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トヨタは凄いけど、EVは終わってないよね

YouTubeに溢れる情弱向け動画にいちいち突っ込んでみるシリーズ

◆EVが終りと思ってる人は情弱の可能性あります

最近多いのが”EV終わった!”とか”トヨタの勝利!” 的なEV叩きの文脈。これをそのまま鵜呑みにすると情弱です。

言いたいのは:

  • EVの課題は解決できる(バッテリー、充電インフラ他)

  • 水素の普及には10年単位以上の時間がかかる

辺りです。

もちろんEVこそ正義なんて全く思ってもいなくて、むしろガソリンやディーゼルといった従来のICE(内燃機関)が大好きです。音から振動まで、心を揺さぶるのは絶対にガソリン車。どこに行っても給油はできるし、時間も掛からないし。最高のモビリティだと思ってます。

ガソリン車と比べれば、EVは航続距離の問題とか古くなったバッテリーの処理問題や降雪時等の電欠時の対応など、まだまだ課題は山積み。

だけど、それはガソリンだって軽油だって、過去に経験してきた課題で、それぞれ新しいソリューションを見つけ続けることが、メーカーの役割なんです。

YouTube等で多いEV叩きの代替案の文脈が”水素推し”な訳ですが、これって元の文脈の”EV推し”と全く同じ流れで、むしろ水素の方が電気より厳しい課題が山積みではないかと思います。

YouTube見て、本気で水素自動車がBEVより良いと思っている人は情弱の罠に嵌ってます。

論理的な思考で簡単に考えると、今後はガソリン+電気のハイブリッドに移行、その後ジョジョにBEVが増加の流れを維持しながら、水素が普及。ただし、水素の普及には時間がかかるということかな。

◆自動車が普及するための条件は?

なぜ先進国において自動車が普及したかと考えれば、”行路を限定されずにどこでも移動が可能”なことで、ここが行路を限定される鉄道等の公共交通機関との違い。

その自動車利用に不可欠なのが、燃料の供給インフラで過去数十年に渡りガソリンや軽油の供給インフラが圧倒的な強さがあり、これが従来型のICEエンジン(内燃機)の普及を支えてきたわけ。

なので水素自動車普及には、このインフラ整備が最初に必要。

◆なぜ水素自動車普及に時間がかかるかを考える

至極簡単に考えれば、コストが掛かりすぎで誰も参入したくない業界になっていることです。

水素ステーションは、従来型のガソリンスタンドと同じように水素を貯蔵するための蓄圧器その他といった設備が必要な訳で、資源エネルギー庁によれば2019年時点で水素ステーションの設備投資は約4.5億円+土地代。通常7〜8,000万円の初期投資で済むガソリンスタンドですら、近年の設備更新(地中タンクの入れ替え)のコストに耐えきれないのが現状で多くのガソリンスタンドが廃業しています。

試しに経産省が公開している”水素スタンドの概要”という資料を見たけど、素人目にもコストの掛かりそうな設備だと思う。

◆電気自動車のインフラ普及

水素ステーションと比較すると、EVステーションって超簡略化して考えれば路面にコンセントの取り出し口を置くということ。

そもそもEVの優位性は、比較的低コストで充電設備を作りやすいことで、普通充電器が一台230万円、急速充電器が500万円程度で考えれば、10台設置の設備でも2300万〜5000万円で設置可能であり、従来のガソリンスタンド設置の初期費用7〜8000万より安い。

設置場所の自由度も高く、商業施設等に設置することも容易で、これは複雑な貯蔵設備が必要な水素ステーションは圧倒的に不利。

更にはEVステーションは世代交代が早くても、その設備変更も地上のみの工事で行えることを考えれば、コスト的にも優位。
水素ステーションについては、世代交代は起きないかもしれないけど、耐用年数を過ぎれば交換の必要性が発生するので、ここで莫大なコストが発生する。この問題は現に既存のGS業界に起きているわけで、そのコスト負担が出来ないために廃業するGSが多いのも事実。

◆EVと水素ではスケーラビリティが違う

結局のところ、水素インフラと電気インフラではスケーラビリティが違い過ぎます。

その昔、台湾では携帯電話の方が固定電話より普及スピードが早かったのだけど、これも老朽化した街のインフラに物理的な固定回線を通すよりは、携帯電話の基地局を作る方が早い訳で、EVステーションについても同じことが言える。

大きく違うのは、携帯基地局はキャリアという通信ビジネスをマクロに考える一次事業者が設置するのに対し、燃料インフラであるEVステーションは部分的なミクロのビジネスの利益を考える二次事業者が設置すること。

ちょっとここでモデルが違ってくるのが、テスラやフォルクスワーゲンのように、自動車メーカーとしてEVステーションを設置するケース。欧米で、ガソリンスタンドと同等のEVステーションを提供するモデルがあって、これはどちらかといえば一次事業者によるマクロモデル。

ちなみに日本の各自動車メーカーも充電ステーションを設置はしていますが、基本的にディーラー敷地内のモデルなので、これはミクロモデルでしょう。

・EVステーションがもたらすシナジー

水素と電気のステーションの収益化を考えると、当然の結果として水素ステーションを利益化するハードルは高い。

EVステーションも単体での収益化は容易ではないかもしれないけど、他のビジネスとのシナジー効果が大きいのが事実で、例えば商業施設のようなビジネスにとって、EVステーションは集客のツールとして有用な可能性があり、大規模スーパーやショッピングモールなどは導入のメリットが大きい。インフラコストから考えると、中規模のスーパー等でも複数台の設置は可能で、それによって顧客の囲い込みは可能。これは水素にはマネの出来ないことです。

・水素ステーションの可能性

おそらく新しい燃料供給インフラというのは(安定した運用ルートのある)商用車から始めるしかないので、水素ステーションは従来のLPGステーションに併設ということは可能。これらの水素ステーションを起点にタクシーや配送車両といった分野からの導入が一番可能性としては高いあですが、
それにしても設置コストが高いことは変わりません。

◆結局使い分けの世界

こんな風にEVを擁護するとツッコミがでるのが、外出先での充電時間の問題や集合住宅で充電ができないケース。

仰るとおりですね。

”出先で30分充電”とか”先客の充電30分待ってから充電で1時間”とか、面倒です。

では、そもそも外出先で充電の必要がどれだけあるのか?ということです。

これは、そもそも日本での自動車の使われ方と関係するけど、いくつかの調査を見てみると、月の平均走行距離300キロ以下が51.8%という話もあり、国産の一般的なBEVの航続距離が180kmから450km程度と考えれば、月に1〜2回充電できれば問題のないケースが半分。

これ、自宅充電出来る人には全く問題のない話で、仮に自宅充電不可でも、ほんの月に数回、商業施設で1時間を充電に使うことは可能じゃないでしょうか?

おそらく地方都市に行けば、走行距離が伸びる傾向があるので充電回数が必要になるけど、自宅充電が可能なら問題ないし、それでも航続距離が足りないなら、普通に内燃機関の自動車を買えば良いだけです。

都市部在住者も同じで、長距離ドライブを考えれば電気自動車は航続距離足りないかもしれませんが、そもそも年に何回、外出先充電が必要な長距離ドライブをするのか?ということです。

◆結論

電気自動車、と言うか、自動車における電動化はハイブリッド、BEVと益々進むでしょうね。まあ一番の課題は、バッテリーのコストと耐久性。
そして水素自動車という選択肢もいずれは普及するかもしてませんが、新たな燃料供給インフラのスケーラビリティを考えると、軽く10年以上は掛かるような気がしてなりません。
水素ステーションのような、ハードウェア依存型のインフラはレバレッジが利きにくいから。

私は、私は内燃機が大好きなので乗れる限りガソリン・ディーゼル車に乗ります(一部ハイブリッド化するだろうけど)

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