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メルカリでキレて、レコードプレーヤーを買う

メルカリの通知欄を見て激怒した。僕が「いいね」したレコードプレーヤーに、「半額にできませんか?」的なコメントが連なっていたのだ。呆れた購入希望者どもだ、生かしておけぬ。僕は購入ボタンをポチっとした。「値下げコメントが醜いから、俺は設定価格で買わせていただく」と高らかに宣言した上で。


僕はちょっと前からそのレコードプレーヤーを買うかどうか迷っていた。
メルカリに出品されていたのと同じ機種のレコードプレーヤーを、よく行く店で使っていたのだ。レトロでカッコいいデザインをしているし、音質もチープながらも暖かい。
それで、気になって調べてみたら、メルカリにたまたま出品されていた。中国製のノーブランドもので、思っていたよりずっと安い。
とはいえ、衝動買いすると邪魔になるのも目に見えている。なにしろ、うちにはDTM用の大きなスピーカーもあるし、Amazon Echoも2台ある。再生機器は足りているのだ。
だから、とりあえずいいねをつけた上で、いったん寝かしていたのだ。もし誰かに買われてしまったら、単に縁がなかったと思えばいい。いつも図書室ですれ違う異性に感じる一方的な親密さとか、そういう心情に近いのかもしれない。

ところが、あの憎き値下げコメント連中が峠の山賊のようにやってきてしまった。最初の1人は、いきなり半額近い値段を提示してきた。図々しくも送料込を求めている。「おいおい、このサイズで手数料も含めると、出品者が大損するじゃないか」と僕は呆れてしまった。山賊でも下着くらいは残すはずだ。出品者は何も反応を示さなかった。出品者も年の瀬に悪漢と戦う気はしなかったのだろう。心中を察してしまう。
2日後くらいに、別の山賊が1人目よりも少し高い金額を提示してきた。それでも、発送の手間とつり合わないだろう。すると、さらに別の山賊が草むらから飛び出してきて、「2人目より500円高い金額でどうですか」なんて言い始めた。
それを見た2人目の山賊が、「検討します」とコメントをする。
3人目を出品者のコメントと勘違いしたのだ。あまりにも醜すぎる。言うまでもなく、出品者は何もコメントしていない。

当初は静観しているつもりだった野次馬の僕も、このあまりにもメルカリズムがあふれるやりとりを見ていて、次第に腹が立ってきた。湖畔でぼんやりと本を読んでいたら、突然選挙カーが水面に突っ込んできたような気分だ。
そんなわけで、「あまりにも醜いやりとりなので、僕が希望価格で買います」とコメントを残し、ヒヒンと鼻を鳴らして、蹄で購入ボタンを押したわけである。めでたしめでたし。

そういうかくかくしかじかで、僕の家にレコードプレーヤーが届きました。レコード再生機能に加えてラジオ、bluetooth再生やCD、SDカードなどのメディアなどの再生機能もついているので、お得といえばお得である。
これから、ちょっとずつ好きなレコードも揃えていきたいですね。プレーヤー自体も電子レンジくらい大きいから、まだ存在感になれずにおっかなびっくりしているけれど。

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