする。車で、日用品、食料品の買い物に行く。ボンヤリして一時停止違反で警察に捕まる。

そのうち、子の病気がうつる。風邪くらいならいいが、厄介なウイルスにもかかる。高熱と謎の発疹が全身に広がり、出勤停止4日間ということもあった。このとき、仕事は最も忙しい時期で、同じ仕事をしている方には大変迷惑をおかけした。本当に申し訳なかった。

こんな状態が、何ヶ月か続き、少し落ち着いたと思ったら、また…。

度々仕事を休む申し訳なさ、睡眠不足、体調不良、なんとかここを乗り越えたら…。子が大きくなるまでの辛抱で、大きくなると楽になるとも聞く。…それはいつ？

同じ年の子でも、ほとんど休まない体の強い子もいる。うちの子は、どうなるのかな？ほとんど休まない子をいいなと思った直後、ああ、だって私も同じだもんな。子よ、ごめん…と思う。

他の理由も重なり、ついに仕事を辞めた。今まで経験した中で1番好きな仕事だった。同じ状況でも、乗り越え、私よりずっと働くママもいるかもしれない。でも、私にはできなかった。自分の不甲斐なさを恥ずかしくも思った。

仕事を辞めて、収入が減った。これからどうなる？このままではいられない。

でも今、いいことも少しある。

夜は、いいよ、私みるよ、お父さんは寝て！と言える日が増えた。時間に追われることが少なくなり、家族に優しくなれた。家族の心の揺れに寄り添ったり、労ったりすることが、前よりできるようになった。

これから、この我が家の状況で、どうにか私が収入を得る方法を見つけなくてはいけない。

体調が少し上向いてきた子の寝息の横で思案する。

答えはまだわからない。

とりあえず、今夜の担当者は私だ。

毎日仕事に育児に家事に頑張る親になった人たちに想いを馳せて、今夜も頑張ろう。