一目ぼれした靴を履いたら、その日一日幸せになった話

 ようやっと、「これだ!」と思える靴に出会った。一目ぼれだった。

 秋に(だけじゃなく春なんかも)履ける靴が欲しいなと、ずっと思っていた。それもできれば明るい色の革製のやつだ。ただ、近所の靴やでは、合皮だったり、革だけどイマイチピンとこないなあ・・・という感じ。まあ、買えなかったらそれはそれで、生活に直結するわけじゃないので諦めるかあ、とその場では買わなかった。できるだけ、妥協をしたくないという性分なせいでもある。

 そんなとき、仕事の関係で出会った人が、とっても素敵な靴を履いていた。年配のご婦人なんだけど、秋めいた茶色系のコーデに合わせて、足元で光るライトブラウンの革靴がとっても似合っていてかっこよかった。思わず、「すみませ~ん・・・その靴どこで買ったんですか?」。聞けば大丸で奮発したのだという。ああ、百貨店か。それはイイモノだわ。と自分とは縁遠い世界かなと思って、その場は仕事に戻った。

 しかし、次の日もその次の日も、あの時のご婦人とその靴がフラッシュバックしてしまう。世間では「欲しいものは一週間考えてみて、それでも欲しければ買いなさい」とかなんとか言っているようだが、僕は三日目でノックアウト。やっぱり靴を探そう!と思い、一念発起して札幌の中心街まで足を延ばした。そしていろんなところをグルグルグルグル歩き回り(普段さっぽろに行かないので、靴屋を探すところから始まる)、へとへとになって、ようやっと見つけたのがこちら。

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 全体的なまるっこいフォルム、サイドにジッパーがついている構造、そしてなによりワインレッドのあざやかな配色。見た瞬間に、ズッキューンと音が聞こえるほど、ハートを撃ち抜かれてしまった。

 早く履きたかったが、土曜日は一日中雨。はやる心を抑えて、すっかり晴れた日曜日の昼に初出動。一歩アパートを出ると、足元がお日様の日を受けて、ワインレッドに輝いている。かっこいいね。アスファルトを踏みしめる一歩が、履きなれた靴とは違ってまだまだ固いけど、それさえかわいいじゃないか。

 お昼は近くのラーメン屋に行ったのだが、なじみの店に行くという日常が、おニューの、しかもお気に入りの靴を履いて、となるだけで、なんだか背筋が伸びる気分。満席だったのでしばらく並ぶことになったが、そんなことさえ気にならなくなる。

 食後、軽く自転車をこいで喫茶店に。いつもと同じ店なのに、靴が違うだけでちょっとドキドキする。まるで普段の自分とは違うみたいだ(コーヒーの味は普段と同じだった)。夕方に帰宅して、靴を脱ぐその瞬間まで、ちょっとイイ気持ちが持続していた。

 これから、大事に履こう。

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