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マンガ読みの年中休業うつらうつら日記(22年10月29日~11月4日)

22年10月29日

前夜の定例ZOOM飲み会にHくんが来たら、
「『うさこさんが失礼なので怒っています』と先週言って帰ったらしいけど、何が失礼で怒ってるの?」と聞いてみるつもりだった。
しかし彼は現れなかった。
在室していた他のメンバーに聞いたら、誰かが「おまえの言うことじゃないだろう。そっちの方が失礼だ」と言ったのに対し、大人しいHくんにしては語気荒く、「それこそおまえに言われる覚えはない」的なことを言い返していたようだ。
11時間カラオケマラソン以来荒れている人間関係。
平和を愛する長老より「だから今度からはアニソン縛りだ!」とお触れが出るのも無理はない。
Hくん、来週は来るかなぁ。

土曜の朝は一生懸命起きて、またレンタカーでNさん宅へ本の引き取りに。
今回は先週より少し多かったかな。
学習したので、回収した分から欲しい本だけを抜いて(それでも3分の2ほどが選ばれちゃうんだ)、小さくなった山を処分してから残りの本をベランダで拭く作業。
どうして雑巾絞って本の表紙や背中を拭くだけで、バケツ一杯の水が黒くなっちゃうんだ!
でも自分たちでは選ばない、そもそも全然知らないマンガの山がたくさん発生したので嬉しい。
今んとこ書斎の床の奥に積んであるが、早く自炊しないとね。
問題は、マンガは全部私の仕事になるもんだから、せいうちくんの仕事の山は小さいって点なんだよ。

帰りに昔住んでたへんの優秀な八百屋に行った。
顔見知りだったおばちゃんがまだ元気にナスを売っていて、目で挨拶したらちょっと考えてから、
「久しぶりじゃないの。ずっと来なかったわね!」と言ってくれた。
「引っ越したので。この八百屋に来られなくなって、家計の野菜代がすごく高くなっちゃいました。自転車で何とか来られるかもだから、また来ます」と言うと、
「うん、おいでおいで」とニコニコしてくれた。

息子が泊まりに来た。
夜中に一緒にカレーを食べ、おしゃべりしてタバコ吸って寝る。
扉を立てて個室にしてやった。
あんまり使う機会がないので使いたくてしょうがないのだ。
「寝顔を見に行けないなぁ」と嘆いていたらせいうちくんから「扉なんか立てなきゃよかったのに」と言われたが、安心して眠ってほしいじゃないか。
本人はどっちでも気にしてないようだけどね。

息子に対する万能感と、うらはらにわいてくる無力感。
赤ん坊の頃から知っているって自信と、今の彼を全然知らないでいるような不安。
母親の息子に対する気持ちって恋に似てるんだろうか。
父親が娘に、と考えたとたんにキモくなるので、きっと「母親→息子」でもおんなじようにキモいんだろう。
自分のものだなんて思ったことがない、いつも別の1人の人間として思うように心がけてきたつもりだが、それほどきちんとできていただろうか。
誰よりも大切な人がいる、と目を輝かせて言う息子が誇らしいのと同時に、「努力し続けないと、身近な人には甘えてしまう。最初の半歩を踏み出したら、それは千里の道のりへの始まりだ。とにかく配偶者を一番に大事にしなさい。そうすればすべての幸福は自然についてくる」と語るしかできない。

今週のマンガ紹介は「スポーツもの」にしてみようと思う。
部活あり社会人スポーツあり移行組ありでたくさんの名作マンガが存在するため迷ったが、主に高校部活を中心に紹介していきたい。


まず最初に出てくるのは、これ以外に定番はないだろうという梶原一騎原作・川崎のぼる画の「巨人の星」なんだが、あまりに当たり前なのでちょっとひねって「星飛雄馬が左腕を致命的に壊して巨人軍を去ったあと」の話、「新・巨人の星」文庫版全6巻を紹介したい。
実はこれがせいうちくんには大変な不評で、「第二部は持っている必要なし」と再三言われ、電子化の波が来なかったら本棚から消えていたかもしれない。
今では「毒親マンガでは?」と言われるほどの第一部後、第二部での飛雄馬は自らの意思であらためてバッターとして巨人軍入りをひそかに目指す。
そして、あきらめたと思っていた父・星一徹もまた新たな形で飛雄馬を応援しようとする。
親友・伴宙太やライバルで今は義兄となった花形満、やはりかつてのライバルだった現役選手・左門豊作などのなつかしいメンツが見られる嬉しい作品だ。
絵が少々劣化しててもいいじゃないか、せいうちくん!
ほぼ二次創作だけど、人間こういうものが好きなんだよ!
私が大好きなのは花形満の「花形さん、はないだろう。明子がねえちゃんならぼくは義兄(にい)ちゃんだ」ってセリフだなぁ。
その明子ねえちゃんはあまりに色っぽい人妻になっていて、驚いたよ。
長嶋巨人が好きな人にはせひ読んでいただきたい作品。

22年10月30日

泊まってた息子が朝早く起きたので驚いた。ついに早起きできるようになったのか。
9時過ぎに家を出ていつものカフェに行ったら、今日は10時からの営業だった。
息子は10時過ぎには電車に乗らないと仕事に間に合わないらしいので、彼の提案でスッと別のカフェに。
こういう段取りもスマートにできるようになったんだなぁ。

それぞれにモーニングを食べ、出て駅前でぎゅうっとハグし合って別れた。
寂しいもんだね。
買い物して家に帰って気がついたが、私が使ってたオイルたっぷり入ったジェット式の使い捨てライターが息子のほとんどガス空っぽの安いライターに変わってた。
ちゃっかり交換して行ったのか。
なんて要領のいいヤツなんだ!


今日のマンガは、これも定番中の定番、高森朝雄原作・ちばてつや画の「あしたのジョー」全20巻。
高森朝雄が梶原一騎の別のペンネームだと知った時は驚いた。
昭和の二大名作スポコン物を原作した男。
「よど号ハイジャック犯」は「俺たちは『あしたのジョー』である」と言い、ジョーが死んだのか生きていたのかはいまだに白黒つかず、「人が何かをやり尽くしてしまった姿」と言えばリングの隅に座って微笑んでいる「白い灰のかたまり」が描かれるようになって久しい。
力石徹の命日には人が集まり、創作中のキャラクターがリアルの世界に出てきたごくごく初期の物語だろう。
「貧乏」の意味が今とはまた違う昭和の味を、かみしめなおしてみたい。

22年10月31日

せいうちくんは出社のうえ、会社の懇親会で遅い。
1日中寝て、マンガ読んで、また寝てたら帰ってきたよ。
でももう23時近い。
お風呂も入らずすぐに寝てしまった。
ほとんど話すヒマもなし。こういうのはつらい。

しょうがないから自分の過去日記を読んでみた。
息子が高校2年の頃とか。
あまりにもわかりやすく反抗期なのでむしろ笑えた。
「うるせー」「うざい」「黙れ」の嵐だったようだ。
何でも書いておくもんだなぁ。
「こんな日々が終わって息子がオトナとして話し相手をしてくれる日が来るんだろうか」と嘆く10年以上前の私に、「終わるよ。すごく優しくなった息子が話聞いてくれて、マンガの話して盛り上がり、ハグしてくれるよ」と言ってあげたい。

その時期、せいうちくんのお父さんからは、
「息子ちゃんは全然話をしないねぇ。家でも会話がないせいじゃないの?親同士ばっかり話してるから、息子ちゃんは話さなくなっちゃったんじゃないの?」と苦言を呈されていたようだ。
当時のせいうちくんは、
「僕が親に迎合して話し相手をしていたお調子者だったから、彼らは『反抗期』の子供を知らない。健全なコドモには反抗期が来て、親と話さなくなるもんなんだ」と慰めてくれた。
実際、今の親vs.せいうちくんと我々vs.息子の様子を見てると、反抗期があったからこその今の蜜月があるんだと思える。
自分の息子と本当の意味で会話が成立しなくなっちゃったせいうちくんの親の方が今は気の毒。


今日のマンガはこれまた知らぬもののない名作、山本鈴美香の「エースをねらえ!」第一部・第二部 愛蔵版全4巻。
これも説明いらずだろうなぁ。
ヘタな人が、実は天才だった、ってストーリーはよく見られるが、これが先鞭をつけてる気がする。(いや、バレエマンガなんかでは定番なのか?)
岡ひろみは日本にテニスブームをもたらし、宗方コーチは男性主導の世界観を少しだけ長持ちさせ、藤堂さんは理想の恋人像となり、お蝶夫人は「女生徒のあこがれの女王様像」を作り出した。
作者の山本鈴美香は間違いなく天才なんだけど、ゆえにその功罪は大きい。
歴史冒険物語「七つのエルドラド」を描き上げる、って話で復刻された同作品、作者本人が教祖様となってお山にこもってしまったのでいまだに未完のままなのだ。
どうか続きを描いて衆生を救ってほしい。ついでに「白蘭青風」と「愛の黄金率」もよろしくお願いします。

22年11月1日

心臓の定期検診に行ったらついでにインフルエンザのワクチンを打ってもらえた。
「11月8日の予約になってますけど、せっかく来たんだから今日打っちゃいましょうね。また来るの、面倒でしょう」と手続きしてくれた看護師さん、ありがとう。
しかし自分はいつの間に8日に予約入れていたんだ?
全然覚えてなかったぞ。
そのままだったら当日行かないで終わっていたかもしれない。

モデルナアームほどではないけど注射痕まわりが直径4センチほどに腫れた。
ワクチンで腫れやすい体質なのか。
去年かおととしはものすごい紫色に10センチ以上が腫れ上がったこともあったなぁ。

ワーファリン値が「3.0」になっていたので、「高すぎますね!」と薬を減量。
1. 75mgのんでいたのが1.5mgに減らされた。
一包化されている薬をすでに1か月分先行してもらっていたのでそこから0.25mg抜いてのんでもいいんだが、毎日の作業がめんどくさいので新たに1か月分もらうことにした。
余ったものはそのうち何かあって病院に行けない時の備蓄にしよう。
災害時持ち出し袋に入れておくといいかも。

夜中に換気扇の下で吸うタバコが旨い。
美味しく感じ始めたらもうやめ時だ。
定例ZOOM飲み会の最中にも吸いたくなって席を外すことが多くなった。以前にはなかったことだ。
「ストレスフルなんだから、タバコぐらい吸ったらいいよ」と言ってくれるせいうちくんも神経質に換気扇を1日中かけている。
お金もかかる。まわりに喫煙者は息子ぐらいしかおらず、その息子にも節約のために禁煙を勧めているほどだ。
やめようやめよう。

こないだ遊びに来た長老が、キッチンに入ってきて「旨そうな匂いだなぁ」と言うから大鍋一杯のハヤシルーのことかとおもったら、タバコだった。
「吸いますか?」と言うと、
「20歳の若者みたいなこと言わんでくれ。わしはもうずっとやめとるんだ」と答えてた。
今どきタバコ吸う人はホントに少ない。
ヘビースモーカーだった父も肺がんで亡くなっているんだし、やめよう。

1年間仮住まいをした時に、賃貸をいいことに喫煙しまくっていたら引っ越す時壁紙の張り替え代をがっつり取られた。
せっかく新築マンションに住んでるんだ、ここらでもう腹をくくろう。
今吸ってる箱がなくなったら買い足さない。やめる。日記に書いておけば自分の心にも戒めとなるだろう。

しかしこの決意は2日で潰えた。
息子が泊まりに来たせいも大きいかもしれない。
彼と一緒に換気扇の下で吸うタバコは格別な時間だからね。
せいうちくんがあいかわらず、
「僕がヒマになるまでは気晴らしにいくらでも吸えばいいよ」と言ってくれるもんだから、なおさら。

「母さん、禁煙するって言ったけど、あっという間に失敗しちゃったよ」と息子に話すと、
「お母さんのいいようにしたらいいんじゃない?」と言われた。
胸を衝かれる思いがした。

せいうちくんはいつも、私の気持ちが軽くなるように気を遣って話してくれる。
「今夜はお風呂は休もう!」とか「洗濯は明日でいいじゃない」とか。
気が重いようなことがあると先回りしてその重さを軽減しようと努めてくれる。
近い関係の他人から、心から底から「好きなようにすればいい」と言われた経験がないのだ、と気づいた。

母の口にする「うさちゃんの好きなようにしたらいい」にはいつも模範解答があった。
導かれる、最善の答えへの一本道だ。
「ここはこう答えるべきなんだな」という答えがすでに見えており、時に大人しく従い、時に猛反発した。
本当に私の好きにしていいことなどなかったのだ。
大人になって自分の生活をしている今、他人に迷惑をかけるのでさえなければ好きなように暮らしていいのだと、今頃になってやっと気づいた。

息子に言われるまで、この世に自分が好きにしていいことなどないと心の奥底で考えていた。
いや、感じていた。考えることさえ禁じられていた。
自由。
最低限の責任を果たしたあとに大人として選べる様々な行動。
好き放題生きているように人からは見えるだろう私は、そんな最低限の自由さえ持っていなかった。
今や私を縛っている頸木は紙縒りでできた手錠も同然だ。
腕のひと振りで引き千切ることができるだろう。
あと一歩踏み出す勇気さえあれば。

もう数年たてばせいうちくんも社会的な責務を果たし終え、我々は自由な生活ができるようになる。
もちろん経済的・社会倫理的な制約は織り込んだ大人の自由だ。
その日が来るのが待ち遠しい。
自分の行動を自分で選べる個人として、残された日々をせいうちくんと生きていきたい。


今日のマンガは柔道男子であった息子の愛読書、どこの柔道部部室にもひとそろいあるんだろう河合克敏の「帯をギュッとね!」全30巻。
学園マンガ、ラブコメとしても秀作であるこのマンガ、柔道の主に団体戦の面白さを味わうには最高だ。
5人からなる団体戦では、先鋒、次鋒、中堅、副将、大将のどこにどんなプレイヤーを持ってくるかの作戦が重要。
各生徒の個性を発揮させながら、そのあたりの妙を実にわかりやすく解説してくれる。
明朗でわかりやすい絵柄も手伝い、優れた学園スポーツマンガだと思う。

22年11月2日

今夜はせいうちくんと初めて出会ってから40周年の夜になる。
私のアパートで催した「お茶会」に適当に新人さんを連れて来てくれ、とくらぶの友人に頼んだら、メンバーの中にせいうちくんがいた。
お互いに一目惚れの状態だった。

当夜のメニューを作るのはさすがに面倒だったので(40年間の年月の垢…)、紙に描いて食卓に置いていた。
せいうちくんはもちろん喜んでくれたが、意外なことに向こうからもサプライズが。
おみやげ用にもらうぐらいしか口にする機会のない、私の大好きなさるお寿司屋さんの「太巻き」をわざわざ買ってきてくれたのだ。


図らずもお互いにサプライズを目論んでいたわけ。良い夜になった。
2人で太巻きを半分こして食べ、借りていたDVDで「DEATH NOTE Light Up the New World」を途中まで観たところで眠くなって、寝た。
息子から「今日か、明日、泊まりに行ってもいい?」と問い合わせがあったが、今夜は水入らずで過ごしたかったので明日にしてもらった。
同居のカノジョが日曜まで実家に戻っているのでヒマらしい。
寂しい夜でもかみしめてくれ。
それもまた大好きな人がいる醍醐味だろう。

昨日観た東野圭吾原作の「マスカレード・ナイト」も良かったので今、原作シリーズを最初から読み返している。
映画化するにあたって相当人間関係等は整理されているため、ミステリとしては面白くないんだが何しろホテルを舞台にした演出がたいそう凝っている。
あれだけの人数を動かすだけでも大変なことだと思う。
映画監督の、また演出の人の「目」はすさまじいな、と感じた。満足だ。

「目」と言えば、結膜炎とものもらいの症状が出たので昼間、眼科に行った。
午後は3件の医療予約を取ってあわただしかった。
眼科以外はかかりつけの心臓の主治医のところでコロナワクチン5回目の予約、あと年に1度ぐらいは受けておいた方がいいとのことで胃と腸の内視鏡の予約を専門病院で取ってもらう。
内視鏡はとりあえず診察だけ取れて、年内の内視鏡検査は難しく、来年になるだろうとのこと。
混んでるんだね。繁盛している病院はいい病院だ。

眼科は当日の夕方が取れたのですぐに診てもらえた。
やはり軽い結膜炎とものもらいらしく、目薬と眼軟膏をもらった。
東京では「ものもらい」だが実家にいた頃は「めんぼ」と呼んでいた気がする。
名古屋の友達Cちゃんに「名古屋では『めんぼ』だっけ、『めばちこ』だっけ」と聞いたら、
「どっちもあまり聞かないけど、もしかしたら『めんぼ』は言うかもね」との返事。
実家は博多と山口の方言ミックスだから、私のは純正名古屋風ではないかも、と思ったんだが、やはり「めんぼ」なのか。
昔は充分腫れて「口」ができた時に母親が火であぶった針で突いて膿を絞り出す、って治療法だったので、痛かったなぁ。
今は抗生物質の点眼薬で治せて、ありがたい。


今日のマンガはこちらも柔道部マンガ、かつてご紹介した小林まことが実在の女子柔道家・惠本裕子の原作でつづる「JJM 女子柔道部物語」既刊13巻。
運動神経はいいが部活が続かない「ごく普通の、ちょっと元気のいい女の子」である北海道カムイ南高校の女子高生、神楽えもは、柔道未体験者にもかかわらず人数合わせのため母校柔道部の試合に駆り出されてしまう。
「大内刈り」しかできない状態で畳に上がった彼女は意外にも善戦し、大内刈りで「技有り」をとって勝ちを決める。
そこから彼女の猛進撃が始まった…わけではないが、いろいろあって、えもは強くなる。
実際、息子の高校は保体部があった関係でスポーツ経験者が多く、柔道部顧問は陸上とか球技とか、なんでもいいから運動神経のいい女子を熱心にスカウトして育てていた。
柔道初心者だった彼女らは見事に強くなり、大学でも柔道を続けて大会で優勝する子も出たほどだ。
腕力のない女子だからこその技の冴えもあり、女子柔道というのは思ったより面白いものだ。
男子の柔道部生活を描いた「柔道部物語」と合わせて、ぜひ一読を。

22年11月3日

珍しく昼間から息子が泊まりに来た。
昔住んでいたあたりの中華屋さんでお昼を食べるつもりだったようだが、行ったら店がなくなっていたそうだ。
我々が知ってるだけで30年近く営業してたし、老夫婦がやっていて後継ぎがいないのでたたんだんだろう。
「子供がいなかったのかな?」とせいうちくんと話していたら、息子が「いたよ。塾で一緒だった」と言う。
顔の広いヤツだな。
「勉強の嫌いな人だった」とのことだが、料理の道には進まなかったのだろうか。

ついでに行きつけの床屋さんで髪を切ってもらったらしい。
高校生の頃、よく「つけ」でやってもらってあとからせいうちくんが自分の髪を切るついでに支払いをしてきていた。
地域に密着した、良い暮らしだった。
さらについでに昔からよくお世話になっていたシッターさん「おばちゃん」のとこに寄ろうと思ったら、おばちゃんはお留守だったらしい。
また今度、ご挨拶に行ったらいいよ。

というわけで、お昼には食べ損ねたであろうラーメンの代わりにせいうちくんが「煮込みラーメン」を作ってくれた。
テレビをつけたらイチローと松阪が出ている「女子高校生野球vs.プロ混合チーム」が試合をしていた。
私以外の2人はあっという間に夢中になり、食事中もずっと見ていた。
そのわりには食べ終わったら息子はさっさと昼寝に入ってしまったが。

我々も昼寝し(よくもこうも眠れるものだ!)、全員起きた夕方からは前にNHK BSでやっていた「アメリカサブカルチャー史 欲望の系譜」の‘50年代から観て過ごす。
ずっと息子と一緒に観てみたいもんだと思っていたんだ。
彼らが感じる世界と我々が感じる世界の境界線が少しはあらわになるかと思って。
だって私が生まれた1950年代にはまだ戦後の匂いが漂ってたんだよ。
アメリカ文化が日本に流れ込んでくるのにざっと10年から15年ぐらいのタイムラグはあるものの、ほぼ後追いをしている我々日本人にとって偉大な隣人であるアメリカの文化と社会の行方は大きな指標になるはずなのだ。

息子は今度、「人を扇動するとはどういうことか」ってテーマの寸劇のようなものに参加するらしく、そのへんの取材もあって熱心に観ていた。
‘60年代、’70年代、‘80年代までを一気に観た。
たくさんの映画を中心に紹介されるアメリカの文化の高揚と衰退はきちんと時をおいて日本にも届いてた。
学生運動、ヒッピームーヴメント、差別と暴力、貧富の差…
「総中流化」を感覚の芯に持って育って来た我々世代からすると、自分も常にどこかにカテゴライズされある文化史は大変興味深かったが、それ以上に息子の反応が面白かった。

映画をたくさん観ている彼から教わった作品は多いが、中でも大好きだという「ブルース・ブラザーズ」や「パルプ・フィクション」は番組の中でも中心的な役割を果たしていた。
一方「暴力教室」や「ドゥ・ザ・ライト・シング」はお互いに観たことがない。
近いうちに一緒に鑑賞する機会があるといいな。
「ジョーズ」や「ジュラシック・パーク」のような単純な娯楽映画としか思えなかったものに意外と深い社会的暗喩が込められているってのには驚いた。

‘50年代から’70年代ぐらいまでは息子にとってさすがに「空気感がわからない時代」であるらしい。
‘80年代になってITが登場するようになり、やっと少し理解が届くぐらい。
私は息子とわかり合おうとしすぎている。
文化的には自分たちの親世代との間よりは溝が浅いと思うのだが、それ以上に相互理解を求めてしまう。
親世代との断絶の歴史は世代的なものとしてどうしようもないと同時に、特に私の母親の個人的な資質も大きかったように思うものだから、その関係を繰り返したくなさすぎるのだ。

「米ソの冷戦時代」を知らない彼らは、じゃあ今の世界に楽観的でいられるかと言うとそうでもないらしい。
「ロシアが今やってることは、冷戦時代を知っている私たちにはとても恐ろしいんだよ」と言うと、
「僕らにはその危機感はわからないんだろうけど、むしろ諦念がある」と言われた。
我々世代からの資源の浪費によって、彼らはすでにのっぴきならないところまで追い込まれているようだ。
「家が金持ちかどうかとかはあんまり関係なく、将来に希望が持てないんだよね。身近な人を大事にするぐらいしか、できることはない」と語る彼だ。
その「身近な人」に自分たちも入れてもらってるというだけで良しとしなければ。

せいうちくんは昨日コロナワクチンを、私はおとといインフルエンザワクチンを打っていたのでそれぞれちょっと体調が良くない。
早く寝よう、と思いながらも息子につき合って夜更かしをしてしまった。
続きは明日。


今日のマンガは井上雄彦の名作「SLAM DUNK」全30巻+1。
バスケットボールに一世を風靡させた学園マンガだ。
実は昔に読んで、今回読み返すヒマがなかったので内容はあまり覚えていない。
バスケ部に入ることになってしまった不良少年桜木花道の成長物語だった気がする。
‘90年代に連載され、爆発的な人気を呼んだ。
1998年頃に友人宅でクリスマスパーティーが開かれた時、高校受験を控えていたそこんちの息子が「クリスマスプレゼントには『SLAM DUNK』全巻がどうしても欲しい」と言い、時期を考慮して両親はその希望を受け入れないでいた。
そこに集まったまんがくらぶ員である友人が全員声をそろえて言ったのは、
「買ってあげなよ!中学生が読むのに、これ以上正しいものはないマンガだよ!」。
それで両親も折れ、息子くんはめでたく「SLAM DUNK」全巻を手に入れて読破し、高校受験にも受かったというめでたい話だ。
「友情・努力・勝利」の三本柱に支えられ、ジャンプマンガはいついかなる時も若者の友である。

22年11月4日

昼まで寝ていた息子と私。
せいうちくんはその間に遠くの八百屋さんと魚屋さんに自転車でのして出かけ、明日のお客さんおもてなし用の「手巻き寿司」の材料を仕込んできてくれた。
よく働く立派な人だ。
起きて、冷蔵庫を覗き込んだらいろんな種類の魚の冊やネギトロ、卵焼きまで買ってきてくれてた。
にんまりしているところをせいうちくんに見られ、
「すごい笑顔だね!そこまでの笑顔はめったに見られないよ!」と驚嘆された。
とにかくビッグ・スマイルだったらしい。
「太巻きやケーキでは出てこない笑顔だ。なるほどなぁ…」と妙に納得された。なんで?

八百屋のおばちゃんがたいそう喜んでくれたらしい。
「あっちの方からわざわざ来てくれたの!」って。
ご期待に応えていろいろ買わせてもらったようだ。
手巻き寿司的には大葉100枚380円が嬉しいよ。
かい割れも1パック10円ぐらいだし。

息子と一緒にミートソース・スパゲッティの昼食を終え、息子が婚姻届けを出したらせいうちくんの家族として入ってる対人傷害保険が無効になるため、新しく本人名義で保険に入ってもらうのに保険会社の人と息子のテレ面談をやってもらった。
これで結婚後も、息子が自転車で人とぶつかってケガをさせたりお店のものを破損させたりいろんな場面で保険の適用がされる。
対物・対人の事故ってのは意外とお金がかかるものなんだ。
自動車を運転しないからレンタカーを運転する際の自賠責しか適用されない、ってのでは日常が不安。
安い保険だが、入ってくれてひと安心だ。
彼も「もしもの時の備え」を考える程度には大人になってきたらしい。それもめでたい。

「アメリカサブカルチャー史 欲望の系譜」を‘90年代まで観て、今日のところは終わり。
下北沢に仕事に行くという彼はいつものようにぎゅうっと我々をハグして、
「いろいろありがとう。とても楽しかったよ!」と言いながら帰って行った。
次に会うのは日曜の下北沢のお店でのコントグループ公演かな。
その次会う時は「既婚者」か?
いちおう家族としての顔合わせがすんでからの入籍にすると言ってるので、それはないか。

また大学時代の同期が1人結婚したらしい。
「君ら、結婚早いね」と言ったら「早かぁないでしょう」という返事。まあ29歳だからね。
それでも生涯未婚率がだだ上がりの今の時代に、20代のうちに身を固める同期の多さに驚くよ。
もちろん息子自身も早めだなぁと思っている。もちろん早すぎはしない。
せいうちくんが結婚したのが25歳だったってのはわりと早いと思うが。


スポーツ部活マンガでやってきたものの、最後に異色のこれを紹介したい。
部活じゃない、単行本作品じゃなくてただの短編。誰が描いたのかも正直さだかでない。
しかし猛烈に面白いのだ、しりあがり寿作品集「サラリーマンの魂」に収録されている「さる課長」。いちおうゴルフマンガに分類されるだろう。
もちろん藤子不二雄で有名な「プロゴルファー猿」のパロディである。
会社におけるゴルフコンペを語った、「サル課長」(タイトルでは「さる」と平仮名だが、作品中では「サル課長」と片仮名だ)の短編。
せいうちくんは入社以来家庭と仕事の両立の面からゴルフはいっさい断って今日まで来ているので、実際には社内ゴルフの実態を知らない。
しかし「とてもそれっぽい」と、この作品はお気に入りだ。
メンバー決めの難しさに始まり、応援する人のため各プレイヤーに「馬名」をつけたりするのも幹事の大事なお仕事だったらしい。
(パーマをかけてる人は「トリノスヘッド」、声の大きな人は「コワダカソウム」、下町生まれで「ひ」と「し」の区別がつきにくい人には「カンダノウマレヨ」などになるようだ)
スポーツがこれほど会社員生活に浸透した例はほかにないんじゃないだろうか。
そういう意味でも面白い作品だと思う。
(ちなみに最近では卓球が流行っているらしい。ウソみたいなホントの話)

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